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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり7人目⑨

「当主様、少しいいかしら?」


 セファリシア嬢によって取り仕切られた訓練を終え、久方ぶりの充足感を味わいながら屋敷の浴場で汗を流していると、浴場の外からエスメラルダの声がかかった。

 わざわざこんなタイミングで声をかけてくるという事は、それなりに急ぎの案件だろう。


「わかった、今出る」


 湯舟で寛いでいたのだが、すぐに出て全身を魔術で乾燥させ、脱衣場に出てみれば。


「あら、まだ子供と思っていたけれど、なかなかいい身体してるじゃない」


 その場にエスメラルダがいて、全裸の俺を見て興味深そうな顔である。

 ちらりと側にある鏡を見れば、最近伸び始めた身長に、所々に見える筋肉の影と、それなりに引き締まった己の肉体。

 年齢を考えれば、まあまあいい具合の仕上がりといった所だろうか。

 身長は162センチ、といった所だろうか。

 出会った当初と比べれば、まだ明らかにシャルよりも低かった身長も、今となってはほとんど変わらないくらいだ。

 願わくば、これで成長が止まらない事を祈りたい。


「うっせ。いいから外出てろ。すぐ行くから」


 しっしっ、とエスメラルダを脱衣場から追い出し、手早く着替えを身に纏う。

 ちなみに、訓練で汗をかいたためか、俺が風呂に入っている間に、使用人の方々が新しい着替えを既に準備してくれていたようだ。

 ありがたい限りだが、庶民暮らしが染みついた日本人感覚では、少しばかり慣れない。

 まあ、傅かれる事が当たり前、と胡坐をかかないよう気を付ける事にしようか。


「で、タイラン侯爵の方に何か動きでもあったか?」


 脱衣所を出て、執務室の方に向かいながら、それとなく少し後ろをついてくるエスメラルダに、本題を問う。


「ええ。何か勘でも働いたのかしらね。物資の準備を切り上げて、すぐに軍を動かしたわ。足りない分は都度現地で購入する形に切り替えたようね。既に領地を発っていて、明日の夕方くらいには王都周辺に展開し始めるくらいかしら」


「王城には?」


「別で部下を送って情報共有済みよ。多分、そんなにしないうちに側妃様からの返事を貰ってくると思うわ」


 話の内容を聞きつつ、執務室に入れば、そこにはシャルに監督されながら書類に悪戦苦闘しているジェーンとカナエの姿があったが、自業自得なので放っておく。

 フォローに回るシャルには少しばかり申し訳ないが、俺も今は他に手が回らないからな。

 今度、何か美味しい物でも買ってきて、少しのんびりできる時間を作りたい所だ。


「遅滞工作はできそうか?」


「一応、やってはいるけれど、こっちの情報がバレないようにだから、あまり効果は望めないわね。さすがにまだ、複数の大型貴族に正面から喧嘩は売りたくないでしょう?」


「そうだな。さすがにまだうちの手勢が少なすぎる」


 執務机に付き、あれこれとエスメラルダと話すうち、やっぱこいつしごできだな、と思う。

 俺の思い付く程度の工作は指示を出さずとも、とうにやってるし、伝えてくる情報も要点が纏まっていてわかりやすい。

 それでいて、うちの人員の状況などをわかっていて、今回の件でリベルヤ子爵家が矢面に立たされないよう調整までしてくれている。

 改めてエスメラルダの能力の高さに関心していると、扉をノックする音が。


「多分部下ね。入ってちょうだい」


 エスメラルダの返事に応じるようにして、失礼します、と一人の男性が入室してくる。

 特徴のない、中肉中背の男。

 シャルが攫われたあの日、俺に貴族男性を装って話しかけてきた男だ。

 エスメラルダがうちで働くようになってから知ったのだが、彼が血染めの月(ブラッドムーン)のナンバー2であり、現場方面におけるリーダーであるらしい。

 なんでも、古くからエスメラルダの家に仕えている家系だそうで、彼はその10代目だとか。


「姫様、仔細はこちらに」


「ありがとう。それじゃ、引き続き頼むわね」


「かしこまりました」


 一枚の書類を手渡して、エスメラルダの側近はすぐに出て行った。

 恐らく、すぐに現場指揮に戻るためだろうな。

 エスメラルダは、情報がまとめられているであろう、書類に目を通した後、無詠唱の魔術でそれを焼却。

 情報漏洩を防ぐための行為なのだろうが、随分と自然で淀みの無い動きだ。

 普通の人間とは比べ物にならないほど、長く繰り返した行為なのだろうし、もしかすると習性というレベルなのかもしれない。


「私の予想通り、明日の夕方くらいにはタイラン侯爵軍が近くまで来るわね。この件に関して、王城から至急の呼び出しがかかっているわ。十中八九、戦絡みの話になるでしょうから、覚悟しておいた方がいいわね」


「ま、話を聞いてみない事には側妃様の判断もわからないしな。とりあえずは、王城に行くとするか。一緒に行くのはエスメラルダと……あ、お前ら2人は今回留守番な」


 訓練の件は俺の落ち度もあるが、割と重要事項なのでちゃんとやるように、カナエとジェーンの2人には言外に釘を刺しておく。

 一緒に行く、と声を上げかけた2人は、がっくりと頭を垂れた。

 ま、実際に戦場に赴くとなれば、2人とも連れて行く事にはなるんだがな。

 とりあえず出撃が決定するまでは、このまま書類仕事に精を出してもらおう。


「それじゃシャル、すまんが2人の指導を頼む。俺は呼び出しがかかってるんで、このまま王城だ」


「はい、お気を付けて」


 シャルに声をかけてから、俺は執務室を出た。

 執務室近くにいた使用人に、王城に行くので馬車の手配と、トーマスさんに戦に出る支度をするよう伝言を頼んで、屋敷の正門手前で馬車が回されるのを待つ。


「今回は、戦闘になると思うか?」


 馬車が回されてくるのを待つ間、俺は何となくエスメラルダに聞いてみた。

 別に黙っていても良かったのだが、彼女がどう感じているのかが、どことなく気になったのだ。


「なるでしょうね。少なくとも、タイラン侯爵本人と、その子飼いの兵たちとは間違いなく」


「……そうか」


 話しているうちに馬車が回ってきて、俺たちは馬車へと乗り込む。

 馬車の方も勝手知ったるとばかりに、王城へ向けて走っていく。

 馬車の家紋でほとんど顔パスなので、さしたる手続きも無く、すぐに陛下の執務室へと通される。

 そこには、側妃様が既に待っていて、そこにはもう1人、見覚えの無い男性がいるのが見えた。

 今回の件に大きく関わるのであろう事は、どことなく察したが、恐らくは側妃様が紹介してくれる事だろう。

 さて、今回ばかりは国の1大事なわけだし、殊更に気合を入れておかないとな。


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