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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり7人目㉕

「負傷者は下げて治療を! なるべく継戦できるように! 戦えぬ者は王都へ移送せよ!」


 兵士たちに指示を飛ばしながら最前線で剣を振るい、オーガたちを屠っていく。

 万全の状態でないとはいえ、オーガ如きに遅れは取っていられない。

 これから先、上位種も控えているのだ。


「ハッハッハ、思い出しますなあ、奥方様の若い頃を!」


「あの時もこうして、最前線で戦いながら指示を飛ばしておったのう!」


「セファリシア様の、なんと頼もしい事よ!」


 私の護衛を担ってくれていた歴戦の3騎士も、側で縦横に剣を振るい、オーガを屠っていく。

 熟練の技の冴えが、とても頼もしい。


「この老骨の命、まだまだ散らせるわけにはいかんのでな!」


「そうじゃ、セファリシア様の子を見るまで、くたばるワケにはいかん!」


「守る物のある兵士の強さ、思い知るがよいわ!」


 とはいえ、無限に思えるくらいの敵の軍勢は、少しずつ我々を追い詰めている。

 人間、スタミナは有限だし、怪我をすれば戦闘もままならない。

 開戦からおよそ1時間程度は経っただろうが、死者こそ出ていないものの、負傷者はかなり多い。

 当然、そうなれば押し込まれる場所も出てくるわけで。


「やめろ! 俺には王都に家族が……」


 ぐしゃり、と肉の潰れるような音。

 続いて、何かを咀嚼する音が聞こえてきて、犠牲者が出てしまったな、と近くのオーガを斬り伏せながら考える。

 悲鳴を上げかけた兵士がどのような末路を辿ったのか、想像に難くない。

 しかし、感傷に浸っている暇は無いし、恐らくはこれからもっと増えるだろう。

 ここは、そういう場なのだから。

 きっと、遠からず私も彼と同じ末路を辿る。

 いや、女である以上、その末路はもっと酷いものかもしれないな。


「だが、私の命は易々とはくれてやらん!」


 オーガをどうすれば効率よく屠れるか、いい加減に慣れてきた。

 最小の動作と最小の一撃で、次々と向かってくるオーガを倒していくうち、少しばかり呼吸が乱れてきているのに気付く。

 戦場の雰囲気で気付いていなかったようだ。


「前線部隊は守備隊と交代せよ! まだ戦闘はしばらく続く! 交代で体力を温存しろ!」


 突貫ではあるものの、防衛陣地を築いた事により、ある程度はオーガたちの移動方向を制限できている。

 それにより、2交代で体力の回復をしながら籠城戦に近い状態を維持しているが、果たしてどれだけ保つだろうか。

 前衛部隊が敵の進行を抑え込んでいるうちに、砦のバリスタなどの兵器を用いて後方の敵を攻撃しているわけだが、それが果たしてどれだけの上位種を倒せているのだろう。

 50万にも上る群れが、砦を組織立って狙っているというのは例を見ない。

 念のために、道を逸れたオーガを狩るための備えもしてあるが、今の所は彼らの出番は来ていないようだ。

 予備兵力を遊ばせているのは勿体ないのだが、さすがにオーガの群れからはぐれを出すのは近隣の村や街にとっては脅威でしかない以上、その備えをしないわけにもいかない。


「お三方も、頃合いも見て後退して下さい。まだまだこの戦場は長いですから」


 近くで戦う歴戦の3騎士に声をかければ、彼らは私よりも呼吸を乱していたが、戦う意思だけは衰えていない。


「年は、取りたくないものじゃな……」


「全くだ……」


「だが、セファリシア様が戦う限り……我々も共に戦いますぞ!」


 加齢により衰えた体力を、気迫と信念でもって補い、退く気を見せない歴戦の3騎士は、頼もしくもあったが、同時に不安でもあった。

 彼らのような歴史を知る人物の知識というものは、失われてはならない。

 中には時代の移り変わりで使われなくなるものもあるかもしれないが、知識とは財産だ。

 それを連綿と受け継ぐ事で、人間は繁栄してきたのだから。


「総指揮官として命ずる。一度後退して体力の回復に努めよ」


 だから、少しばかりズルではあるが、総指揮官の立場を利用して、強い口調で命じた。

 兵士は戦時中、上長の指示に従わなければならない。

 歴戦の猛者とはいえ、彼らにとっても例外ではないのだ。


「……承知いたしました」


「セファリシア様も、ご無理はなさらぬよう……」


「ご武運を……」


 僅かばかりの逡巡の後、歴戦の3騎士たちは後方に退いていく。

 周囲に人が少なくなった事で、敵からの圧が強まるが、実はこちらにとっては都合が良かったりもする。

 本気を出すと、少々手加減が効かなくなるからな。


「竜神の加護」


 自らに、自己強化の祈術(きじゅつ)をかける。

 この祈術は、他人にかける事ができない代わりに、その強化幅がとてつもなく大きい。

 私は祈術の心得こそあるが、オルフェ殿のように他者にかける事のできるものをほとんど覚えられなかった。

 適性、というものなのだろう。

 とはいえ、自分のみにかける祈術というのは、総じて他者にかけられるものより効率も効果も高い。

 自己強化の祈術としては、最上級のこの祈術、消費魔力の割に強化幅がとんでもないので、力の制御が難しくなる。

 意外に自分の近くに味方がいると、使いにくいのだ。


「ふんっ!」


 自己強化を施した上で、右手の剣を振り抜く。

 たったの1振りで何の抵抗も無く、オーガの首を跳ね飛ばした。

 よし、これなら上位種相手にも戦えるだろう。

 兵士たちの休む時間を捻出するためにも、少しばかり戦線を上げるとしよう。


「私はこのまま前線を上げる! 他の者は少しでも体を休めよ!」


 可能なら休憩しておくよう指示を出してから、私はどんどん戦線を上げていく。

 オーガの群れの中に深く切り込み、周囲を囲まれるものの、強化された身体能力でもってやつらを蹂躙していった。

 今や、オーガの群れの注意が殆ど私に向いている。

 こうして敵を惹きつけられれば、皆が休む時間を捻出できるはず。

 数の上で不利な我々は、いかにして時間を稼ぎ、継戦するかを考えなくてはならない。

 例えその先にあるのが死だったとしても、最善を尽くす努力はしなければならないのだ。


「私を倒せるものなら、やってみるがいい!」


 オーガたちが言葉を解するかはわからないが、私の発言を挑発と受け取ったのか、はたまた獲物として見定めたのか、より勢いを増してこちらへ向かってくる。

 私に注意が向く分には構わないが、このまま前線を上げ続けると戻れなくなってしまう。

 適度な所を維持せねばな。

 命を懸ける覚悟はあるが、犬死にするつもりは無い。

 自己強化が切れる前には退く必要があるから、退き際だけは見誤らないよう意識しながら、私は剣を振るい続けるのだった。

セファリシアが自分にかけた強化の祈術は、とんでも効率をしております。

全能力を150%上昇させ、体力の自動回復、スタミナ回復速度アップ、与ダメージ100%アップ、被ダメージ80%カットの全部盛り具合です。

ちなみにオルフェの最上級味方強化祈術だと全能力60%上昇、与ダメージ50%アップ、被ダメージ60%カット、となります。

これ数値化するととんでもねえバフだな……。

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