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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり9人目⑧

「ある程度の経緯はレイネスタから聞いていますが、何で彼女は生家で虐げられるような生活を強いられていたんですか?」


 本人の感じ方と、外部からの感じ方は違うものだし、血縁関係のある間柄だからこそわかる事もあるだろう。

 そう思っての聞き込みだったが、やはりというか、スミロス氏とイーザーさんは表情を曇らせた。

 どこまでを話すべきか、と考えている風だったが、やがて意を決したようにスミロスさんが語り始める。


「まずは、簡単にうちとベスプリーム家について話そう。今では鍛冶の大家として有名なベスプリームだが、ちょうど20年前くらいに王家が主催する鍛冶コンテストで優勝し、王家への献上品を出したのが始まりだ。当然、コンテストで名が売れて、元は小さな鍛冶場を営んでいたベスプリームは大きく成長し、様々な場で顔と名が売れた。有名となったからには技術と子孫を絶やすわけにはいかないとなって、婚約者を探し始めたのだが、そこで白羽の矢が立ったのがうちだ。武器や防具は専門じゃなかったが、ノウノック道具店と言えば、生活用品の鍛冶屋として既にそこそこ名が売れていた。取り込む血筋としては最適だと思ったんだろうな。その当時、まだ18くらいだったうちの娘を嫁に、と縁談を持ち掛けられて、俺たちはすぐに婚約はさせなかったが、ひとまずは交際をさせる事にした。それから1年かけて交際させて、問題も無かったから娘との婚約を認めたが、それからほどなくして子供ができた。1人目は男の子で、それから毎年孫ができてなあ。レイネスタは末っ子で3人目の子供だったが、ベスプリームでは唯一の女児だった」


 当時を懐かしむように語るスミロス氏の口調は穏やかだったが、その表情は苦い物を噛み締めるかのようだ。

 どうも、あまりいい思い出ではないらしい。


「その頃からかねえ。ベスプリームの連中がつけ上がり始めたのは。ブランドを作って商売っ気を出すのはいいけど、態度もドンドンでかくなっていってねえ。嫁いでった娘もすっかり毒されちまったよ。それからあたしたちはベスプリームから距離を置いてたんだけれど、そのせいでレイネスタの扱いに気付けなかった。つい昨日、アロガンの馬鹿野郎が急にレイネスタを勘当して奴隷に売ってきたって言い出したから、あたしらは焦ったよ。何なら、すぐに奴隷商に買い戻しに行ったけど、既に売れた後だった。こうして伯爵様が買ってくれてたから良かったものの、あたしゃもうレイネスタには会えないと思っていたよ」


 後を引き継ぐように語るイーザーさんの口調には、確かにベスプリームに対する嫌悪と怒りが滲んでいる。

 ともあれ、事情は何となく理解できた。

 要するにベスプリームは調子に乗ってて鬱陶しいから、親族として付き合いたくないってなったわけだ。

 そして、そのせいでレイネスタが虐げられていた事に気付いていなかった、と。


「……伯爵様、頼みがある」


 一度、スミロス氏はイーザーさんと顔を見合わせてから、お互いに小さく頷き、俺の方へと向き直って重々しい雰囲気で話を切り出した。

 何となく、今後の展開は読めたかな。


「レイネスタを、買い戻させちゃくれないか? 10倍の金額を払ってもいい。もうこの子に、辛い思いをさせたくないんだ」


 何となく予想していた内容の質問だったので、俺はその質問に対する返答を既に決めている。


「レイネスタは、どうしたい? 親族と暮らしたいなら、俺はそれを尊重する」


 俺が判断をレイネスタに委ねたので、スミロス氏とイーザーさんの視線が彼女に向く。

 自分に判断を委ねられると思っていなかったのか、当の彼女はビクリと身体を反応させてから、考える素振りを見せた。


「……おじいちゃん、おばあちゃん、ごめん」


 5分ほど、無言で思案に耽っていたレイネスタは、決意を固めた表情で2人に頭を下げる。


「理由を、聞いてもいいかい?」


 辛そうな表情を隠そうとしながら、イーザーさんが震える声で問う。


「アタシさ、決めたんだ。次の鍛冶コンテストで優勝して、クソみたいな家族を見返してやる、って。ハイトは、アタシの鍛冶を見て、否定せずに受け入れてくれた。手際がいいって褒めてくれた。アタシなら、コンテストで優勝できるって、本心から言ってくれた。もう人生を諦めてたアタシに、火を点けてくれた。だから、アタシはこのままハイトの所で恩を返すために働くよ」


 決意の固まった、真面目な表情で理由を語るレイネスタに、スミロス氏はそうか、と一言だけ漏らす。


「勘違いしないでね! 別におじいちゃんとおばあちゃんが嫌いとか、そういうんじゃないから!」


 スミロス氏の反応を見て、自分がやらかしたと思ったのか、レイネスタは慌ててそう付け加えるも、それを見たノウノック夫妻は、微笑ましい表情で彼女を見るのだった。


「レイネスタ、お前の気持ちはわかったよ。お前がそう決めたのなら、思うようにするといい。俺たちは、お前の味方だ」


「あの傲慢鍛冶屋にやり返そうって気概は気に入ったよ! ぜひともけちょんけちょんにしてやんな!」


 ノウノック夫妻に快く自分の決断を肯定されたからか、レイネスタは少しだけ気恥ずかしそうにしながらも、歳相応の笑顔ではにかんだ。


「おじいちゃんも、おばあちゃんも、ありがと」


 照れながらも、小さな声で礼を述べる孫を見て、ノウノック夫妻はすっかり孫を溺愛するジジババの顔になっている。

 まあ、とりあえずは丸く収まりそうで良かったかな。


「伯爵様、レイネスタの事を頼みます」


「ええ。任せて下さい」


 レイネスタを頼む、とこちらに深々と頭を下げたスミロス氏に応えるように、俺も頭を下げる。

 ひとまず、レイネスタに関する話はこれで終わったと見ていいか。


「ところで、今日は何を求めてうちに?」


 話が一段落したからか、俺たちがここに来ていた理由を尋ねてきたスミロス氏に、レイネスタ用の鍛冶道具や身の回り品なんかを揃えに来た、と話してみれば、彼はドンと自分の胸を叩く。


「それなら、俺がレイネスタの鍛冶道具一式を打とう。元々、レイネスタが独り立ちするのなら、鍛冶道具一式を贈ろうと思ってたんだ。機会としてはちょうどいい」


「なるほど。それは助かります。製作費用はうちで持ちますので、後で請求書をリベルヤ伯爵家に回して下さい」


 気合いの入り具合からして、何かとんでもない物を作り出しそうだな、という気がしたので、制作費用はうちで持つ、と伝えても、スミロス氏は首を横に振った。


「いいや、これは俺たちが孫に贈るプレゼントだ。それを伯爵様に負担してもらうわけにはいかねえ。なに、心配しなくても手は抜かないし、3日くらいで仕上げるさ。なあ、イーザー?」


「ああ! 腕が鳴るねえ!」


 会話を聞いてる限りだと、イーザーさんも鍛冶に参加するらしいな。

 てっきり、スミロス氏が製作担当で、イーザーさんは店番とかそっち方面担当だと思ってたわ。


「鍛冶道具は完成次第、屋敷の方に届けよう」


「レイネスタにピッタリの物を作るから、楽しみにしといておくれ」


 話が色々と纏まった所で、俺たちはノウノック道具店を辞した。

 鍛冶道具以外にも、ドワーフサイズの日用品なども購入し、その足でレイネスタの普段着を別の店で買ったりして、俺たちは屋敷へと戻ったのだった。

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