ワケあり9人目⑪
さらに筆乗りが良くて3ページ目の更新でございます。
毎日これくらい書けたらいいのに。
「こんな浅い階層にいい鉱石が残ってるなんて! ハイト! 見て見て!」
どれくらいの数のプチゴーレムを薙ぎ払っただろうか。
もはや計上するのが億劫になるくらいには薙ぎ払い続け、周囲にはこんもりとプチゴーレムの残骸が積み上がった頃。
意気揚々と入った穴から這い出てきたレイネスタは、自慢するように採ってきた物を頭上に掲げたが、俺はそれを無視し、無言で彼女の頭に拳骨を見舞う。
「いったぁ……何すんの……」
拳骨を落とされた理由は分かっていなさそうなレイネスタは、涙目でこちらを見上げてくるが、俺はジト目で睨み返すのみ。
全く、俺だったから良かったものの、一般の冒険者ならくたばってたぞ。
「勝手に一人で行動した罰だ。この辺に散らばってるの、何だかわかるか?」
顎で周辺に散らばるプチゴーレムの残骸を示すと、今初めて気付いたとばかりに、彼女は目を丸くする。
夢中になるとすっかり周りが見えなくなるタイプだな、こりゃ。
「これ……ゴーレムの破片?」
「ああ。レイネスタが空けた穴に入ってから、何かの匂いが出始めて、こいつらがワラワラ出て来やがった。プチゴーレムだったから良かったものの、下手すりゃ俺もお前も死んでたぞ」
こればっかりは流石に甘い事を言っていられないため、かなり強めの口調で事実を突き付けた。
あんまり怒りたくはないんだけど、本当に自分と他人の命が懸かってるからな。
「ゴメン……アタシ、珍しい鉱石があると思ったら、それに目が眩んじゃって……」
さすがに自分が悪いとすぐに理解したようで、レイネスタはしゅんとしながら頭を下げてくる。
まあ、とりあえずはこれでいいか。
あんまり強く言いすぎてもだし。
「次からは何か見つけたら、必ず俺に報告してくれ。採取しに行くなら、ちゃんと安全を確保してからだ。いいな?」
「……わかった。ホントにゴメンね」
とりあえず反省してくれたようなので、改めて深部に向けて2人で歩く。
どうやら、すっかりしょげてしまったようで、あれほどテンションの高かったレイネスタは、ロクに言葉も発しないまま歩いている。
あまり引き摺られてもなと思うので、先ほど彼女が夢中になってまで採取に行った物について聞いてみるか。
「ところで、さっき取りに行ってたのは何だ? 珍しいものだと言ってたけど」
周囲への警戒は怠らないようにしつつ、声をかけてみれば、俯きがちだった彼女は、勢い良く顔を上げた。
「これ! 月虹石! 発生条件も、生成条件も、何もわかってないの!」
さっきのしょげていた様子はどこへやら。
右手の平の乗せた物を俺に見えるようにしながら、テンション高く解説を始めたのを見て、俺は思わず現金だなあ、と苦笑いを浮かべてしまうも、そんな事には気付いていない模様。
「ふーん、確かに不思議な石? だな」
彼女の手の平に乗っている、拳大くらいの石。
見た目はビスマス鋼のような、四角が組み合わさったような複雑な形をしていて、全体は薄らと黄色がかった透明な色だ。
ただ、光を反射している部分は虹色に輝いており、一体どういう材質のものなのだろう、と考えてしまう程度には不思議な材質なのがパッと見でもわかる。
「でしょ!? 滅多に出回らないし、すっごい値段で取引されるから、そうそうお目にかかれないんだ! もしかしたら、王城の宝物庫にも無いかも!」
説明を聞く限りでは、相当どころか国宝レベルで珍しい物らしい。
「へー。陛下に献上したら、喜ばれそうだなー」
ふと、レア物を献上したら陛下はどれくらいの価値を付けるだろうか、と興味本位で考えていた事が、口に出てしまったのだが、その瞬間にレイネスタは涙目で月虹石を後ろに隠してしまう。
「ダメ! ロクに使われもしない所にこの子がしまわれちゃうなんて、勿体無いよ! 宝石じゃないんだから、ただ飾るだけじゃ意味なんて無いんだから!」
「お、おう……冗談だから本気にしないでくれ」
よほど手放したくないらしいな。
とりあえず、帰ったら稀少素材の保管用金庫を鍛冶場に設置するようにしようか。
いや、いっそ鍛冶場に横付けで新しく保管庫を作ってもいいかもしれん。
今後、間違い無く稀少な素材をストックするようになるし。
この辺りはちょっと陛下にも頼ろうかな。
俺一人では伝手もノウハウも無い。
ともあれ、レイネスタは元気を取り戻したようだし、あとは深部のエンシェントゴーレムの面を拝んで、倒せれば倒す。
個人的には、俺が戦って楽に勝てるような弱い個体だと助かるけど。
こういう時って、大体はそうならないんだよな。
そんな事を考えながら歩くうち、ついに深部へと到達。
ここからはかなり危険になるので、深部の入口にレイネスタを残し、彼女の周囲に魔術でカッチカチの結界を張っておく。
「さーて、どんなヤツが出てくるかね……」
奇襲も警戒しつつ、魔術の明かりを頭上に浮かべてゆっくりと歩を進めていく。
事前情報通りなら、既にここはヤツの領域の中。
いつ襲ってきてもおかしくない。
「……お出ましか」
重々しい足音と共に、ブザーのような警告音を鳴らしながら、ヤツは現れた。
4足歩行しながら、丸い頭部にある目のような部分がこちらを見据え、距離を詰めてくる。
ざっくりと言うのなら、メト〇イドドレッドのE.M.M.〇.に似た感じの、ロボットのような見た目。
光沢のあるボディは、金属製である証左だが、果たしてどのような素材でできたものなのか。
見た目上、注意すべきは東部の目のようなセンサー部と、4つ足の鉤爪か。
機動力はゴーレムの中ではかなりある方だろうし、人型でない事から、予想も付かない奇抜な動きをしてくる可能性もあるから、常に警戒は怠れない。
「ピー、シンニュウシャ、タイキョセヨ」
驚いた。
機械音声で、わざわざ退去勧告をしてくるなんて。
間違い無いな。
こいつは人の手で作られた存在だ。
でなきゃ、魔物であるはずのゴーレムが、人の言葉を理解して、わざわざ警告をしてくるなんて考えられない。
「生憎と、こっちにも退けない理由があってね。そっちが攻撃してこないのなら、お互いに争う必要も無いんだがな」
ダメで元々、と思いつつも、眼前に姿を現したゴーレムに話しかけてみる。
これで意思疎通ができるのなら、どれだけ高度な技術で作られたゴーレムなのかって話だ。
「ココカラサキ、キケン。ズットイキテルゴーレム、イル」
頭部のセンサーを明滅させながら、ゴーレムは俺の言葉に対して返答をしてきた。
おいおい、これマジで相当な技術で作られてるな?
受け答えできる知能を持ったゴーレムなんて、聞いた事が無い。
ともあれ、積極的に敵対してこないのであれば、こちらから敵対して無駄な戦闘を行う必要も無いわけで。
「そのずっと生きてるゴーレムってのは、どこにいるんだ?」
もしかしたら、と再度ゴーレムへと問いかける。
「ココカラ、11ジノホウコウ。リュウヨリモツヨイ」
11時の方向、ね。
とりあえず、ずっと生きてるゴーレムとやらのツラを拝みに行くとするか。
逃げるだけならどうとでもなるし、あまりにも危険なのであれば、改めて深部を埋め直してもいい。
「ソレイジョウハ、キケン、キケン、キキキキキキキ……」
俺が先に進もうとした瞬間に、センサーを赤色に光らせ、俺の進む先を通せんぼしようとしたゴーレム。
だが、急に甲高い音を響かせたかと思えば、急に壊れたおもちゃのような音を発し、すぐに機能を停止してしまった。
稼働限界だったのだろうか?
あるいは、何かしら故障でも起きたのだろうか?
いずれにしても、俺が先に進む事は変わらない。
どんな化け物が出てくるか、と身構えつつ、俺は先に進むのだった。




