表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

206/241

ワケあり7人目㉞

今回はシャルロット視点です。

「シャルロット様、少々よろしいでしょうか?」


 ハイトさんが陛下に呼ばれて挨拶に向かってから、そんなにしないうちに隣にいたアーミル侯爵が小さめの声をかけてきました。

 そこはかとなく重要な話を切り出そうとしているような雰囲気を感じるので、側に控えているエスメラルダさんに目配せをすれば、彼女は私の意図を読み取って、少しばかり距離を離してくれましたね。


「アーミル侯爵、今の私は公爵令嬢ではありません。そんなに気を揉まずとも、気軽に話して下さって結構ですよ。むしろ、立場で言えば平民以下の私におもねるのは、侯爵の印象を悪くするでしょう」


 昔はそうでなかったかもしれないですが、今となっては奴隷の身である私に必要以上に丁寧に接するのは、侯爵が弱みを握られているように見られかねません。

 そうなると、侯爵もそうですが、私たちリベルヤ伯爵家にとっても不利益になりかねませんからね。

 私の指摘に、アーミル侯爵は僅かに眉を動かしました。


「これは失礼。以前の感覚で話してしまっていたよ。ところで、少しばかり話したいのだが、いいかな?」


 あくまで自分のミスと主張し、その上で私に用事がある、と切り出した侯爵は、表情こそ穏やかですが、その目は何かの決意のようなものが読み取れます。

 もしかすると、セファリシア様に関わる何かの話題でしょうか?


「エスメラルダさん」


「かしこまりました」


 もしかすると、他人に聞かせたくない話題の可能性もありますので、エスメラルダさんにお願いすれば、彼女はすぐに私たち2人を魔術の防音結界で覆ってくれましたね。

 相変わらず、打てば響くというか、こちらの意図をすぐに察してくれます。

 おかげで情報伝達も非常にスムーズですし、私の仕事も今まで以上に捗っているのでありがたいですね。


「これはご丁寧に。さて、せっかく周囲を気にせず話せる状況を作ってもらった事だし、素直に話そうかな。シャルロット様、うちの娘を側妻に迎える気はないかな?」


 周囲に盗み聞かれる心配が無くなった事で、アーミル侯爵はすぐに話題を切り出しましたが……セファリシア様を側妻に、ですか。

 こちらとしては断る理由は一切ありませんが、彼女がリベルヤ家に嫁げば、侯爵家の跡取りがいなくなってしまうはずです。

 その辺り、侯爵の考えが読めませんね。


「お話はありがたく思いますが……セファリシア様が我が家に嫁ぐとなると、侯爵家の跡取りがいませんよ?」


「跡取りの事は承知の上だよ。リシアも納得している」


 侯爵は至って真剣な顔で、真っ直ぐに私を見ています。

 跡取り問題は承知の上で、セファリシア様自身もご納得されている、と。

 ますますわかりませんね。

 確かに側妻といえど婚姻を結べば、リベルヤ家との繋がりは増します。

 けれど、元よりハイトさんはアーミル侯爵に好意的ですし、領地を賜ったとはいえ、まだその掌握もできていません。

 将来的な事を考えれば、婚姻を結んでおくのも長期的な意味では悪くはありませんが、直系がセファリシア様しかいない状況で、わざわざ跡取りを外に出してまで、と考えるのはどうなのでしょう。


「跡取りの事に関しては心配いらないよ。寄り子の貴族家か分家から養子を取るからね」


 どうにも、真意が見えないですね。

 それに、アーミル侯爵家と言えば、一途に1人の配偶者を愛し続ける事で有名ですし、それをわざわざうちへ嫁入りさせるなどと、そんな事をするでしょうか。

 少なくとも、貴族は複数の血筋を残す事を奨励するのが一般的な思想ですし、そう考えればまだ新興とはいえ、伯爵家にまで成り上がったハイトさんが、複数の配偶者を取るという事も、想像できない事ではないでしょうに。


「……侯爵の話は理解しました。ですが、理由が見えません。アーミル侯爵家といえば、1人の配偶者を一途に愛する家系のはずです。それは、他家に嫁ごうが変わらないはずですが、なぜリベルヤ伯爵家なのですか? 先に言っておきますが、私はハイトさんに多くの多様性に富んだ血筋を残して頂くつもりです。側妻や妾の数は2~3人では済まないでしょう。そんな家に、セファリシア様を嫁がせると言うのですか?」


 私が疑問の目で侯爵を見れば、彼は少しばかり考える素振りを見せました。

 その様子から、煙に巻こうというのではなく、どう言えば信用してもらえるか、と考えているように見えます。

 真摯な返答をしようとしている様子なので、私は侯爵が答えを出すのを待つ事にします。

 どれくらいの時が経ったでしょうか。

 正確な時間はわかりませんが、ちょうどハイトさんが挨拶を終えたタイミングで、侯爵は私を真っ直ぐに見つめました。


「……リシアは、ハイトくんを見初めたんだよ。まあ、あの戦場で命を救われた事が大きいのではないかと私は思っているけれど、その辺りはあの子にしかわからない。もちろん、伯爵が既にシャルロット様と婚約していて、それを陛下が認めている以上は、横入りはさせられないし、そもそもリシア1人を愛してくれるかどうか、あるいは他にも複数の側妻や妾を取る事もあるだろうと説得は試みたよ。けど、あの子の心は決まっていた。ただ、ハイトくんの側にありたいと、許されるのなら、添い遂げたいと。だから、私はリシアの望みを叶えるために、こうしてお願いをしに来たんだ。相手を決めたら、アーミルの血筋はもう止まらない。仮に私が反対したとしても、リシアは手を尽くしてハイトくんの側にいようとするだろう。私はリシアが望んだ幸せを得られるのなら、そのために尽力しようと最初から心に決めていたし、そのために養子の候補は常に選定していた。だから、侯爵家の事は何も心配はいらないし、求める答えはリシアをリベルヤ伯爵家は受け入れてくれるかどうか、だよ」


 堰を切ったように侯爵が想いの丈を語り、私はその熱量を感じると同時に、セファリシア様の想いの強さも理解できました。

 私自身も(・・・・)、そうでしたから。

 そういう事であれば、否定する理由はありませんね。


「侯爵の想いも、セファリシア様の気持ちも理解しました。そういう事であれば、私に否やはありません。むしろ、喜んでセファリシア様を迎え入れましょう」


 セファリシア様自身も優れた武人でありながら、まだ学生の身でありながら、一時的にでも軍を掌握して指揮するだけの高い能力。

 ハイトさんの血筋を残す相手として、これほど理想的な相手もいませんし、ハイトさん自身も、比較的セファリシア様の事は好意的に見ているようでしたし。

 これで先ほど、ハイトさんに対してセファリシア様が変に恥ずかしがっていた理由も理解できましたし、色々と腑に落ちましたね。


「感謝するよ。きっとリシアも喜ぶ」


「こちらこそ、感謝致します。優秀な血筋を取り入れられるのは、ハイトさんという優秀な遺伝子を後世に残すためにも喜ばしいですから。それに、今はそこまで大きな気持ちではないでしょうが、ハイトさん自身もセファリシア様の事は気に入っているようですし、気持ちの上でも問題は無いでしょう」


「そう言って貰えると、私も失礼を承知で頼み込んだ甲斐があるというものだよ。あとは陛下にタイミングを作って下さるよう、お願いしたのもね」


 最後に、今ハイトさんとセファリシア様がさせられている挨拶は、侯爵の仕込みだったとバラして、お茶目に片目を閉じた侯爵は、心からの笑みを浮かべているように見えます。

 ああ、侯爵は本当に娘の幸せを願っているのですね。


「もし、侯爵に不都合が無ければ、セファリシア様がリベルヤ伯爵家の嫁ぐ事を王家にも知らせたいと思いますが、いかがいたしますか?」


 陛下に認可して頂く事で、婚約を取り消す事は難しくなりますが、逆に言えばそれだけしっかりとした婚約を結ぶと、対外的に示す事ができます。

 第二、第三の側妻を捩じ込もうとする貴族も増えるかもしれませんが、それはこちらで精査していけばいい事ですし、いざとなればしつこい貴族は陛下のお力を借りて黙らせる事もできるでしょう。


「ぜひとも頼むよ。と言いたい所だけど、私が合図を出さなければ、この後に陛下からすぐに発表されるよ。失敗したら合図を出せと言われていたのでね」


「それはそれは、随分で成功する可能性を高く見積もっていらしたのですね」


 既に色々と仕込みを済ませていた侯爵に、少しばかり笑みを向けてみれば、彼は怯まずに真っ直ぐと笑みを返してきました。


「シャルロット様は知らない相手じゃないからね。深い知り合いというわけではないけれど、元より同じ国王派閥の人間として、シヴィリアン公爵とも付き合いがあった。その中で、他の兄妹を差し置いて、シャルロット様の自慢話をよく聞かされたものだよ。聡明で、美しくて、最高の娘だとね」


 まさか、こんな所でお父様の話が出てくるなんて……。

 しかも、私の事を派閥の貴族に自慢していたなんて。

 顔が熱くて火が出そうです……。


「ははは、ようやく歳相応の顔を見せてくれたね。これから私たちは家族になるんだ。私の前でくらい、少しばかり気を抜いてもいいんだよ。これでも、君よりは貴族歴が長いからね」


 むう、してやられてしまいました。

 とはいえ、侯爵が信の置ける貴族である事は確実ですし、確かにそこまで警戒をする必要は無いのでしょうね。

 ある意味では、私の思い上がりを遠回しに教えてくれたのかもしれません。


「そうですね。これからよろしくお願いします、お義父様」


「お義父様、か。いいね。こんなに早く、娘が増えるとは思っていなかったよ」


 私がすぐに表情を整えて、意趣返しを試みれば、侯爵はそれに付き合わず、笑い飛ばされてしまいました。

 なるほど、私の経験にない貴族ですね。

 早くも義父として貴族の新たな薫陶を与えてくれた侯爵に感謝しつつ、私は壇上で挨拶をしている、これから家族になるセファリシア様に視線を移すのでした。

正式にセファリシアがハイトに嫁ぐ事が決まりました。

ヒロイン側で明確に立場を示したのはシャルに続いて2人目になりますね。

他のヒロイン勢はこれからどうするのか、今後にご期待下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ