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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり7人目⑦

気付けば月間ランキングも端っこの方に載っておりました……!

色々と作品の数ある中で端っことはいえ、ランキングに載るのは嬉しいものですね。

皆さんの応援に応えられるよう、これからも頑張っていきます。


視点はセファリシア嬢です。

「今日から新顔が混じるが、いつも通り訓練をしていくぞ」


 ひょんな事からリベルヤ子爵に保護される事となり、彼の屋敷で夜を明かしての翌朝。

 敷地内の練兵場で警備兵を中心に、訓練を行うという事で、私は最初からこの場に参加させてもらっていた。

 驚くべきは、業務の無い使用人たちまで参加している事だ。

 ここに来るまでに聞いた話では、この屋敷で働く者にはすべからく戦闘訓練を施すという。

 聞いた時には驚いたが、言われてみればと納得する部分もある。

 この屋敷の独特の雰囲気というか、そこかしこに強者がいる空気が流れているのだ。

 警備兵たちは、少なめに見積もっても平均はB級上位の冒険者くらいだろうか。

 中にはA級中位~上位くらいの者もちらほらと見受けられるくらいである。


「今日から世話になる、セファリシア・アーミルだ。短い期間になるとは思うが、よろしく頼む」


 簡単に挨拶をすれば、警備兵も使用人たちも、めいめいに挨拶を返してきた。

 私が貴族の子女である事には気付いているようで、その言葉遣いや態度には多かれ少なかれの緊張が見て取れたが、訓練に支障をきたすような者は1人として見当たらない。


「そんじゃ、いつも通りかかってきな!」


 ジェーン殿が号令を発すると、この場の警備兵と使用人たちが、一斉に彼女へと襲い掛かっていく。

 訓練とは一体、と私が呆けている間に、ジェーン殿は四方八方から襲い来る人々を捌き、時に反撃を加えている。

 訓練用の刃引きされた武器とはいえ、彼女の扱う鉄塊のような特大剣の一撃を受ければ、人は簡単に吹き飛ぶし、怪我をするだろう。

 いや、しているな。

 反撃を受けて吹き飛ばされた使用人の一人の腕がおかしな方向に曲がっており、間違い無く、骨が折れている。

 攻め手側の手数が減れば、必然的にジェーン殿が攻撃に回る時間が増えて、開始時は50人程度はいたはずの攻め手側は、10分もしないうちに壊滅。

 その多くは怪我をしているし、骨折等の重傷者も多い。


「それでは、怪我をした方は治療しますね」


 そう言って、手慣れた雰囲気でオルフェ殿が祈術(きじゅつ)で怪我人の治療をして回る。

 彼女の祈術の腕前は大したもので、範囲で複数人の回復ができる術を呼吸するが如く使用していた。

 その実力だけを見るのなら、上級祈術師を名乗っても問題ないくらいだ。


「回復したら、次は私」


 全員が回復したのを見計らって、次はカナエ殿に全員が挑みかかる。

 が、繰り返される蹂躙により、攻め手側の全員が地面に転がるのは変わらない。

 カナエ殿の方がまだ手加減は上手いのか、重傷者はいなかったが、それでも怪我人は多かった。


「……つかぬ事を聞くが、この訓練は毎日行われているのか?」


 たまたま、近くで身体を休めていた使用人の1人に話しかけてみれば、僅かに緊張した様子ではあるものの、こちらに委縮せずに応対してくれる。


「ええ、休日以外は毎日ですね。業務のある時間は免除されていますが、1日のうち最低2時間は参加が義務付けられています。本業の方は時間で持ち回りですので、役職持ちの方以外はどこかしらの時間で訓練に参加していますね。役職持ちの方は、早朝か夕方のどちらかで訓練をしている事が多いです」


「そうか。答えてくれてありがとう」


 本来なら、こんな無茶苦茶な訓練を行っていれば、委縮してしまいそうなものだが、話した使用人はイキイキとしていて、この環境に満足していそうだった。

 その他の人物も、特別不満点は無さそうで、訓練が厳しくてしんどい、といった様子こそ見受けられはするものの、不満げな様子は一切見せない。

 全く意味がわからないな。

 というか、こんなものは訓練とは呼ばないぞ。

 ただ暴力に慣れさせているだけに過ぎないではないか。


「おし、そんじゃオルフェ、今日も一戦やろうぜ」


「はい、今日も胸を借りさせて頂きますね」


 今度は何が始まるかと思えば、ジェーン殿とオルフェ殿の組手が始まる。

 スピードとパワーのジェーン殿に対し、祈術の補助で自己強化のオルフェ殿。

 特大剣と斧槍という、見た目には似つかわしくない得物同士でのぶつかり合い。

 正直、驚いている。

 オルフェ殿はただの祈術師だと思っていたが、近接戦闘もかなりのものだ。

 素の身体能力の差ゆえに押されがちではあるものの、実力はA級冒険者と比べても遜色無い。

 幾度も地面を転がり、押されていても、己に回復祈術と補助祈術をかけて粘り強く戦う。

 とはいえ、やはり実力はジェーン殿の方が勝るのか、最終的にはオルフェ殿が押し切られる形となってしまった。


「まだ、勝てそうにないですね」


 ジェーン殿の手を借りて立ち上がりつつ、オルフェ殿は悔しそうに表情を歪ませる。

 実力伯仲、とまでは残念ながらいかないものの、今後の努力次第では手が届かないほどではない、といった辺りの実力差。

 目標としては、ちょうどいいのかもしれない。


「いや、結構あたしもヒヤヒヤしたんだぜ? 最初に比べてメキメキ腕も上がってるし、あたしもうかうかしてられねえな」


 2人の組手が終わった時点で、ちょうど昼頃であったため、昼食休憩となったのだが、食堂に向かう途中で、私は1つの決意を固めていた。

 ちょうど、食堂に入った所で目的の人物を見つけたので、一気に詰め寄っていく。


「訓練の方はどうでしたか?」


 私に気付いたリベルヤ子爵は、純粋な疑問、といった形で問うてくる。

 当然、答えなど決まりきっているのだが。


「あんなもの、訓練などとは言わん! 午後から、私が本当の訓練というものを見せてやる! 許可を出してくれ!」


 教えられる側の事を一切考えていない、押し付けるような行為。

 全くもって度し難い。

 話に聞けば、あんなでも辞めた者は数名しかいないというが、よくもまあ、大多数が残ったものである。


「わ、わかりました……一応、私も午後からは訓練の方に行きますので、午後の方はお任せしますね」


 私の剣幕に押されたのか、少しばかり焦った様子のリベルヤ子爵。

 申し訳ないが、あれを良しとしているのなら、貴族家当主としての資質を疑わなくてはならないぞ。

 憤懣やるかたないといった所ではあるが、美味な昼食を頂いて、私は少しばかり溜飲を下げたのだった。

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