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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり8人目⑦

今回はフリスさんとデート回。

「主様! お待ちしておりました!」


 オルフェさんに贅沢を教えるデートの翌日。

 門の所でフリスさんが待っていた。

 もふもふの狼尻尾がぶんぶんに振られているので、ご機嫌なのは間違い無いだろう。

 他にも、狼のケモ耳がピンと立っているし、表情も明るい。

 今日を心から楽しみにしていてくれたようだ。


「いつもは黒ずくめだから、普段着は新鮮だな」


 普段は影として俺にくっついて歩いているため、黒いラバースーツのような、身体にぴっちりと張り付くような装備をしている姿しか見ていない。

 そんなわけで、こうして私服姿の彼女を見るのは新鮮だった。

 短パンにシャツというシンプルかつボーイッシュな服装で、活発な雰囲気の彼女に良く似合っている。


「あんまり女の子らしくない気もしますが、こういう服装の方が好きなので……」


「服の好みは人それぞれだ。好きな恰好をすればいいさ。場合によっては、貴族らしいドレスコードが必要になる場合もあるけどな」


 今日は気負わない庶民のデートだ。

 服装も気楽なものでいい。

 回る場所はフリスさんが選ぶと言っていたので、今日は彼女の先導で動く事になる。


「では、行きましょうか」


 お手を失礼、と俺の左手を取り、フリスさんは歩き出す。

 少し引っ張るような恰好で貴族街を歩き、例によって商業区の方へと向かっていく。

 歩きながら尻尾をフリフリしている姿は、見ていて気分が和む。


「着きました!」


 まず案内されたのは、動物と触れ合えるカフェだった。

 ここで朝食を取りつつ動物と戯れよう、というプランのようだ。

 異世界だってのに、随分と日本チックな文化があるよな、この世界。

 当たり前にあったものだから最近まで気にしてなかったが、米もあるし、味噌も醤油もあるし、マヨネーズとかケーキとかだってある。

 俺の前にも誰か日本人が転生したりなんだりしてたのだろうか。

 その人が普及させたのか、単純に元より日本と似た食文化だったのかは不明だが。


「いらっしゃいませ。2名様ですか?」


 俺がこの世界の不思議について考えていると、店員が受付に来たので、フリスさんが2名と告げて案内してもらう。

 歩きながら店内を見回すと、様々な動物が離し飼いにされていたが、キチンとしつけがされているのか、人を怖がる様子は無く、各々が思い思いに動き回りつつも、喧嘩をしたりはしていない様子。

 もしかすると、いわゆるテイマーみたいな役割の人がいるのかもしれないな。


「当店は様々な動物たちと触れ合いながら、お茶やお食事を楽しめる喫茶店となっております。ご希望でしたら、動物たちへのエサやりも受け付けております」


 聞けば聞くほど、日本の動物系カフェと一緒だ。

 日本では猫カフェだとかフクロウカフェだとか、動物の種類は統一されている事が多かったようには思うが。


「動物たちとご自由に触れ合って頂いて構いませんが、彼らが嫌がる事だけはしないで下さいね」


 嫌がる事を無理やりして、反撃されても責任は負いません、と念を押されたが、まあ当たり前だろう。

 それに、見回していると、ちらほらと魔生物がいるのが目に入る。

 魔生物というのは、野生の動物が生存競争の中で魔物と争い、あるいは偶然でも魔物の成分を取り込み、進化した生物を指す。

 高い知能と能力を持ち、以前は要討伐対象として見られていたようだが、ここ数百年くらいで人間と共存できる種もいると認知され、こうして街の暮らしでも見かけるようになっていったそうな。

 有名な所だと、軍馬などは魔生物化した馬を運用している所も多いし、このカフェのように小型の魔生物を手懐けて利用する事もある。

 冒険者の中には、魔物も含めて生物を調教して使役するといった戦い方をする人もいるくらいだ。

 恐らくだが、この店の魔生物たちは、店の護衛も兼ねているのだろう。


「わー、この猫ちゃん人懐っこいですよ!」


 俺が物思いに耽っている間に、フリスさんは手始めに猫を構いに行ったようだが、彼女に撫でられてゴロゴロとご機嫌そうに喉を鳴らすトラ柄の猫は相当に人馴れしていそうだ。

 そんな微笑ましい光景を眺めていると、足元に小さな気配を感じ、下を向く。

 すると、俺の右足の臭いを嗅いでいる小さな動物の姿が。

 しゃがんでその動物の様子を見れば、リスのような動物だったが、俺が動いたのに気付き、そのつぶらな瞳で俺を見上げてくる。

 その瞳には、確かに知性の光があり、リスっぽいとはいえ微妙に違う感じもする辺り、恐らくは魔生物なのだろう。


「俺が気になるのか?」


 何となく、しゃがんだ状態からリスっぽい魔生物に向けて右手を伸ばしてみれば、彼(?)はスンスンと匂いを嗅いでから、するすると俺の身体へと登っていき、ちょうど右肩で止まった。

 器用なものだな、と思うのと同時に、その身体の軽さに驚く。

 元より身体は小さいので、その体重も推して知るべしなのだが、妙に軽い気がする。


「おや、その子が懐くのは珍しいですね」


 オーダーを取りに来た男性の店員が、俺の肩に乗るリスっぽい魔生物を見て目を丸くした。

 彼の発言からして、この子はなかなかに気難しいらしい。


「あ、主様の所のリスちゃんも可愛いですね! 乗ってもらえるなんていいなあ」


 店員さんに声をかけられた事で、フリスさんもこっちに来て、俺の肩のリスっぽい魔生物に触れようとしたが、彼(?)はその手をするりと避けて、俺の頭の上へと移動。

 むー、と悔しそうにするフリスさんに癒されながら、試しに右手を伸ばし、人差し指で彼(?)に触れようと試みる。

 すると、特に抵抗せず、俺の手で撫でられ、思いの外硬い被毛に驚く。


「主様は触れるなんてズルいです……」


 自分は拒否されてしまったからか、フリスさんがケモ耳と尻尾をへにゃりとさせてしまったので、気分を変えさせようと、一度テーブルに戻って店員にオーダーをする。

 2人でそれぞれ朝食セットと飲み物を注文し終えても、リスっぽい魔生物は俺の頭から離れていない。

 少し気分が落ちこんでしまった様子のフリスさんだったが、そんな彼女を慰めるように、先ほど彼女が構っていたトラ柄の猫がフリスさんの膝の上に飛び乗り、スリスリと頭を擦り付け始めた。


「にゃうん」


「君は私に構ってくれるんだねー。ありがとね」


 猫に興味の向きが変わり、彼女は再びケモ耳をピンとさせ、尻尾をフリフリさせてご機嫌に戻った様子。

 なるほど、こうして見ると本当に動物が好きなんだな、と思う。

 たまに構いすぎて嫌われる事もありそうなタイプに見えたが、その辺りは比較的線引きが上手いんだろうな。


「カァー」


 羽ばたきの音と鳴き声が聞こえて、そちらに目線を移すと、こちらに飛んでくるカラスの姿が見えた。

 カラスは器用に俺たちのいるテーブルの淵に降り立つと、ジーっと俺の方を見つめてくる。

 黒みがかった緑色の、珍しいカラスだ。

 もしかすると、こいつも魔生物なのかもな。


「オマエ、ウマソウナマリョク」


 何となく、カラスと見つめ合っていたら、カラスからカタコトながら、言葉を発したので、素直にビックリした。

 これにはフリスさんも驚いたようで、目を丸くしているが、それでも膝の猫を撫でるのをやめていない辺り、彼女は筋金入りの動物好きなのだろう。


「マリョク、クレ」


「こらこら、お客様にたかってはいけませんよ」


 珍しいカラスに気を取られていて、気付いていなかったが、横から店員さんの声がしたので、そちらに目線を移せば、彼は俺たちのオーダーしたものを持って来たようで、押してきたワゴンから俺たちの前へと手慣れた動作でプレートを置く。

 洋食を中心とした、彩りのある美しい盛り付けがされた朝食に、湯気を立てるスープ。

 その香りから、食べる前から旨いと確信できた。

 その一方で、店員さんに窘められたカラスは、ひょいと飛び上がって、俺の左肩へと止まる。

 鳥類の脚に掴まれると、それなりに痛いという話を聞いた事があるが、このカラスは絶妙な力加減のようで、自分が落ちない程度に、かつ俺が不快感や痛みを覚えない程度にしてくれているようだ。


「主様は動物にも好かれるんですね」


「らしいな」


 正確には、魔生物にモテる、な気がするが。

 もしかすると、彼らにとって、俺の魔力はごちそうのようなものなのかもしれないな。

 頭の上にいるリスっぽい魔生物も、カラスと同じように俺の魔力を求めているのかも。


「ああ、一応、当店でのお支払いは彼らのように魔力を好む動物たちに魔力を与える事でも受け付けています。結構な魔力量を要求されるので、おすすめはしませんが」


 付け加えるように店員さんが教えてくれたが、俺にとって魔力量に関しての心配はいらない。

 何せイカレ魔力量すぎて、長年常時索敵の魔術を使っていても自然回復量が追い付くくらいだし。


「じゃあ、支払いは魔力にします。適当に与えてもいいですか?」


「え、ええ、構いませんが……」


 俺が魔力で支払いをすると言うと、店員さんは少し引いた表情をした。

 どうやら、魔力での支払いは相当なものらしい。

 もしかすると、無銭飲食などの罰に近いものなのかもしれないな。

 魔力摘出による拷問や死刑があるくらいだし。

 そんな事を考えつつ、普段は抑えている魔力を周囲にぶわっと広げていく。

 魔力が欲しいのなら、こうしておけば勝手に吸収していくだろう。


「……お客様はとんでもない魔力をお持ちなのですね」


「まあ、これが苦にならない程度には」


 店員さんも魔術の素養があるのだろう。

 俺が魔力を周囲に広げたら、目の色を変えた。

 同時に、俺が異常な事にも気付いたようだ。

 まあ、悪さをしてるわけじゃないから多少はね?


「グァー……」


 俺の左肩にいるカラスが、気持ち良さそうな柔らかい鳴き声を上げる。

 現在進行形で俺の放出した魔力を吸い上げているのだろう。

 旨そうと言っていたので、俺の魔力の波長が合ったのだろうな。

 朝食を楽しみながら、カフェ内の魔力を欲する動物たちに行き渡るよう、俺は魔力をカフェ中に広げておくのだった。

ハイトくん、動物に魔力をたかられるの図。

フリスさん回も次回に続きます。

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