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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり1人目⑩

「動き出してみたら、あっという間だったな……」


 証拠を提出して三日。

 証拠に名前のあった高位貴族は全員が例外無く捕らえられ、全員が斬首の刑に処されると告知が出回った。

 今は余罪や細かい関連者の洗い出しをしている頃だろうか。

 俺は懐事情に余裕があるのもあって、ここ数日はシャルロットの近くにいる事にしている。

 一応、彼女の生存は俺と奴隷商、陛下以外は知らないはずだが、万が一にも暗殺などがあってはたまらないので、念のために身辺警護をしているのだ。

 もっとも、シャルロット本人にはそんな話はしておらず、彼女も告知が出るまでは細かい進捗を知らないでいたのだが。


「近衛騎士団の方々が本気で動くと、ここまで凄いのですね」


 俺の独り言に反応して、シャルロットが声をかけてきた。

 これといって外出もしていないので、ここ数日はもっぱら、部屋で彼女と話しているか、一緒に食事を摂る事が殆どだ。

 これはこれで、のんびりとしていて楽しいのだが、俺はどこか嫌な予感がしてならない。

 あのクソ親父が、ただ捕まって大人しくいているとも思えないのだ。

 特に己の保身においては、異常なまでに敏感である。

 今回は俺が裏をかいて証拠を回収したのが決め手にはなったが、果たしてそれで簡単に捕まるものだろうか。

 一応、手紙でクスティデル近衛騎士団長から、かなり激しく抵抗した、とは状況を知らされているが、本当にこれで正しい状況なのか、と疑心暗鬼に陥ってしまっていた。


「ハイトさん、今日はどこか上の空ですね?」


 椅子に腰掛けて、窓の外を眺めていたので、意識がそちらに行っていたのだが、急に近くでシャルロットの声が近くで聞こえ、反応して声の方向を見てみれば、そこには鼻の先がぶつかり合いそうなほど、近くに迫ったシャルロットの顔。

 あー、睫毛長いし目鼻立ちも整ってるし、可愛いなあ……じゃなくて。


「近い、近いって!」


 反射的に彼女の両肩を軽く押して、顔の距離を離す。

 うっかりもう少し顔を近づけたら、キスしてしまえるほど近くに、いきなり人の顔あったらビビるわ。

 

「何か気になる事でもあるんですか?」


 気がそぞろだった俺に腹を立てるでもなく、シャルロットは小首を傾げる。

 動作がいちいち可愛いなあ。

 これでいてあざとさが一切ないのがポイント高い。


「まあ、他でもない。認めたくはないけど、血の繋がった家族のやらかしがこれで済むんだろうか……ってな」


 なぜか、シャルロット相手だと、素直に色々と話してしまう。

 いつもの俺なら、ここまで素直に話さないのに。

 彼女の素直な言動や雰囲気がそうさせるのだろうか?


「……いいんですよ、行ってきても」


 少し困ったように笑う彼女は、まるで俺の心を見通しているようで。


「ハイトさんが私の事を気遣って下さっている事くらい、気付いてますよ。意図してはいないでしょうが、ずっとどこかピリピリしてしますから。私なら大丈夫ですので、行ってきて下さい。心残りをそのままにしておく方が落ち着かないでしょうし、また帰ってきますよね?」


 また帰ってきますよね?

 この言葉が、額面通りの意味でなく、帰ってきて下さい、という意味なのが、何となく理解できてしまい、気を遣っていたつもりが、逆に気を遣われているなあ、とついつい苦笑いを浮かべてしまう。

 ビックリするほど俺の内情を把握してるな。


「俺、そんなにわかりやすいか?」


 一応は貴族育ちで、公爵家仕込みのポーカーフェイスが使えるはずなんだが。

 ちょっと自分に自信を無くしそうだ。


「そんな事はありませんよ。ただ、コツを掴めば人の表情の僅かな変化や、雰囲気の変化である程度は推し計れるだけです。たまたま、私はそれが得意なだけです」


 つまり、彼女は俺の内情やら考えを推し量るコツを掴んだ、って事か。

 ……この短期間で把握されるって事は、結局俺ってわかりやすいって事なんじゃ……?

 まあ、俺の個人的な感傷は置いておいて、こうして背中を押されてしまっては、行くしかないな。


「敵わないな。それじゃ、ちょっと行ってくる。身体の調子もだいぶ戻ったみたいだけど、無理しないようにな」


 日常生活も支障なく送れているようだし、心配はいらないのかもしれないが、あの弱っていた姿を見た事があるせいか、どうしても心配が先立ってしまう。

 そんな俺の過保護具合に、彼女は苦笑いだ。


「いってらっしゃい、です。無事に帰ってくるのをお待ちしています」


 苦笑いこそしたものの、文句ひとつ言わずに俺を送り出してくれるシャルロット。

 細かい所に気が付くし、気立てもいいし、一歩引いて後をついてきてくれる感じ。

 こういう娘は、いい奥さんになるだろうな。

 彼女を奥さんに迎える将来の旦那は、さぞかし幸せ者であろう。

 そんな感想を抱きつつ、俺は宿を出た。

 昼過ぎの王都は、少し曇り気味の良くない天気だ。

 すぐに雨が降り出す事は無いだろうけど、今日の夜くらいには降り始めるんじゃなかろうか。


「……斬首タイムに雷が落ちるって、生存フラグじゃなかったっけ」


 某海賊漫画の船長が、そんな生還をしていたな。

 なんて益体も無い事を考えつつ、俺は王城前広場を目指す。

 ちょうど今日、主立った高位貴族が処刑される日だ。

 人数が多いので数日に分けての処刑になるようだが、主犯だけあって、クソ親父はトップバッターを飾る。

 ヤツの首が胴から離れて、死んだのを確認するまでは、俺の疑念は晴れない事だろう。




……

………




「……ちょうど始まるくらいか」


 俺が王城前広場に到着すると、鎖と手枷に繋がれた罪人たちが、ぞろぞろと歩いてくる所だった。

 即席で設置された公開処刑場だが、仮にも罪人が逃げ出す事が無いよう、厳重に柵が張り巡らされた上で、多数の野次馬たちが取り囲んでいる。

 これでは仮に抜け出したとしても、観衆が邪魔でスムーズに逃げ出す事は難しいだろう。


「本日は、国家反逆を企てた主犯たちを処刑する。まずはオーゴ・ダレイス公爵!」


 トップバッターたるクソ親父が名前を呼ばれ、処刑台へと登らされていく。

 間もなく首を斬られるというのに、特に絶望に染まった顔でもなく、むしろふてぶてしささえ感じる表情だ。

 ある意味、らしいと言えばらしいが、それが却って、ヤツが何かしらの仕込みをしていそうな直感を裏付けているように感じてしまう。

 

「罪状は国家反逆罪、横領、その他多数の罪状により、情状酌量の余地は無し。斬首刑に処す。ダレイス公爵よ、何か言い残す事はあるか?」


 罪状を読み上げている間に、処刑台へ手枷ごと固定されたクソ親父は、裁判官の問いかけに応える事も無く、だんまりを決め込む。

 俺の知るクソ親父なら、みっともなく喚いていそうなものだが、どこか不気味さを感じてしまう。


「言い残す事は無いようだな……。であれば、これより処刑を執行する。処刑人、前へ!」


 斬首用の巨大な斧を担いだ屈強な処刑人が、のしのしと処刑台に上がっていく。

 所定の位置に付いた処刑人は、両手で巨大な斧を振り上げる。

 裁判官が上に手を挙げ、それを下ろすと同時に、重々しい音と共に巨大な斧が振り下ろされた。

 身体を離れた首が地面に転がり、首の断面から血が吹き出した事で、観衆から僅かに悲鳴や困惑の声が上がったのは、斬首という行為が予想以上に残酷でスプラッターな光景だったからだろうか。

 さて、あとはこのまま何事も無く終わってくれれば、今回の件に関して思い残す事も無いのだが。


「なんだあれ!? ダレイス公爵の首が勝手に燃え出したぞ!」


 観衆から、悲鳴が聞こえ出す。

 おいおい、往生際に何を仕込んでいやがったんだ!?

 ったく、最期くらい大人しく往生しとけよクソ親父め!!

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