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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり10人目⑯

「すまぬ。どうやら入れ違いで逃げられたようだ」


 帝国と連合国に情報を共有して数日。

 俺たちは帝国と連合国の人海戦術を駆使して、旧教国派の包囲網を敷いていた。

 足取りを辿りながら追い込み漁のように範囲を狭めていき、小国家群方面の村をいくつか残すのみだ。

 黒幕を捉えるのも時間の問題といったところ。

 これでどうにか教国関連の問題が片付きそうだな、という安心感が芽生えてきている。


「これで残す所いくつかの村だけです。どうとでもなるでしょう。小国家群に逃げようにも、国境は我々が抑えています。もう逃げ場はありません」


 ヴァルキア代表の言うように、もう国境方面はバイレンド傭兵団の再侵攻を警戒し、兵を配置しているので、抜け出す方法は無い。

 もはや袋の鼠となっているわけだ。


「伝令! サンクリド付近にバイレンド傭兵団が出現しました!」


 あとはゆっくり旧教国派を捕らえるだけ。

 そんなつもりでいた俺たちだったが、兵士の1人が慌てて駆け込んで来た事により、ゆったりとしていた空気は一瞬で引き締まった。


「数は? おおよその接敵時間は?」


 駆け込んで来たのが帝国兵だったのもあり、ソリド将軍が代表して兵士に声をかける。

 慌てている様子だった兵士は、落ち着いた彼の声で少しばかり平静を取り戻し、その場で大きく深呼吸をして、その内容を報告していく。


「総数はおよそ200人程度。騎兵と歩兵の混成軍で、早ければ1時間後にはサンクリドから目視できる位置です」


 はて?

 警戒もしていたし、事前に打てる対策は打っていたから、200もの軍が国境を素通りする事など不可能なはず。

 状況が読めず、バイレンド傭兵団を探らせていたエスメラルダに目線を移せば、彼女は小さく横に首を振る。

 つまり、うちの暗部と諜報部隊の網を潜り抜けてきた、という事だ。


「出現したのなら、対処するしかあるまい。幸い、数は200程度というのなら、リベルヤ伯爵の手勢と我々の残存兵力で迎撃できよう」


 うちの兵力が100人程度、帝国と連合国は兵力の多くを旧教国派の炙り出しに送っているが、それぞれ50人程度を手元に残しているので、数の上では互角といった所。

 あとは作戦と兵の質が勝敗を分けるだろう。


「私はすぐに迎撃に動くので、後詰めは頼みます」


 主戦力となるのはリベルヤ家の兵力だ。

 数が多いという事は、それだけ動き出しにも時間がかかる。

 これ以上後手に回るのは避けたい状況なので、俺はすぐに準備をして出立すべく、会議室となっている教国政庁の部屋から飛び出し、拠点としている宿に駆け戻った。

 ドタバタと駆け戻ったのだから、当然タダ事ではないと、リシアたち幹部が集まってくる。


「ハイト、何があった?」


「仕掛けはよくわからないが、サンクリド近くにバイレンド傭兵団が出た。これから迎撃に向かう。全兵力を動かしてくれ」


「わかった。30分で全員をサンクリドの外に集合させる」


 100人の兵士を30分で支度させると宣言したリシアは、すぐに動き出す。

 近くにいた兵士を捕まえて、各所に伝令するよう指示を出し、本人も慌ただしく準備に取り掛かった。

 そんな彼女に頼もしさを感じつつ、俺も自分の支度を進めていく。

 しばらくぶりの、フル武装だ。


「リベルヤ家騎士団員、総勢100名。既に準備完了している。いつでも出られるぞ」


 俺が準備を終えてサンクリドの外に出れば、そこには整然と隊列を組み、一糸の乱れも無く統率された軍が待機している。

 もはや歴戦の騎士団もかくやという雰囲気すら醸し出すその練度は、一朝一夕で身に付くものではない。

 元は並程度の領軍が、これほどになるまでの調練を僅か数ヵ月で成し遂げたのだから、リシアの指導能力の高さには驚かされるばかり。


「これより俺たちは、バイレンド傭兵団の対応に向かう。恐らく、戦闘になる。相手は強さで名の知れている傭兵団。一筋縄ではいかないはずだ。だからこそ、敢えて言う。できるだけ、死ぬな。生きて王国に帰って、全員で勝利の祝杯を上げよう」


 出発前の激励を、と思って兵士たちに声をかけたのだけど、しんと静まり返っている。

 あれ、もしかして俺、盛大に滑った?


「「「「「……うおおおおお! 我らリベルヤ騎士団、敵を打ち滅ぼし、当主様に捧げましょうぞ!!」」」」」


 やらかしたかー、と思ったのも束の間。

 兵士たちから爆音で歓声が上がる。

 どうやら、余計な挨拶をせずとも士気は最高潮だったらしい。


「いい挨拶だったぞ。兵たちも士気を上げている」


 少し後ろにいるリシアが、俺にだけ聞こえるくらいの声で、よくやった、と伝えてくる。

 とりあえず、間違いではなかったようで、人知れず安心するのだった。


「行くぞ! 前進せよ!」


「ハッ!」


 リシアの号令に合わせ、士気漲る兵士たちが動き出す。

 まるで群体のように末端から末端まで統一された動きで、ずんずんと前に進んでいく。

 願わくば、彼らに犠牲が出ないように。

 そんな思いを胸に抱えながら、俺たちはバイレンド傭兵団の目撃情報があった場所へ向かう。


「見えました! 事前情報通り、総数はおよそ200!」


 事前に放っていた斥候から、敵の情報が届けられる。

 あとは主戦力となる敵の情報が把握できれば、適切な戦力配分ができるので、その辺りの情報を入手したい所だな。


「ちょっと行ってくるわ。軽く敵陣の情報を探って配置を洗い出してくるから、待っててちょうだい」


 俺の考えを読んでいたかの如く、エスメラルダがスッと姿を消した。


「あ、おい! 勝手に……」


 彼女の事だから、単独の方が動きやすいのだろうが、それはそれとして危険すぎる。

 一度止めようと思った瞬間には、彼女はとっくに姿を消していた。


「リシア、兵たちの指揮を頼む。俺はエスメラルダを追う。何か嫌な予感がする」


「……承知した。カトレス、クルス、ハイトについて行け。実地訓練だ」


 エスメラルダを追う、と俺が言った瞬間に、一瞬だけリシアは顔をしかめたが、すぐに切り替えて俺を送り出す。

 ついでとばかりに、カトレスとクルスをお供につける過保護ぶりだが、むしろ俺1人の方が身軽なんだよな。

 そう考えてから、思い直す。

 いや、これは重石と保険だ。

 俺1人だと、絶対に無茶をする。

 フリスという保険はついていても、自分の身だけなら割と軽んじる部分があるからだ。

 守る対象が多ければ、俺はより無茶はするが、考えて動く。

 上手く首輪を付けられたものだ。


「……行くぞ」


 何かを言葉にしようとして、それができなかったので、俺は誤魔化すようにして動き出す。

 戸惑う双子を引き連れて、俺はエスメラルダの後を追うのだった。

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