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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり8人目⑳

本日3回目の更新です。

久しぶりに筆乗りが良くてですね……。

「アナタが私の店で一夜を過ごしてから、程なくして使用人の募集をしていたわよね。ワタシたちは、それに応募するつもりだったのよ」


 当時を振り返るように、リリスさんが語る。

 使用人の募集に応募するつもりだった、と聞かされて、俺は内心で驚くものの、そのまま先を促す。


「店の子たちとも話し合ってね。みんなで一緒に行こうって決めたの。そうなると、お店や土地なんかはもう必要無くなるから、売りに出す事にしたのよ。思えば、そこで早くに買い手が付くなら、って値段を気にせずに売ったのが、大きな間違いだったわ。あの男は、書類上の不備を捏造した上で、下見の時に店で床が抜けて怪我をした、と私たちを訴えたのよ。当然、そんな予測をしていない私たちと、そのための準備をしてたあの男、どっちが勝つかなんて、わかりきっているわよね」


 その訴えが受理され、高額な罰金が科せられたが、支払えずに借金奴隷へと落ちる事になった。

 それがリリスさんたちの大まかな事情らしい。

 それからというもの、フラウドは調教と称してリリスさんたちに乱暴を働き、身も心も痛めつけていく。

 そうして心身ともに弱った所で、魔術による催眠をかけられ、自我を奪われてしまう。

 あとは俺たちがフラウドを捕らえるまで、彼の言いなりになってしまっていた。

 うん、あの野郎、マジで屑だ。


「当主様、王家から手紙が来ているわ」


 俺がリリスさんの話を聞くのに夢中になっている間、横で何かしら仕事をしていたのだろう。

 エスメラルダから声をかけられて、さすがに王家からの用事は後回しにできんと手紙を受け取り、王家の封蝋がされた手紙を開封。

 すぐに内容を読み進めていけば、フラウドの悪事を暴いた功績と礼が記されており、そのまま奴隷たちを引き取る事を許可する旨と、借金奴隷は奴隷契約の強制解除ができないので、そのまま奴隷として雇うように、という内容が書かれていた。


「すみません。少々横槍が入りましたが、リリスさんを含めて皆さんに聞きたい事があります。理不尽に奴隷に落とされた方もいらっしゃるかもしれませんが、借金奴隷は契約の強制解除ができません。ですので、私は皆さんを引き取ろうと思っています。もちろん、働いてもらう事にはなりますが、皆さんの適性を鑑みて、無理のない範囲で働いて下さい。もちろん、親元に帰りたいなど、希望があれば仰って下さい。可能な限り希望に添えるようにします」


 俺の言葉を聞いて、女性奴隷たちがざわつく。

 端から見ていてそりゃあそうだろうな、とは思う。

 この世界で奴隷は人権こそ保障されていても、その扱いがいいとは言えない。

 最低限体調を崩さず働ける程度には世話をしないといけない、という決まりこそあるものの、それだけだ。

 食事は栄養さえあれば味なんてどうでもいいし、身体を壊さない程度に休息させればいい。

 そんな扱いが蔓延しているからこそ、俺の言葉が疑われるのは当たり前なのだ。


「失礼しますね。こちら、今回の契約書になりますので、ご確認下さい」


 そういえば、朝の打合せ以来、顔を合わせていなかったシャルが、ノックと共に紙束を持って客間にやって来たかと思えば、その紙を女性奴隷たち1人ずつに配っていく。

 あまりの早業に、女性奴隷たちも圧倒されて手渡された契約書に目を通し始めている。

 いつの間にか、困惑のざわつきは驚きへと変わっていった。


「こんなにお給金が貰えるの!?」


「奴隷なのに休日がある!?」


 女性奴隷の中には字が読めない人もいたようだけど、字が読める人が内容を教えてあげて、そこから嬉しい悲鳴が上がる、のループを繰り返している。


「シャル、もしかしてずっとこれの準備してたのか?」


 そんな女性奴隷たちの様子を微笑ましく見守るシャルに、小さく声をかけると、彼女は無言で微笑む。

 うーん、相変わらず予言レベルの予測能力してんなー。


「私は、最初の希望通りアナタの元で働きたいわ。みんなも、同じでいいのかしら?」


 女性奴隷を代表して、リリスさんが声を上げると、他の女性奴隷たちも頷く。

 どうやら、全員が心を決めたようだ。


「話は纏まったみたいですね。それでは、あとは私の方で引き取りますので、ハイトさんは夜会の支度をしておいて下さい」


 多分、これから1人ずつシャルと面接をして、適正部署に振り分けるんだろうなー、と呑気に考えていたら、夜会の準備をしておけ、と言われて、そんな予定は無かったような、と考え直す。


「さあ、大人しく準備しなさい。だって、事前に夜会だなんて言っておいたら、あなた逃げるでしょう?」


 エスメラルダからぐうの音も出ない予測を突き付けられ、俺は彼女に引き摺られて客室を後にするのだった。

 それから使用人たちに全身を綺麗にされて、綺麗に着付けをさせられて。

 夕方になる頃には、すっかり1人の貴族が仕立て上げられていたのだった。

 馬子にも衣装、とはこの事だろう。

 普段なら、俺が衣装に着られているであろう豪奢な絹の衣装は、伯爵位として恥ずかしくないものだが、ここまで着込むという事は、これから出席させられる夜会というのは、かなり高位の相手がいるものである。

 それこそ、陛下とか、公爵家とか、そういうレベルの。


「前よりも衣装に着られなくなったじゃない」


 結局は逃げられず、夜会行きの馬車に乗せられた俺の対面に、従者としてキッチリとタイトスカートタイプのスーツを着込んだエスメラルダが座った。

 いつも似た格好ではあるのだが、今日はいつものスーツよりも生地がいいものを使っているように見える。


「さて、これから王女様方との面会になるわ。気合いを入れておくのね」


 事前に予定を知っていたであろうエスメラルダが、ニヤリとした笑みを浮かべている。

 その笑みには、いい加減に観念しなさい、という意図が見えた。

 ああ、何かにつけて先延ばしにしていた、王女様たちとの面会か。

 確かにわかっていたら、何かしら理由を付けて逃げただろうな。

 王家との婚姻の話が割とガチで陛下たちから推されていたし。

 というか、王女様方と会うとか畏れ多すぎて困るんだよな。

 と、そんな現実逃避をしていても、無常にも馬車はどんどん王城へと近付いていく。

 ある意味で、公開処刑に向かっている気分だ。


「……何て顔してるのよ。まるで肉屋に売られる仔牛みたいな顔よ?」


「その表現、俺の心情をこれ以上ないくらいに表してるよ……」


 会った事も無い相手を嫁として迎えろって言われてもねえ……って感じ。

 だからこその、今日の顔合わせ会が組まれたんだろうけど。

 いくら陛下たちから推されても、根が小市民な俺には不釣り合いだと思うんだ。

 ああ、むしろわざと失態を演じて幻滅してもらおう。

 きっと、先方も噂だけを聞いて無駄にいい男を想像しているに違いない。

 ヘタレ小市民な俺を見れば、きっと幻滅して勝手に諦めてくれるはず。


「どのみちもうすぐ王城に着くわ。いい加減、覚悟を決めるのね」


 ある意味、処刑宣告をされたような気分になりながら、リベルヤ家の馬車は王城の発着場へと吸い込まれていくのだった。

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