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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり8人目㉕

また新しく感想を頂きました!

ありがとうございます!

「皆様、お茶をどうぞ」


 朝食を終え、シャルとエスメラルダを交えての打ち合わせから、いつも通りに執務に入る。

 とは言え、王都にいる間に済ませておきたい仕事は片付いているので、今は領地であるラウンズへの移動に伴う支度がメインだ。

 持って行く荷物の他に、王都の屋敷に残す人選や、逆に連れていく人選を選ばなくてはいけない。

 大まかには主要メンバーと各部門のトップは全員ラウンズ行きが決まっており、今のサブリーダーに王都の屋敷を任せる形になる。

 そうなってくると、主に俺とシャルとエスメラルダの3人での会議になり、午前中からあれやこれやと話し合うのだが、やはり話を続けていれば喉が渇いてくるわけで。

 そろそろ飲み物を用意してもらおうか、と考えた矢先に、リリスが人数分の紅茶を淹れてくれており、紅茶の香りに混じって、ミルクの香りが漂う。


「喋っていると喉が渇くかと思い、ミルクティーをご用意いたしました。他に必要なものがあれば、なんなりとお申し付け下さいませ」


「あら、気が利くじゃない。さすが、シャルロットが空いてた侍女長のポストを当てただけあるわね」


 あまりにもタイミングの良い給仕だったためか、エスメラルダが上機嫌そうにリリスを褒める。

 元々は貴族当主だっただけに、その辺りの感覚は俺よりよほど貴族らしい彼女が、手放しに褒めているのだから、リリスのメイドとしての能力はかなり高いのだろう。

 実際、リリスの働きを見るのは今日が初めてだが、俺の着替えの介助から始まったその仕事ぶりは、とても迅速で手際がいい。

 今まで侍女を務めていた者たちからすれば、ポッと出の人がいきなり侍女長のポストに収まったわけだが、その全員を仕事ぶりで黙らせたらしいから、シャルの采配も当然だ。

 朝の打ち合わせの時に聞いたのだが、俺が王女様方と顔合わせに行っている間に、屋敷の使用人全員に格の違いを見せ付けるほどの仕事ぶりを見せたとか。

 たった数日で頼れる上司としての地位を獲得したリリスは、今となっては1人で使用人全員を管理しているという。

 シャルが使用人関係の仕事が全部を手を離れたと言っていたから、彼女の有能さがすごい。

 一部とはいえ、シャルから仕事を奪えるって普通に凄いな。

 俺が内心で感心しきりなのを後目に、給仕を終えたリリスは執務室を後にしていた。

 

「……俺は今日が初めてだから聞くけどさ。リリスの侍女長としての能力ってどんくらい凄いんだ? 恥ずかしながら、俺の実家は中から全部腐ってたから基準がわからん」


 俺の実家、もう両親や兄弟からして選民思想に染まって腐りきった傲慢貴族だったからね。

 当然、使用人たちも自然と腐ってるわけで。

 上位の使用人は下位の使用人に仕事を押し付け、手柄は自分の物。

 下位の使用人が逃げようとすれば、弱みを握って使い潰す。

 そんな環境が当たり前だったから、普通の使用人の基準がわかんらないんだよな。

 唯一、俺の実家を知るシャルは、あー、と気まずそうな表情になった。

 そうだよね。

 どう考えても擁護できないゴミしかいなかったよね俺の実家。

 本当にすみませんでした。


「……何となく、あなたの生い立ちは聞いていたけれど、想像以上に酷かったのね」


 俺の発言を聞いて、エスメラルダが可哀そうなものを見る目でこちらを見てきた。

 うん、普通はそういう反応になるよね。

 シャルは優しいからどう反応したものか困ってたみたいだけど。


「まあいいわ。リリスの能力は、あのまま王城に連れて行っても間違いなく筆頭侍女長になるわね。王城の使用人の実権を握るのも時間の問題でしょう」


「つまり、とんでもなく有能って事か?」


「ええ。特に使用人関連の能力に限れば、何もかもシャルロットより上ね。まあ、おおよそ全てを高水準でこなすシャルロットが一番化け物染みてるとは思うけれど」


 エスメラルダの言い方がすっげえ辛辣なんだけど、ある意味で最上級に褒めてんだよな、これ。

 実際、荒事関連以外なら、シャルの総合力が一番イカレてんだよ。

 口では簡単に王家の皆さんを言い負かすし、投資や資産運用も最低限の支出で最大限の利益を出してるし、そもそも見据えてる先の未来が広すぎる。

 それでいて運動神経も抜群で、並の貴族令嬢に比べたら体力もかなりあるし、マジで戦闘関連の才能だけはゼロってくらいしか欠点が無い。

 

「私の事はいいですから、早くラウンズに連れていく使用人の人選を終わらせますよ。出発がすぐそこなんですから」


 話が脇道に逸れた所を、シャルが鶴の一声で軌道修正し、連れて行く使用人と屋敷に残す使用人の細部を詰めていく。

 連れて行く使用人と屋敷に残す使用人の相性やら何やら、細かい部分まで内容を詰めていたら、あっという間に昼時となっていた。

 午前中の訓練、すっぽしちまったな。


「……まあ、事前準備としてはこんなものじゃないかしら? あとは向こうに着いてから微調整すればいいわ」


「そうですね。それで問題無いかと」


「そしたら、午後からは訓練に行くかな。午前中は座りっぱなしだったから、身体が固まった感じするし」


 現状片付けておく仕事に一区切りがついたので、各々立ち上がって食堂に向かう流れになった。

 シャル、エスメラルダと連れ立って食堂へと向かう道すがら、一人のメイドと話しているリリスが目に入る。

 確か、リリスの前に入った一番新人のメイドだったと思う。


「……ですから、こうした調度品は、柔らかい布で優しく拭くのです。綺麗に保つためのお掃除で、傷を付けてしまっては意味がありませんからね」


「こう、でしょうか?」


「はい。そうして優しく手早く掃除をするのです。毎日掃除をしていれば、それほど強く汚れる事はありませんから。何かしらの理由で強い汚れが付いたのなら、その時はそれ専用の掃除をする必要がありますが、今は基本業務を覚えて下さい」


 新人のメイドに、手取り足取り指導をしている彼女を見て、微笑ましい気分になる。

 以前は店を経営していたくらいだし、指導のノウハウをキチンと持っているのだろう。


「あら、当主様たち。これから昼食ですか?」


 それとなく様子を伺っていたのに気付いたのか、リリスがこちらに向いて小さく会釈してくる。

 他人の目があるからか、完全に使用人モードだ。


「ああ。午前中の仕事が片付いたからな。昼メシを食ったら午後は戦闘訓練に出るよ。午前中座りっぱなしで身体が鈍りそうだし」


「かしこまりました。お怪我にお気を付け下さいませ。仕事が一段落しましたら、ワタシも訓練に伺いますので」


「わかった。でも無理はしないようにな」


 後で訓練に顔を出す、というリリスと別れ、俺たちは昼食を摂った。

 食事を終え、少しばかり食休みを挟んでから、庭に出てリシアの訓練に混ざる。

 準備運動とストレッチから、走り込みなどの基礎トレーニングをこなして、各々が組手をする辺りになって、リリスが姿を見せたのだが、メイド服のままだ。


「リリス、そのままじゃ動きにくいだろ」


 そんな彼女を見たジェーンが、服装の事にツッコミを入れると、リリスはにっこりと笑みを浮かべた。


「私が戦闘行為を行う際は大半がこの服装でしょうから、本番を想定するのなら、このままの服装がベストでしょう」


 どこか、挑発的にも見える笑みを見て、ジェーンが獰猛に笑う。


「面白え。来いよ新入り。どれだけできるか、試してやんよ」


 鑑定の時にそれなりの戦闘技能を持ってるのは見たけど、いきなりジェーンはハードル高くない?

 何だかんだでうちの武力担当ナンバー2よ?

 ちなみに言うまでもなくナンバー1はカナエで、ナンバー3は僅差でリシアだ。

 なお、ナンバーが上になるほど脳筋になる模様。

 頭脳においてはカナエ<ジェーン<越えられない壁<リシアになるんだけども。


「では、一手ご指南をお願いしますね。とはいえ、ワタシもそうそう簡単にはやられませんよ?」


 とりあえずジェーンとカナエはやめとけ、と仲裁に入ろうかと思ったら、リリスの方から承諾してしまったので、俺は開きかけた口を閉じざるを得ない。

 大丈夫か、とこの場を仕切るリシアに目配せをしてみたら、とりあえずやらせてみて、いざとなったら私が止めよう、とアイコンタクトを返してきた。

 まあ、リシアが止めに入るなら、まあ何とかなるか。

 何だかんだで、ジェーンが一番手加減できないんだよな。

 短気だから逆鱗に触れたら即ブチ切れるし。

 最近なんてそれを知ったエスメラルダが彼女を挑発して、冷静さを欠かせてから勝つように組手をやってるくらいだし。

 とりあえず、お互いに怪我だけはしないでくれよ、と思っていたら、ジェーンが組手をやると聞いたこの場のみんなが、暗黙の了解でスペースを大きく空けていく。

 どうしても、カナエとジェーン辺りが組手をやると周辺被害が甚大になりがちなので、事故防止のために退避する習慣ができてしまったのだ。

 まあ、半分人間兵器みたいなものだし、しょうがないね。

 ともあれ、一体どうなる事やら、と漠然とした不安を抱えながら、俺もスペースを空けるのだった。

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