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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり7人目⑳

神経雷化(ライトニングナーブ)!」


 覚醒の翼(ライザーウィング)状態の全身の神経に、大量の雷をぶち込む。

 本来ならほんの一瞬だけ、神経に雷を流す事で五感と筋肉の反応速度を上げる強化の魔戦技(マジックアーツ)だが、その効果と引き換えに、身体の内側から雷に焼かれてしまう。

 ゆえに、一瞬のみの使用でなければ身体が耐えられないのだが、覚醒の翼を使って全体強化がされている今なら、それなりに維持が可能だ。

 とはいえ、当然ダメージはあるし、恐らくは今回も半月~1ヶ月程度はベッドの上になるだろう。

 けれど、可能な限りの手を打たなければ、殺される。

 四の五の言っている場合ではない。


「ほう、まだ強くなるか! 若くしてその力、我が軍門に降らないのが惜しいな!」


 追加で自己強化の手札を切ったものの、それでも異形化したタイラン侯爵には僅かに届かなかった。

 動きや身体能力はほぼ互角にはなったが、俺の一撃はヤツの腕によって易々と防がれてしまったのだ。

 身体が、硬すぎる。

 となれば、斬撃ではなく点の一撃に全力をかけるしかない。

 しかし、あの硬さを貫くだけの一撃を放つには、どうしても溜めがいる。

 まだ慢心はしていそうだが、さすがに悠長に待ってはくれないだろう。

 残り時間は、およそ1分半。

 溜めにかかる時間は、45秒。

 さて、どうする?


「隙だらけだぞ!」


 俺がどうやって溜めの時間を作ろうか、と思案していると、タイラン侯爵の背後から強烈な剣の一撃を浴びせる男がいた。

 その一撃は、通ってこそいないものの、異形化したタイラン侯爵を僅かながらよろめかせるだけの威力が確かにあったのだが、打ち込んだ本人である、アーミル侯爵はその手応えに顔をしかめる。


「逆賊の徒め! 今日こそ引導を渡してくれる!」


 大きく声を上げ、注意を引くようにタイラン侯爵に挑みかかるアーミル侯爵に、煩わしそうな空気を醸し出しながらも、タイラン侯爵は背後に振り返った。


「うるさい羽虫だな……まあいい。どのみち貴様には死んでもらう予定だった。それが早まっただけの事!」


 タイラン侯爵の注意が向いた瞬間、アーミル侯爵は俺に向かって小さく頷く。

 なるほど、時間稼ぎをしてくれるって事か。


「父上! 指揮官が真っ直ぐに突っ込んでどうしますか!」


 続いて、セファリシア嬢がアーミル侯爵の間隙を埋めるように、タイラン侯爵に一撃を加える。

 下手をすれば、死ぬかもしれないというのに、あの2人、当たり前のように命を懸ける気だ。

 想いを聞かずともわかるくらい、2人の顔は決意に満ちていた。

 俺1人でカタを付けたかったが、今はあの2人を信じて溜めを作るしか無い。

 両手で握ったルナジアムを、真っ直ぐ胸の前に突き出すように構え、身体と魔力、両方を使ったばねを溜め込んでいく。

 残り時間、50秒。

 溜めが終わった瞬間に一撃をぶち込めば、余裕で間に合う。


「羽虫親子が! 大人しくくたばれ!」


 言葉通り、羽虫を払うようにして、タイラン侯爵は両腕を振り回すが、アーミル親娘は左手の盾で上手く攻撃をいなしつつ、剣で反撃を加えている。

 正面から受け止められないと理解しているからこその、恐ろしく柔らかい受け流しの技術に、俺は溜めを作りながら感心してしまう。

 間違い無く、とんでもない技量だと思う。

 筋力と技量の完璧とも言えるバランスが、あの柔らかな受け流しを生むのだろうが、それ以上に、絶技とも言える技術を、息を吸うが如くやってのけている。

 溜めの完了まで、あと20秒……!

 あと少しが、長い……!


「父上! くあっ!?」


 綱渡りで拮抗を生んでいたアーミル親娘が、急に崩れた。

 アーミル侯爵が大きく態勢を崩し、そのカバーに入ったセファリシア嬢が一撃を受け流し損なって、大きく吹っ飛んだ。


「リシア!? く、まだだ!」


 後ろに吹き飛ばされた娘を気にする様子ではありながらも、アーミル侯爵は孤軍でもって奮闘する。

 しかし、無情にも無造作に薙がれたタイラン侯爵の手刀が、鎧に守られていたはずのアーミル侯爵の胴体を切り裂く。

 今すぐ助けたい。

 そんな気持ちを唇を噛んで我慢しつつ、残る魔力を臨界まで圧縮。

 多くの血を流しながら、アーミル侯爵が崩れ落ちる。

 そんな様子を強化された感覚でもって、スローモーションのように確認しながら、飛び出すタイミングを待つ。

 5、4、3、2、1……!


魂すら貫く一突(ソウルピアッシング)!!」


 残る全ての力を、突き出したルナジアムの先に集中させ、一歩を踏み出すと同時に、背中の余剰魔力を全て真っ直ぐ前へ進むための推進力に変換する。

 その瞬間、俺は音を置き去りにし、一条の弾丸となった。


「くっ、この死に損ないが!」


 俺の一撃に、タイラン侯爵は反応して避けようとしたが、崩れ落ちたアーミル侯爵がその足を掴んでいたため、たたらを踏んだ。

 最後の最後まで、素晴らしいアシストである。


「ハアアアアアッ!」


 全霊を込めた一突き。

 今、俺が持ち得る全てを凝縮した一撃は、確かにタイラン侯爵の胸ド真ん中を貫いた。


「ば、バカ、な、……ウボアアアアァァァァ!!」


 どっかのファイナルなファンタジーに出てくる皇帝サマのような断末魔を上げて、タイラン侯爵の身体は爆散。

 霧のように散って、肉体の欠片も残さずに消滅。

 何とか、なった、な……。

 視界が急に暗転すると共に、俺は意識を失った。

少し短めですが、キリがいい所で終了です。

とはいえ、タイラン侯爵を倒してもまだ終わりじゃありません。

ワケあり7人目はもうちょっとだけ続くんじゃよ。

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