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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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199/240

ワケあり7人目㉙

筆が乗ったので追加更新です。

「あいたたたたたたた、もうちょい加減してくれよ……」


「無茶をするからです。1週間は安静にして下さい。食事も運ばせますから、寝室から出てはダメですよ。勿論、こっそりトレーニングをするのもダメです。魔力も使っちゃダメです。わかりましたね?」


 王都、リベルヤ子爵邸、俺の寝室。

 馬車から降り、オルフェさんに肩を貸してもらって、ベッドに寝かされてから、血の滲んだ包帯を外され、全身を清拭されていく。

 丁寧に汚れが残らぬよう、全身隈なくの清拭だったが、当然ながら、あらゆる所を見られた。

 もう、お嫁にいけない。

 そんなネタに走る余裕も無く、容赦の無い、力強い清拭をオルフェさんから施された上で、寝間着を着せられ、俺はベッドに押し込まれた。

 あれから。

 俺が意識を失ってから、カナエたちの大活躍により、オーガの群れは壊滅。

 被害は甚大としか言い様が無いが、それでも最善を尽くした形だ。

 数にすれば、およそ8万人が亡くなった。

 無くなった兵士たちの中には、アーミル侯爵の副官や、歴戦の猛者たちも多かったが、それでも王都を守る事には成功したと言える。

 しかし、多くの兵を失い、国力の更なる低下は避けられない状況となってしまった。


「それでは、くれぐれも安静に身体を休めるように」


 最後の念押しをしてから、オルフェさんは寝室を出て行く。

 安静にしてろ、と言われたし、全身に痛みがあるのも事実なので、俺はベッドで横になりながら、今回の件を振り返る。

 異形と化したタイラン侯爵。

 突如として発生したオーガの大群。

 この2つの出来事が、繋がっているのかは不明だが、偶発的に起きたとも思えない。

 色々と調査が必要になるだろう。

 王都に戻って来るまでに、既にエスメラルダに命じて暗部を動かしているので、そのうち情報は入ってくるはずだ。

 実際、今回のオーガの大群の突然発生により、暗部にも少なくない被害が出ている。

 幸いなのは、死者はゼロで、全員が怪我で済んでいる事だろうか。

 とりあえず、現状で判明している事は王国の被害状況と、アーミル侯爵が無事である事。

 そして、さすがに緊急事態すぎるので、急いで陛下が教国から戻る事が決まった。

 教国の方は、もうある程度は形になってきており、各国も数日以内には応援の文官に現場を任せ、国に戻るとの事だ。

 そして、陛下が戻り次第、俺は王城に召喚される事が決まっている。

 現状でわかった事は、これくらいだろうか。

 暗部に情報収集を命じてから、半日くらいで今の情報がもたらされたのだから、うちの暗部は本当に優秀なのだろう。

 元血染めの月(ブラッドムーン)の情報ネットワーク、遅るべし。

 そんな感じで、今回の件を振り返っていた所、寝室の扉をノックする音が。


「ハイトさん、今よろしいですか?」


 扉の向こうから、シャルの少しくぐもった声が聞こえる。


「おう、起きてるぞー」


 王都に戻る途中まで、意識を失っていたのもあって、今は眠気が無かったので、入ってくるよう促す。

 ちょうど、2人きりになるな、と少しばかり呑気に構えていた俺は、寝室に入ってきたシャルの表情と、雰囲気を見て、全身に嫌な汗が噴き出した。

 見惚れるほどに、美しい微笑みを浮かべているはずなのに、目の奥と雰囲気は全く笑っていない。

 俺、何かしたっけ……?


「それでは、失礼しますね」


 そう言って、シャルは部屋に備えてある椅子の一つをベッドの側に運び、ちょこんと腰を下ろす。


「最初にお聞きしたいのですが、ハイトさんはカナエさんたちを解雇するおつもりで?」


 まるで底冷えするかのような、低い声。

 普段のシャル浮かべる柔らかい表情と雰囲気からは、考えられないくらいのものだ。

 それでいて、美しい微笑みを浮かべているのだから、その迫力は尋常ではない。

 とはいえ、質問内容は聞き捨てならないぞ。

 どうしてカナエたちを解雇するって話になるんだ。


「そんなつもり、あるワケないだろ。どうして急にそんな話を……」


「今回、ハイトさんがしたのは、みんなをクビだと言っているようなものだから、です」


 俺が反論しようとしたのを遮り、シャルは俺に理解させるように、怒鳴るほどではないものの、大きな声で区切って事実を告げてきた。

 俺が、みんなをクビすると言ったようなもの、だって?


「予想外の強大な敵が現れた。仕方無いでしょう。想定外の事態が起きた。これも仕方無いでしょう。でも、そこであなたに仕える部下を先に帰すと言うのは、役に立たないからクビだと言っているようなものです。彼女らは、彼らは、あなたのために死ぬ事を許容した上でリベルヤ家に仕えてくれているんです。それを、邪魔だから帰れと、あなたはそう言ったのです。考えてもみて下さい。仮に、ハイトさんが命を懸けてでも、全力で守りたい人がいたとしましょう。その人から、命が危ないかもしれないのに、戦わずに逃がされたら、どう思いますか?」


 シャルの言葉は、ボディに連続で良く効くブローを決められているような感覚を覚えた。

 俺は確かに、仕えてくれているみんなを想って逃がそうとしたけど、それは逆に、俺に仕えてくれているみんなの覚悟を、面子を、決意を、踏み躙る行為だ。

 言われて初めて、自分がみんなに対して行った仕打ちが、いかに酷いものだったかを思い知る。


「俺は、とんでもない事を……」


「はぁ……基本的に察しはいいのに、どうしてこういう所は鈍感なんですかね」


 目の前で、これみよがしに溜め息を吐かれてしまうものの、さすがに反論の余地も無い。


「事の重大さはわかったようなので、ここまでにしておきますが、ちゃんとフォローは自分でして下さいね」


 少しだけ細くなった目で、シャルからジトっとした目線を向けられ、俺はばつが悪くなったのを誤魔化すように後頭部を掻く。

 幹部のみんなに、トーマスさんたち警備兵や、今回の件に志願してくれた使用人。

 まずは謝らないとな。


「さすがに今日はやめとくが、明日には謝ろうと思う。朝食後くらいにみんなを集めてくれるか?」


「それがよろしいかと」


 1日でどのくらい体調が回復するかはわからないが、明日になれば少しばかり歩くくらいは大丈夫だろう。

 

「あと、体調が回復したら、私たちにも償いをしてもらいますから、覚悟しておいて下さいね」


 最後に、そう言ってにっこりと笑みを浮かべたシャルは、とても美しく、可愛らしく、それでいて途轍もなく恐ろしかった。

 償い……一体どんな事を要求されるのか、俺はベッドの中で戦々恐々としてしまったのだが、そんな俺の様子を見て溜飲を下げたのか、あとはゆっくり身体を休めて下さい、と言い残して、シャルは寝室から出て行ってしまう。

 よし、今から何を要求されるか考えても仕方がない。

 大人しく、寝よう。

 シャルのとんでもないプレッシャーに晒されていたからか、眠くなかったはずなのに、割合すんなりと眠りに落ちる俺なのであった。

次回、上手く纏められればワケあり7人目は終了予定です。

もしかしたら、もう1回続くかも?

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