ワケあり9人目⑨
「待たせたな! 最ッ高の鍛冶道具を打ってきたぞ!」
ノウノック夫妻との邂逅からちょうど3日目の昼過ぎ。
台車に道具を乗せたスミロス氏が、鼻息も荒くリベルヤ邸にやってきた。
カバーを被せた状態で台車に乗っている道具一式を、そのまま鍛冶場の方に運び込んでもらい、まずは設置前に本人に確認してもらう事にする。
「レイネスタ、実際に道具を握って確認しておくれ」
今日も今日とて鍛冶場に籠ってメモを量産していたレイネスタだったが、スミロス氏の来訪に気付くと、作業を中断して彼の下へと走った。
何だかんだで、彼女も自分専用の鍛冶道具というのに憧れがあったのだろう。
「これが、アタシ専用の鍛冶道具……!」
カバーが取り払われ、台車の上に鎮座している道具たちを見て、レイネスタは目を輝かせた。
どんな物が用意されたのか、俺も興味があったので、台車の上の道具たちを鑑定しながら、はしゃぐレイネスタの様子を見守る。
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万能の鍛冶鎚
全ての金属という金属をこれ一本で鍛える事が可能という、全ての鍛冶屋の夢と希望が詰まった鍛冶鎚。
黒重鋼・不変硬鉱・無限変銀・緋々色金を黄金比で混ぜ合わせた合金で鍛えられており、絶対に折れず、欠けず、曲がらず、あらゆる金属を鍛え上げる事が可能。
使用者の魔力が馴染めば馴染むほどに、鍛えた上げた物の品質が上がりやすくなる。
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万能の金床
全ての金属という金属を鍛える事が可能という、全ての鍛冶屋の夢と希望が詰まった金床。
黒重鋼・不変硬鉱・無限変銀・緋々色金を黄金比で混ぜ合わせた合金で鍛えられており、絶対に変形せず、凹まず、欠けず、あらゆる金属を鍛え上げる事が可能。
微妙に違う合金の配合率がミソで、どんな衝撃もしっかりと受け止める事ができる。
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万能の金属鑢
全ての金属という金属を研磨可能という、全ての鍛冶屋の夢と希望が詰まった鑢。
黒重鋼・不変硬鉱・無限変銀・緋々色金を黄金比で混ぜ合わせた合金で鍛えられており、絶対に擦り減らず、変形せず、曲がらず、あらゆる金属を研磨する事が可能。
表と裏で目の細かさの違うものが5種類あり、用途に応じて10種類の仕上がりを選ぶ事が可能。
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万能工具セット
様々な状況に応じて使い分けられる工具セット。
黒重鋼・不変硬鉱・無限変銀・緋々色金を黄金比で混ぜ合わせた合金で鍛えられており、絶対に絶対に折れず、欠けず、曲がらない。
状況に応じて使い分けられる様々な工具がセットになっており、腰巻のベルトにセットできるようになっているため、作業時も邪魔にならない。
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自動回転型万能砥石
円盤状に成形された砥石が動力で高速回転し、自動で研磨できる砥石。
様々な鉱物を混ぜ合わせて製作された砥石は、あらゆる物質を研磨する事が可能でありながら、非常に硬質で、耐摩耗性が高い。
動力には魔石を利用しており、細かな回転速度の調整が可能。
鑢では大変な広範囲の研磨や、より細かい仕上がりを目指す場合に用いる。
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万能仕上げ砥石
ブロック状に成形された仕上げ用の砥石。
様々な鉱物を混ぜ合わせて製作された砥石は、あらゆる物質を研磨する事が可能でありながら、非常に硬質で、耐摩耗性が高い。
最後の仕上げを手で行うためのもので、とても目が細かい。
簡単に鏡面仕上げにできるほどの目の細かさで、刃物をこれで仕上げれば、凄まじい切れ味がとても長持ちする。
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火竜革の鍛冶手袋
生物の中でも特に熱に強いとされる、火竜の革を用いて製作された手袋。
丁寧に鞣され、その上で不燃コーティング加工を施された火竜の革を二重にする事で、薄手でありながら完璧な熱遮断を実現している。
鍛冶手袋としてはかなり薄手だが、元より頑丈な竜種の革であるため、強度は充分であり、薄手ゆえに細かい感覚を必要とする作業も邪魔しない。
また、竜種の革だけあって薬品や劇物の耐性もバッチリ。
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火竜革の鍛冶エプロン
生物の中でも特に熱に強いとされる、火竜の革を用いて製作されたエプロン。
丁寧に鞣され、その上で不燃コーティング加工を施された火竜の革を二重にする事で、薄手でありながら完璧な熱遮断を実現している。
鍛冶用エプロンとしてはかなり薄手だが、元より頑丈な竜種の革であるため、強度は充分。
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不燃竜糸の鍛冶つなぎ
生物の中でも特に熱に強いとされる、火竜の脂を用いて紡いだ糸で加工した鍛冶作業用のつなぎ。
通気性が良く、吸湿と速乾性に優れた特殊な糸を、熱を遮断する火竜の脂肪でコーティングする事により、暑さを和らげつつも耐熱性のある素材となった。
その上で付与魔術による体温調整と耐火が付与されているため、長時間の鍛冶作業においても身体への負担は極限まで抑えられている。
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鍛冶用耐火ゴーグル
鍛冶作業において目を保護するためのゴーグル。
高い耐火性能を持ち、軽くて頑丈な火山虫の甲殻を綺麗に磨き上げ、特殊な仕上げで透明にしたものを、熱を遮断する火竜の脂肪でコーティングする事により、ゴーグルとしたもの。
完全に目を覆って密閉できるように作られているため、薬品などの劇物使用時も安心。
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「すごい……おじいちゃん、ありがと!」
喜びの余り、レイネシアがスミロス氏に抱き着いたが、そうなるのも無理は無いくらいのトンデモ道具の数々だ。
これは想像以上のものを用意してくれたなあ。
今こそレイネシアに抱き着かれて孫デレしているが、間違い無くスミロス氏の鍛冶の腕が光る道具の数々だ。
「相当なものを用意してくれたみたいですね。私からも礼を言います」
「なに、孫のためならこれくらい屁でもない! ほれ、レイネシア、金床や自動砥石はどこに置く?」
俺がスミロス氏に礼を述べると、構わんと笑い飛ばし、それからやいのやいのとレイネスタと相談しながら持ってきた金床などを設置していく。
元置いてあった物に関しては、金属は溶かして鍛冶に、木材は薪や加工用に再利用されることが決まる。
「レイネスタ。鍛冶コンテスト、応援しとるぞ」
「うん!」
諸々の設置や移動作業を終え、空になった台車を引きながらスミロス氏は帰っていく。
レイネスタと2人、その背中を見送ってから、俺たちは鍛冶コンテストに向けた打ち合わせを始めるのだった。




