ワケあり9人目⑯
「できた! できたよ! 今のアタシにできる最高傑作!」
鍛冶コンテスト前日、出品作の受付を30分前に控えたその時。
執務室に勢い良くレイネスタが飛び込んで来た。
当然、ノックなんてものは無い。
悪びれの様子なんて欠片も無い、純粋に完成した成果を披露したいと目を輝かせている彼女は、きっと今の今まで鍛冶場に缶詰だったのだろう。
全身至る所を煤に塗れさせ、未だに顔には玉のような汗を浮かべている。
それでも、見ずに感じ取れるくらいには活力に満ち溢れたその様子を見るに、会心の出来だったという所か。
「ほら、早く来て!」
とりあえず軽くお説教でもしてやろう、と考えていたら、こちらの都合などお構いなしに、レイネスタは俺の手を掴み、引き摺る勢いで俺を鍛冶場へと連行していく。
素の筋力で負けている以上、俺に抵抗する術は無く、あっという間に鍛冶場へと連れ込まれてしまう。
「ハイトサマ、オマチシテオリマシタ。マスターノコンシンノサクヒン、ゼヒトモゴカクニンクダサイマセ」
機械音声ながら流暢に喋るヨツアシくんに出迎えられ、とりあえず出品登録までの時間も無い事を考え、黙って話を聞く事にする。
「見た目も! 機能も! 最高傑作だよ!」
ドヤ顔でレイネスタが指し示す作品を見れば、俺は少なくともすぐに言葉が出なかった。
どんなお説教をしてやろうか、と直前まで考えていたはずだが、そんなものはすっかり頭から抜け落ちてしまう程度には、その作品たちのインパクトは強い。
「どう!? もしかして、すごすぎて言葉も出ない!?」
テンションMAXのレイネスタの言う通りなのは、少しばかり癪ではあるが、言葉が出ないのも事実だ。
最優秀賞は王族への献上品となる事から、最初からその方向性でデザインを固めていたのだろう。
少し艶を抑えた上品な白銀色を基調に、随所に差し色として金や赤を使用しており、王家の誰かが纏う鎧としては、申し分無いように見えるな。
デザインベースは一般的なフルプレートの鎧であり、部分部分に細かな掘り込みがあるのが華美になりすぎない程度に美しさを際立たせている。
付随する剣、槍、盾も鎧に合わせた配色とデザインになっており、一式で使う事を想定しているのだろう。
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守護者の鎧
エンシェントゴーレムの素材をふんだんに使用した合金で加工された鎧。
エンシェントゴーレムに由来する機能で、使用者へ合わせてサイズが変わり、自己修復機能も持つ。
奇跡的な配合によって実現した合金は、強力な守りの力を秘めており、大抵の攻撃は殆どの威力を削ぐ事が可能。
大切なものを守るためには、まずは己こそを守らなければならない。
そんな製作者の想いによって生まれた傑作。
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守護者のガントレット
エンシェントゴーレムの素材をふんだんに使用した合金で加工されたガントレット。
エンシェントゴーレムに由来する機能で、使用者へ合わせてサイズが変わり、自己修復機能も持つ。
奇跡的な配合によって実現した合金は、強力な守りの力を秘めており、大抵の攻撃は殆どの威力を削ぐ事が可能。
大切なものを守るためには、まずは己こそを守らなければならない。
そんな製作者の想いによって生まれた傑作。
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守護者のサバトン
エンシェントゴーレムの素材をふんだんに使用した合金で加工されたサバトン。
エンシェントゴーレムに由来する機能で、使用者へ合わせてサイズが変わり、自己修復機能も持つ。
奇跡的な配合によって実現した合金は、強力な守りの力を秘めており、大抵の攻撃は殆どの威力を削ぐ事が可能。
大切なものを守るためには、まずは己こそを守らなければならない。
そんな製作者の想いによって生まれた傑作。
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守護者の盾
エンシェントゴーレムの素材をふんだんに使用した合金で加工された盾。
標準的なカイトシールドだが、エンシェントゴーレムに由来する機能で、自己修復機能を持つ。
奇跡的な配合によって実現した合金は、強力な守りの力を秘めており、大抵の攻撃は殆どの威力を削ぐ事が可能。
術関連にも物理関連にも鉄壁の防御力を誇る。
素の状態で魔力を弾く事が可能で、これは素材となったエンシェントゴーレムの特性に由来する。
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守護者の剣
エンシェントゴーレムの素材をふんだんに使用した合金で加工された剣。
標準的なロングソードだが、エンシェントゴーレムに由来する機能で、自己修復機能を持つ。
奇跡的な配合によって実現した合金は、強力な守りの力を秘めており、大抵の攻撃は殆どの威力を削ぐ事が可能。
守るためにこそ、敵を打ち滅ぼすための鋭い刃を持つ。
素の状態で魔力を切り裂く事が可能で、これは素材となったエンシェントゴーレムの特性に由来する。
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守護者の槍
エンシェントゴーレムの素材をふんだんに使用した合金で加工された槍。
標準的なウィングドスピアだが、エンシェントゴーレムに由来する機能で、自己修復機能を持つ。
奇跡的な配合によって実現した合金は、強力な守りの力を秘めており、大抵の攻撃は殆どの威力を削ぐ事が可能。
守るためにこそ、敵を打ち滅ぼすための鋭い穂先を持つ。
素の状態で魔力を貫く事が可能で、これは素材となったエンシェントゴーレムの特性に由来する。
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「……ベストは尽くせたか?」
あれこれ考えて、俺がこの作品へ評価を下すのは違う気がしたので、俺はレイネスタが全力を尽くせたかを問いかけた。
「うん! 全部やり切った! これが、今のアタシにできる全てを注ぎ込んだ、最高傑作!」
もはや一片の悔い無し、とばかりに眩しい笑顔を浮かべた彼女を見て、俺はその気持ちに嘘偽りが無い事を確認。
あとは時間までに王城に届けないとな。
とはいえ、急げば時間にして5分もあれば貴族街から王城へと到着する。
まだまだ時間に余裕はあるから大丈夫……。
「おい!? レイネスタ!?」
いきなり、レイネスタがバタンと仰向けに倒れた。
俺は驚いて彼女に駆け寄るも、その姿を見てホッと胸を撫で下ろす。
まるで電池が切れたかのように、穏やかな表情で寝息を立てる彼女は、きっと最後の最後、ギリギリのギリギリまで力を振り絞ったのだろう。
「ハイトサマ、マスターハワタクシにオマカセクダサイ。ハイトサマニハサクヒンヲノウヒンシテイタダキタクゾンジマス」
「わかった。こんなになるまで頑張ってくれたんだ。俺が納品を遅らせるわけにゃいかねえよな」
ヨツアシくんにレイネスタを託し、俺は彼女の作品を持って王城へと急いだ。
滑り込み、とはいえ締め切りの10分前には受付納品を済ませる事ができたので、ホッと一安心。
さて、レイネスタの作品たちが、どれだけの結果を残してくれるのか、楽しみでもあり、怖くもある。
願わくば、彼女を捨てた家族を見返す事ができますように、とささやかな願いを込め、俺は王城を後にするのだった。




