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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり6人目㉑

「……リベルヤ子爵、出られますわね?」


 僅かな逡巡の後、目つきを鋭くした側妃様がこちらを見る。

 出られるか、と言われれば出られはするけども。


「さすがに情報が無いと動きようがありませんよ。例えば、最後にどこへ行ったとか、個人の魔力がわかるとか、何かしら目途が付かないと、ただ闇雲に探すだけになりますし、焦った動きをタイラン侯爵側に見られるのもマズイでしょう」


 動いてもいいが先に何か情報をくれ、と訴えてみれば、眼の構成員に視線を向けて、側妃様が無言で頷く。


「最後の情報は、学院に出した外出届です。外出先は東の平野、目的は薬草の採取、との事です」


 目の構成員からの情報によると、東の平野に薬草採取に行ったきり、行方が掴めていない、と。

 王都周辺は、基本的にしっかりと魔物の間引きが行われているから、想定外の何かに襲われたという事は考えにくい。

 タイラン侯爵がその辺りの任をサボっていれば、すぐに把握でいるだろうし、可能性として考えられるのは、そもそも外出届がタイラン侯爵側からの工作であるか、あるいはアーミル侯爵の娘が自分の立場を理解していて、偽装工作で王都を出るためのもの、といった辺りが考えやすいか。


「アーミル侯爵のご息女について、いくつか聞かせて下さい」


 いくつかの可能性は考え付くが、ある程度の絞り込みをするにも目的の人物の情報が欲しい。

 候補を絞り込めるのなら、空振りの可能性が減るしな。


「わたくしたちの知る範囲であれば構いませんわ」


 幸い、俺の質問に頼して、側妃様は特に問題なしと応じてくれた。

 恐らくは、こちらの意図も汲み取っているのだろう。


「まずは名前と外見、周囲に知られている性格や気質が知りたいです」


「名前はセファリシア・アーミル。天翼族ですので、背中に大きな羽根の翼があるのが外見上の特徴ですわね。顔立ちは亡くなられた奥方そっくりの、気品と厳格さを併せ持っていますわ。性格は謹厳にして実直、己に厳しく他人に優しい人物と評されていますけれど、一方で正義感が強すぎるのが欠点、と言われていましてよ」


 話を聞く限りだと、外見上の特徴は見たらすぐにわかるくらい目立つな。

 性格はまあ、わかりやすい武人タイプって所かね。


「外出届は本人が提出した物ですか? それとも誰かが代理で提出したものですか? あとは、外出の際に同行者は?」


「外出届はご本人からの提出と学院側から聞いております。同行者は、残念ながらいらっしゃいません」


 単独行動で、外出届は本人提出、と。

 そう考えると、眼の構成員が言っていた、まだタイラン侯爵の手には落ちていない、というのは信用しても良さそうだ。

 まあ、何かしら先に脅しをかけられてて、そのために外出届を出した、という可能性もあるが。


「外出はいつ頃でしょう?」


「昼休みが明けてすぐ、と伺っております」


 昼休みが終わってから外出、と考えれば、俺たちがちょうど王城に登城した辺りくらいだから、まだそこまで時間は経ってない。

 仮に彼女に何かがあったにしろ、無かったにしろ、そこまで遠くには行っていないだろう。


「エスメラルダ、どう思う?」


「今の話を伺った限りだと、セファリシア嬢ご本人の意思で動いているように思えます。目的は見えませんが」


 エスメラルダに意見を求めてみれば、おおよそは俺と同じ考えのようだ。

 そして、話しながら左手をちょくちょく動かしているのを見るに、王城内にいながらにして、部下とやり取りをしていそうに見える。

 まあ、正直な所、俺は彼女たちの忠誠心さえあれば、独自に動く分には気にしていないし、彼女たちの独自技術を無理やり聞き出すような真似はしない。

 隠密に動くような部署だから、他人に漏らせない技術とか秘密とか色々あるだろうし。


「おおよそ欲しい情報は確認できましたので、このまま動きます。何かあれば使用人か彼女の部下を連絡に出しますね」


 情報収集もそこそこに、俺たちは王城を辞してから、カナエの駆る馬車に乗り込み、一度屋敷へと戻る。

 王都の外に出るし、何かあった時に備えての準備もいるからだ。


「とりあえずカナエとジェーン、オルフェさんは俺と外だ。エスメラルダはシャルと連携して情報収集を。何かわかったら連絡を入れてくれ」


 各人へと諸々の指示出しと準備を終えて、俺たちは慌ただしく屋敷を出発した。

 まずは情報通りに東平原に向かう。

 とはいえ、東は情報工作の可能性も高いから、そこまで念入りな捜索はしないが。

 ジェーンに御者を任せ、移動中に今回の目標になるセファリシア嬢の捜索を説明しながら移動していく。

 さて、間に合うといいけど、どうなるかね。




◆――――――――――◇




「エスメラルダさん、進捗はいかがですか?」


 ハイトさんが再度屋敷を出てすぐ。

 直属の部下と何回かやり取りをして、1度待つ形となった彼女に声を掛けてみれば。


「ま、それなりね。今、部下に目的の人物の目撃情報を探らせてるから、少しすれば王都を出た方角くらいは確定できると思うわ」


 色の良い返事が返ってきて、少なくとも彼女が真剣にリベルヤ家の暗部としての仕事に向き合っているのがわかりますね。

 いい傾向です。

 今後、ハイトさんを支えていく家臣の1人として、彼女ほど心強い存在はいませんし。


「それで? 何か私に用事があったのでしょう?」


 待機の合間で答えられる事なら何でもいいわよ、とこちらの話を促してくれるのはありがたいですね。

 もう既に他の皆さんには確認した話ですし、手早くエスメラルダさんにも確認してしまいましょうか。


「1つだけ確認したい事がありまして。エスメラルダさんは、ハイトさんの子を産む気はありませんか?」


 私の投げかけた質問に、エスメラルダさんは目を点にして固まってしまいましたね。

 はて、そんなにおかしな質問をしたつもりは無かったのですが。


「……面白い冗談ね」


 若干、顔を引き攣らせながらも、エスメラルダさんは絞り出すように返事をしましたが、こちらとしては大真面目な話なんですよ。

 ハイトさんの優秀な血筋をより多く遺すためにも。


「冗談ではありませんよ? 既に同じ話をカナエさんとジェーンさん、オルフェさんとフリスさんにもしていますし」


 さすがに誰がどんな返事をしたかまでは共有はしませんけれども。

 まあ、共有するのなら概ねいい返事をいただけている、とだけでしょうか。


「私は人殺しよ? それも、100人単位で殺してるくらいの」


 今はリベルヤ家に仕えているから問題無いが、本来なら国から死罪を執行されているような存在だ、と暗に伝えてくるも、私は横に首を振ります。


「それでも構いませんよ。あなたは根っからの悪人ではありませんし。相当な人数を手にかけていようとも、それを罪として認識できる、誠実な方です。そもそも、冒険者だって、野盗や山賊のような悪人を殺す事がありますし、兵士も戦争が起これば敵の兵士を殺めるでしょう。数の大小はあれど、そこに貴賤はありませんよ」


「……考えておくわ。今はまだ、成人してない子供でしょう。成人した頃に、私がその価値を感じるかどうかよ」


「前向きに検討して頂けるのなら、幸いです」


 成人まで、あと1年と半年弱といったところですし、ハイトさんが成人する頃には、きっと今の何倍もいい男性になっているでしょう。

 うん、恐らくはエスメラルダさんもハイトさんに落とされるんでしょうね。

 魔術や戦闘センスなど、さまざまな才能のあるハイトさんですが、何よりも強いのは、人を惹き付ける魅力の高さです。

 私を始め、陛下や王妃様たちですら、その魅力にやられてしまっていますし。

 陛下たちのご息女たちも我がリベルヤ家に輿入れするご予定らしいですし、ハイトさんにはもっと頑張って頂かないと。

 部下が戻って来る、と言って逃げるように部屋を出て行ったエスメラルダさんを見送って、私は将来のリベルヤ家を想像しながら執務を行いました。

 私の一挙手一投足が、将来に繋がるのだと思えば、仕事にも身が入るというもの。

 ハイトさんは思うように動いて下さい。

 私が……いえ、私たちが全力で支えますから。

今回でワケあり6人目は終了となります。

次のワケあり7人目からは国内のゴタゴタにハイトたちが巻き込まれる形になります。

なお、将来を見据えて暗躍しているシャルロットですが、これは自分が実権を握ってどうこうとか、そんなものではなく、あくまでハイトを立てた上で、リベルヤ家を発展させようという彼女なりに貴族家を盛り立てていこうとする気持ちの表れです。

まあ、下手な干渉なんて跳ね除けられるくらいの力を付けよう、という気概はありますが、それもこれもハイトが自由に生きられるように配慮するためでもあります。

彼女にとって、あくまでハイトが一番で、全てにおいてハイトが優先される、というだけです。

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