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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり8人目④

ジェーンとデート回その2です。

ちょっとやりたい事を書いていたら1回に収まりきりませんでした……。

「いらっしゃいませ」


「次のゲームから参加していいか?」


「ええ、空いているお席へどうぞ」


 いくつかあるカード系のテーブルの中で、俺は若い男のディーラーがいるブラックジャックもどきのテーブルに座る。

 俺以外にも貴族の子供っぽい客や、中年の男性といった客が席を取っており、俺が経験豊富には見えなかったのか、カモを見るような目でこちらを見ていた。

 賭け方はブラックジャックと同じ、ゲームに乗るかどうかだ。

 手札がショボければすぐにドロップできる。

 つまり、よほど偏って初手が悪くなければ、降りるタイミングも見計らいやすい。


「では、ゲームを始めます。10ラウンドで1セットとさせて頂いております。賭け金はチップ1枚からとなっております」


 俺に配慮してくれたのか、簡単な説明の後、ディーラーがカードを配っていく。

 俺の手元へ裏向きで配られたのは、15のカード。

 いきなり最大値だ。

 もう1枚15のカードがくれば、ほぼ勝ち確の数字だが、半端な数字が来ると、勝負するにも中途半端なものになりやすいので、次のカード次第だな。

 とりあえず、最低限の賭け金であるチップ1枚をテーブルに置く。


「……コール」


 次に公開情報となる2枚目のカードは1。

 何のカードを引いてもバーストになる事は無いので、とりあえずゲーム継続を選択し、チップを追加で1枚出す。

 他の客も殆どが様子見で、同じようにチップを1枚追加。

 テーブルを見渡すと、公開情報で手札が強そうなのは2人。

 ディーラーの方は何とも言えない札なので、数字が読みにくい。


「では、次のカードです」


 続いて配られた、表向きのカードの数字は13。

 合計は29なので、勝負に行っても悪くはないか。

 とはいえ、確定で勝てるほどではないので、賭け金を吊り上げる必要は無い。

 とりあえずは無難に行こう。


「コールだ」


 他の客も殆どがコールを選択し、俺と同じく追加で1枚のチップを出す。


「レイズだ!」


 そんな中、中年の男性はチップを5枚追加し、大きく勝負をかけてきた。

 よほど自身があるのか、それともブラフか。

 最終的な配当はチップの総数を勝者が持っていく形になるが、レイズの場合は取り分が大きくなるので、手が強ければレイズは使い得というわけだ。

 とはいえ、負ければ追加したチップは全損なので、ハイリスクではある。

 


「では、カードを公開して下さい」


 ディーラーの掛け声で、全員が裏向きのカードを表にする。

 俺は29、その他の客の多くは26~29くらいで、先ほどレイズをした中年の客は31。

 よほど強気だったから、結果は読めていた。

 ゲームそのものは回転が速いけど、引きに左右されるからイマイチか。

 とりあえず1ラウンド分だけブラックジャックもどきをやってから、俺はそのテーブルを離れた。

 収支は微妙にプラスといったところ。


「いらっしゃいませ」


 次に向かったのは、若い女性がディーラーを務めるポーカーもどきのテーブル。

 ここにはブラックジャックもどきのテーブルよりも人が多い。

 客層も老若男女が入り混じっており、より混沌としている。


「次から参加する」


「かしこまりました」


 1席だけ空いていた場所に腰を下ろし、現在進行中のゲームを見守っていると、1人の老人がロイヤルストレートフラッシュに相当する役を作り上げ、高笑いしながら配当を受け取っていく。

 パッと見だが、相当にツイてそうだな。

 ま、ポーカーならいくらでも心理戦で勝てる。

 役が強いに越した事は無いが、役が安くてもやりようはあるし。


「では、最初の賭け金をお願いします」


 ディーラーの音頭で、各々が賭け金をテーブルに置いていく。

 殆どはチップ1枚からのスタートで、先ほど勝っていた老人は5枚スタート。

 その様子を見て、俺は最大の賭け数であるチップ10枚をテーブルに出す。

 俺がいきなり最大数を賭けたのを見て、他の客は訝しげに俺を見る。

 少し緊迫した空気が流れた所で、ディーラーがカードを配っていく。


「追加で10枚だ」


 配られた5枚のカードを確認し、俺は交換もせずに10枚のチップを上乗せした。

 周囲からは相当に自信のある手に見える事だろう。

 俺の思惑に乗り、他の客は次々と降りていく。


「ならば追加10枚」


 唯一、老人だけは張り合ってきた。

 あとはお互いに賭け金を吊り上げ合って、お互いに追加をやめた時点で勝負となる。

 さて、どこまで吊り上げるかな?


「追加だ」


 ノータイムでさらに10枚を上乗せ。

 そんな俺の賭け方を見て、老人はしばしの逡巡を挟んだ後、追加で10枚を出してきた。

 よしよし、まだ乗ってくれるか。


「当然追加だ」


 さらにノータイムで追加10枚。

 すでに30枚の賭け金を出しているが、老人はムキになっているのか、俺に張り合ってどんどん賭け金を吊り上げていく。


「追加だ」


 80枚目のチップを追加で出した辺りで、老人も相当に考え始めた。

 乗るかどうか、悩ましいよな。


「いかがなさいますか?」


 ディーラーから確認の声をかけられ、老人は両目を閉じ、黙って考え込む。

 勝てば大きいが、万が一負ければ、今までの勝ち分は大幅に減ってしまう。

 次の追加をして、俺が上乗せすれば90枚賭けだ。

 リスクリターンをどう考える?


「……降りよう」


 最終的な自分の役を考慮し、俺が万が一強い役を握っていた場合、勝てないと踏んだのだろう。

 老人が降りた事で、他に競う相手がおらず、最終的に俺の1人勝ちとなる。

 あまりにも思惑通りにいったので、俺は思わず笑みを浮かべてしまう。


「悪いな。役無し(ブタ)なんだ」


 虚勢で全ツッパというあり得ない賭け方をしたわけだが、他の客の賭けたチップが俺の元に集まるのを眺めながら、役無しだったと種明かしをしてみれば、老人は驚愕に目を見開いていた。

 これで、ある意味トラウマを他の客に植え付ける事に成功したので、そのままゲームを続けていく。




……

………




「じゃ、俺はこれで」


 最初の役無しで全ツッパという俺の賭け方で、トラウマを得た客たちを手玉に取り、チップをかき集める事30分程度。

 始める前は100枚と少しだったチップは、500枚に達していた。

 時間的にもそろそろジェーンと合流していい頃だろうな。

 そう思ってカジノ内をうろついていると、受付の辺りで俺を待つジェーンの姿があったので、周囲の迷惑にならない程度の小走りで彼女の元へ向かう。


「よう、調子はどうだ?」


「結構集まったぞ。500枚だ」


 合流してから、集めたチップの枚数を報告してみれば、彼女は目を見開く。


「マジか。初日でそんだけ勝てるなんて、随分と勝負強いんだな」


「いや、心理戦の賜物だ。場さえ掌握してしまえば、どうとでもなる」


 役無し全ツッパの後、しばらくはやる気の無いゲームを続けてから、またいきなり全ツッパ賭けをしたら、結構な人数が乗ってきてくれたので、そこでストレートフラッシュ相当の役を出して全取り。

 あれは笑いが止まらなかったな。

 さすがに空気が悪くなったので撤退したわけだが。


「400枚も集めればあたしの勝ちだと思ってたが、上には上がいるもんだ」


 そう語るジェーンは、何だかんだで400枚ものチップを集めてきている。

 マトモな勝負の仕方をしていないので、ちょっとだけ後ろめたい気分だ。


「ジェーンはずっとルーレットで賭けてたのか?」


「いや、ある程度ルーレットで集めてからは蛇レースに行った。しばらく負け込んで、最後に全賭けからの順位当てが全部ハマって、400枚までチップが増えたってワケだ」


 何と。

 まさかの蛇レースで全順位的中か。

 何というか、土壇場の勝負強さのようなものを感じるな。

 ある意味、彼女のイメージ通りと言えばその通りなのだが。


「そんじゃ、チップ交換と行くか」


 ぼちぼち楽しんだし、カジノだけで時間を使うつもりは元より無かったのだろう。

 俺たちはチップの清算に向かう事にした。

 換金以外に、チップで交換できる景品もあるので、目録を見てどうするかを考える。

 とはいえ、景品でこれといって欲しいものが無かったので、俺は換金でいいか、と思っていると、隣のジェーンが目録とにらめっこをしているのが目に入ったので、こっそりと様子を伺ってみると、ある一点に目線が釘付けだ。

 ちょうど交換に必要なチップ枚数は500枚。

 その内容は、有名なブランドのぬいぐるみだ。


「じゃあ、俺はこれと交換で」


 稼いだ500枚のチップを係員に渡し、ジェーンがジッと見ていた物と引き替えると、隣のジェーンがしばらくフリーズした後に換金で、と言葉を発した。

 俺が引き換えた景品は、デフォルメされた巨大な竜のぬいぐるみだ。

 どうやらこのカジノの限定品らしく、4足歩行型の赤い竜のぬいぐるみは、その愛らしい見た目からして、女性向けなのが一目でわかる。


「袋に入れましょうか?」


「お願いします」


 1メートルくらいある巨大ぬいぐるみを紙袋に包んでもらい、それを受け取ってカジノを後にし、しばらく歩いて商業区に戻っていく。

 その間、お互いに会話は一切無い。


「やるよ。欲しかったんだろ?」


 そう言って、俺はジェーンに大きな紙袋を差し出す。

 しばしの逡巡の後、彼女は遠慮がちに大きな紙袋を受け取る。


「……笑わないのか?」


 自分のキャラじゃない、と思っているのだろう。

 羞恥に顔を赤くしながら、ジェーンはそう問うてきた。


「趣味は人それぞれだしな。さすがに他人に迷惑がかかるならどうかとは思うが」


 それを言うなら前世オタクだった俺は、人にあまり趣味の話題を出せなかったわけで、ジェーンの気持ちはよくわかるのだ。

 だからこそ、親しい間柄の人間に趣味を容認してもらえる事は、何よりも嬉しい。


「……ありがとな」


 小さなお礼の言葉と共に、ジェーンはぷいっとそっぽを向いた。

 照れ隠しなのが丸わかりだが、あまりその辺りはつつかないでおこう。


「もしかして、それが欲しくてカジノに通ってたのか?」


 純粋に気になったので、彼女に聞いてみれば、まだ僅かに赤い顔のまま、ジェーンはこちらを向く。


「そういうワケでもねえ。単純に、勝負をする時の空気感が好きなんだよ。勝つか負けるかの、あの緊張感。別に稼ぎたいわけじゃねえから、最終的に勝っても負けてもどっちでもいいしな。ま、幸いというかなんというか、今まで大きく負けた事は無い」


 なるほど、と彼女の返答に納得してから、今まで大きな負けが無いというのは、ここ一番での勝負強さの現れなのだろうなと思う。


「……どうせ知られちまったんだ。ちょっと付き合え」


 特に目的も無くぶらついていると思っていたら、ジェーンはおもちゃ屋の前で足を止めた。

 ぬいぐるみの専門店のようで、ショーケースには様々なぬいぐるみが飾られている。


「あんま詳しくなくても良ければな」


 特にぬいぐるみの良し悪しなんてわからんしな。

 と言外に伝えれば、構わんとばかりにジェーンは店内に入って行ったので、俺もその後ろに続く。

 その後、ここで時間の殆どを使ってから、レストランで夕食を済ませて屋敷に戻ったわけだが……ぬぐるみについて俺に熱く語るジェーンの姿は、呪いで失われた少女の頃のように、幼くもイキイキとしていて、可愛かった。

 いわゆる、ギャップ萌えというやつだな。

 そんなジェーンの新しい一面を見つけられて、シャルやカナエとのデートに勝るとも劣らない楽しい1日を終えるのだった。

ギャップ萌え、好きだよねえ?(同調圧力)

ちょっとカジノシーンの多くに容量を割きすぎた気がしますが、ポーカーの役無しをハッタリだけで勝つ、という流れをやってみたかったんです。

一応それっぽく書いてはいますが、作者はそういうギャンブル心理とかには詳しくないので、ここおかしくね?っていう指摘があったらコメント等でご教授頂ければ幸いです。

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