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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり1人目⑮

「さて……とりあえずは着地すべき場所に着地できたって感じだな」


 陛下との会談を終えて宿に戻り、部屋に入って一息吐く。

 一緒に戻って来たシャルロットも、念願が叶って満面の笑みだ。

 とりあえずは、できる限りの結果を出せたと思っていいだろう。

 1つ懸念点があるとしたら、法衣とはいえ貴族位を得てしまった事か。

 特に貴族としての仕事は無いものの、今後の動き次第で昇爵なんて話が出て、貴族として縛り付けられる可能性もある。

 この辺りは一長一短ではあるんだよな。

 もしも、何かしらの要因で冒険者としてやっていけなくなった場合にも、法衣貴族としての収入があるので、食いっぱぐれる事が無いのはありがたいのだが。

 前世の記憶が戻った際には貴族で内政チート、なんて夢見た事もあったが、実家がアレだったのでその線はすぐに捨てたのだが。


「改めて、ありがとうございました。私1人では絶対に成し得ない事を、僅か数日で達成して頂いて、感謝の言葉もありません」


 ベッドに腰を落ち着けるなり、シャルロットから感謝の言葉が。

 ちなみに、宿に戻る道すがらにも一回言われている。


「さっきも言ったけど、自分のやらかしのケツを拭いただけだ。わざわざ感謝されるほどの事じゃない。それでも、シヴィリアン公爵家の無実が証明できて良かったよ」


 俺が素直に感謝を受け取らないのを見て、シャルロットは不服そうな表情を隠しもしていないが、こればっかりは譲れないので知らんぷりを決め込む。

 そういえば、敢えて話題に上げないようにしてたけど、彼女って今は奴隷なんだよな。

 まあ、奴隷という観点で言えば、毒で間もなく死ぬだろうから捨て値同然だったわけだが。


「ところで、話は変わるけどさ。今後はどうするつもりだ?」


 今後をどうするのか。

 そう問われた彼女は、言っている意味がわからない、とばかりに小首を傾げた。

 うん、可愛いけどさ。

 そうじゃないんだ。


「もう理解しているとは思うけど……シャルロット、君は一応、俺の奴隷という扱いになってる」


「それは存じています」


「ぶっちゃけた話をすると、毒で死にかけだったから、捨て値同然で売られてたんだ。だから、俺としては君が望むなら、奴隷から解放してもいいと思ってる」


 彼女を奴隷にするのは、本来の目的とはかけ離れているわけで。

 そもそも、本来は冒険者稼業をする上で、ソロだとちょいちょい面倒な所が出てきたから、一緒に冒険者稼業をやれる奴隷を探していたんだ。

 たまたまシャルロットを見つけて、死にかけなのを助けられそうだったから、勢いで買っただけだし。

 ぶっちゃけ、元が付くとはいえ、公爵令嬢の彼女をこのまま奴隷としておくのは、あまりにも外聞が悪い。


「……私の事は、重荷になってしまいますか?」


 そんな捨てられた仔犬みたいな目で俺を見ないでくれ。

 別にシャルロットの事が嫌いとかそういうんじゃないんだよ。


「君なら一人でも生活するくらいはできるだろう。王城があんな状態だし、すぐに即戦力の文官として雇って貰えるはずだ。もし不安なら、陛下に口利きしてもいい」


「ハイトさん。もう一度聞きますが、私は重荷になりますか?」


 今度は至って真面目な表情で、シャルロットから同じ質問をされる。

 これってつまり、このまま一緒にいたい……って事で、いいんだよな?


「重荷って事は無い。別に贅沢をしなければ君を養うくらいの稼ぎは余裕であるし。ただ、やっぱり奴隷でいるのって気分のいいものじゃないと思ってな」


「……私にとって、今の繋がりは大切なものなんです。それが例え奴隷としての契約だったとしても、家族を失った今、私が頼れるのは……ハイトさん、あなたしかいないんです」


 ぽろぽろと、両目から涙を零しながらの懇願するようなシャルロットの姿を見て、俺は彼女に対する認識を間違えていた事がわかった。

 どんなにしっかりしていても、貴族然としていても、根っこはまだ14歳の少女なんだ。

 いきなり家族を全員失って、他人の悪意に触れて、平気なはずがない。


「……悪かった。今の話は忘れてくれ」


 ばつが悪くなり、後ろ頭を掻きながら、俺は彼女の泣き顔から視線を外す。

 自分が悪いとはいえ、女子の泣き顔をまじまじと見る趣味は無いからな。


「今日の夕食におかず一品追加で許します」


「そりゃあ随分と安上がりな事で」


 食い意地の張った条件だなあ、と思い、思わず彼女の方に視線を向け直すと、両目に涙を浮かべてはいながらも、悪戯っぽく笑っていた。

 そんなシャルロットの表情に釣られるようにして、俺も笑ってしまう。


「ええと、戦闘面においてはお役に立てませんが、色々とサポートはできるかと思いますので、手助けが欲しい事があれば遠慮無く言って下さい。私もただ、養われるだけというわけにもいきませんから」


「わかった。色々と頼りにさせてもらうよ」


 シャルロットに裏方で任せられる事があれば、何か任せてみてもいいのかもしれない。

 差し当たっては資金運用なんかを任せてもいいかも。

 今は二人分の宿代と食費、細々とした出費を含めても相当の黒字だ。

 このままお金が溜まっていくのはいい事だが、どうせ溜まっているのなら、色々と有効活用すべきだろう。


「ちなみに、シャルロットが得意な事って何だ?」


 一応、鑑定で特殊技能を見ているから、ある程度は彼女が得意な事に目星は付く。

 とはいえ、何も聞かずに任せて不信感を与えてしまうのも良くないだろうから、アリバイ作りみたいな質問をしてしまった。


「そうですね。数字には強いので、そちら方面は何でもこなせます。あとは見たものを瞬間的に記憶できるのと、経験に基づく予測の3つが差し当たっての特技でしょうか」


「なるほどな……今はすぐに思い付かないけど、何か考えておくよ」


 とはいえ、資金運用をするとしても、特にその先のビジョンがあるわけでもない。

 一旦は結論を保留してもいいだろう。

 特に急ぎで大金が必要、っていうわけでもないし。


「はい。何か思い付いたらぜひ申し付けて下さいね」


 シャルロットから、何か頼ってくれるって確信した眩しい笑みが放たれる。

 やめてくれ、そんな純度100%の笑顔でこっちを見ないで!

 ベースが陰の者な俺にそれは色々な意味で効くから!

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