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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり7人目㉛

「ハイト、具合はもういいのか?」


「ええ、おかげ様で。ご心配をおかけしました」


 絶対安静を言い付けられて1週間。

 実質3日目くらいには殆ど回復していたけど、念のため1週間は安静にするようにオルフェさんから睨まれていたので、大人しくしていたわけだ。

 その間に陛下も教国から戻ってきたので、こうして安静期間が解除されたのを機に王城に来たのだが……。


「ええと、出直しましょうか?」


「見た目はアレだが、気にするな」


「わかりました」


 陛下の膝の上に側妃様が座って、猫の如く頭を擦り付けながら甘えているのだが、俺が陛下の執務室に来ても一向にやめる気配を見せない。

 イチャイチャタイムを邪魔したのなら、出直そうかと聞いてみれば、陛下はこのままでいいと言う。

 えーと、威厳とか大丈夫?

 

「どうも余が不在の間にかかったストレスが限界突破してしまったようでな。幼児退行しておる」


「まあ、色々大変でしたしね……俺はその場の対処をしてダウンしてたのであまり偉い事は言えませんが、後始末とか調査とか、側妃様1人では大変だったでしょうね」


 おいたわしや、と思わなくもないが、俺も命賭けで頑張ったのだから、その辺りは何も言うまい。


「色々と報告書は読んだが、お前の口から考えを聞きたい。今回の件、タイラン侯爵の裏に何がいたと思う?」


 膝の上に甘える側妃様を載せているので威厳は皆無だが、真剣な表情で陛下に問われたので、俺は安静期間中に考えていた事を話す。


「正直、これといった証拠も理論もありませんが、起こった内容を考えるに、昔の異界教のような得体の知れなさを感じますね」


 異界教。

 大昔、リアムルド王国よりも前の国があった頃から伝わる伝承だ。

 およそ500年前くらいに、今のリアムルド国の名前がリアリム王国だった頃。

 異界教と呼ばれるカルト集団が色々と問題を起こした。

 その被害は世界規模になり、最終的には世界の監視者と1人の青年が力を合わせ、異界の王を討伐した事で収束したと言い伝えられている。

 異界の王を倒した時には、世界中の魔力を一つに束ねた人知を超えた一撃を用いたと記録されているが、どこまでが本当か眉唾ものだ。

 とはいえ、実際に異界教という集団が色々と問題を起こしたのは確かだし、各歴史書にもその存在は必ず異界教の名前は出てくるから、その存在そのものは間違い無い。


「報告書には、短距離ながら転移を可能にする魔導具のようなものが発端とあるが、確かか?」


「ええ。宝石のようなものをあしらった腕輪で、その宝石が核となってタイラン侯爵を取り込み、怪物と化しました。タイラン侯爵を倒した事で存在ごと霧のように消えてしまったので、証拠は残っていませんが」


 俺が異界教の名前を出した事で、陛下は表情を曇らせた。

 普段の飄々としている陛下からすれば珍しい反応から、俺は過去の異界教の存在が確かなものである事を確信する。

 とはいえ、異界教の記録が残っているわけでもないので、俺が調べられる内容でもないのだが。

 一応、エスメラルダを通して暗部の方でも色々探ってもらってはいるので、何かしらの成果は期待したい所だ。


「ふむ……異界教は滅んだとされているが、生き残りが隠れ潜んでいたとすれば、辻褄は合わなくもない、か。わかった。こっちでもその方向で調べを進めておこう」


 俺が見た記憶のある異界教の特徴は、神出鬼没、当時の文明レベルでも不可解な技術、揃いも揃ってイカれた信仰と精神。

 自爆も自害も厭わず、必要とあらば民間人も平気で巻き込む。

 はっきり言って、対策らしい対策が難しい。

 そんな所だろうか。


「時にハイト、今回の件でお前には伯爵位と領地を与える」


「……は?」


 何の脈絡も無く、いきなり陛下から告げられた言葉に、俺は一時的に思考が停止。

 あり得ない采配に、元の思考力を取り戻すために時間を要した。


「陛下、冗談は休み休み言って下さい。第一、今回はタッキンズ伯爵の指揮下で動いたんですから、勲功はタッキンズ伯爵と軍を率いたアーミル侯爵でしょう」


 何のためにタッキンズ伯爵を巻き込んで工作したと思ってんだ。


「そのタッキンズ伯爵から、ハイトに勲功を譲ると申し出があってな。というか、イヴァから色々筒抜けだ。諦めろ」


 ああ、俺の今回の活躍が正確に陛下に伝わってるのね。

 そりゃあ領地あげるよって話になるよなー。

 というか、功績がデカすぎてそれ以外にどうしようもないわ。

 全部金銭で払うとなれば国庫がカラになるだろうし。


「……領地はどこを?」


 早々にこの話を断るのは不可能と悟り、俺は下賜される領地を確認する事にした。

 あまりにも地方だと今後の活動がやりにくいし、王命調査隊としての仕組みそのものが存続し難い。


「うむ。元シヴィリアン公爵家の領地の一部だ。交易都市ラウンズを領都とし、その周辺で伯爵位相当の広さを領地とする。後日正式に任命式を行うが、その際にはアーミル侯爵とタッキンズ伯爵も同様に賞する事になるな」


 陛下の言葉を聞いて、俺はマジかー、と思ってしまう。

 領都の立地としては王都の近くだし、交通の便もいい。

 だが、よりにもよって元公爵家の領地ともなれば、古い高位貴族からのやっかみがすごそうだ。


「シャルロット嬢なら、元々の統治についても明るいであろう。ちょうどいいと思うが」


「俺が周辺の貴族からやっかまれる被害を考慮しなければ、ですがね」


 勘弁してくれ、と言外に訴えても、陛下は小さく首を振る。


「国防の観点においても、優れた暗部を持ち、優秀な特記戦力を何人も抱え、それでいて王命調査隊としての役目を考えれば、お前以外に任せられる人間はおらんな。ラウンズは交易や流通の要衝であるからして、仮に他国との戦争となれば真っ先に狙われかねん。今のリアムルドにはお前以外に任せられる人間がおらんのでな。もう内々に根回しも済んでおるし、議会でも決定が降りている。逃れる事はできんよ」


「……わかりました。全力を尽くします」


「うむ。よろしく頼むぞ。その代わりと言ってはなんだが、お前の好きなようにやるといい。以前に奏上してきた、孤児の教育に関する案件のように、思い付いた事を試せ。交易の要衝なら、必要な物も手に入れやすいだろう。お前がもたらす発展を、余に見せてくれ。シャルロット嬢も助けてくれるであろうし、お前ならやれると確信しておる」


 陛下から向けられる視線は、大きな期待。

 何の混じり気も無い、純度100%の期待だ。

 そんな無条件の期待を向けられるような、大層な人間じゃないんだけどな、俺。

 ただの前世知識があるだけの、オタクでしかない。

 けどまあ、陛下が俺のやる事を見たいと言うのなら、もうちょっと自重せずにやりたい事をやろうかね。

 とはいえ、そうなるとまたただでさえ足りない人材がさらに足りないわけで。

 ……また、奴隷商を回って人材集めをしないといけないかもな。

 いや、しないとダメだろう。


「微力を尽くします」


 俺はとりあえず全力で頑張りますよと、返事をしてから王城を辞したのだった。

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