幕間 ワケあり1.1人目
本日は短いですが、幕間のみの更新となります。
「やりすぎたな、ダレイス公爵」
クスティデル近衛騎士団長が、ハイトから証拠を受け取った翌日の早朝。
王から全ての権限を与えられた近衛騎士団が、ダレイス公爵家を始め、証拠の中にあった高位貴族家へと同時制圧をかけた。
直近で騒ぎが起きたりしていたので、臨戦態勢だったダレイス公爵家を除けば、そんな事を予測などし得ない全ての高位貴族は、ほぼ無抵抗で制圧される事となる。
唯一、最後まで抵抗を続けたダレイス公爵家も、三時間に及ぶ激戦の末に、当主共々全員が制圧された。
両手を縛られ、抵抗を封じられてもなお、ダレイス公爵は消えぬ戦意でもって、クスティデル近衛騎士団長を睨む。
「戦うだけの能無しが! 私無くして、今のこの国を維持できるものか!」
吠えるダレイス公爵を、暖簾に腕押しとばかりに流し、クスティデル近衛騎士団長は、握っていた剣を鞘に戻す。
「報告です。各隊、目標を全て制圧し、城の牢に収容済みとの事。被害はありません」
「よし、俺たちも引き上げだ。誰一人として逃がすなよ。あとは怪我人の補助も忘れるな」
近衛騎士団長自らが率いた本隊は、ダレイス公爵の激しい抵抗に遭い、少なからず死傷者を出していたが、ダレイス公爵側の死傷者を極力出さずに、その全ての捕縛に成功していた。
そのまま公爵は城まで連れて行かれ、牢へと繋がれた後、尋問が始まる。
「さて、証拠が出ているわけだが……何か弁明はあるか?」
国王自らが尋問を行っているが、公爵は何も言葉を発しない。
ただただ、反抗的な目で国王を睨むのみだ。
「……残念だ。遠戚とはいえ、王家に連なる者を処さねばならんとは」
対話が成り立たず、国王は首を振る。
「貴様のような甘い者に、王は務まらぬ」
国王の背に向けて、公爵は一言だけ言葉を発した。
それ以降はむっつりと黙ってしまったが、その言葉に対し、国王は振り返り直す。
「そうさな。甘いままの余であれば、そなたを何かの理由で生かし、立場を下げるに留めたであろう。だが、今の余は違う。そなたというこの国の膿を排し、国を正常に戻さねばならん。そなたを始めとした高位貴族は全員斬首に処す。家族も同様だ」
押し黙る公爵に言葉を返すと、今度こそ国王は牢を去る。
残された公爵の顔には、笑みが浮かんでいた。