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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり6人目⑮

「さて、と。まずは色々と話をしようか」


 奴隷契約を終えた血染めの月(ブラッドムーン)の構成員たちを解散(各地の構成員に情報共有をさせるため)させ、ここに居残る事となる首領だけを室室に連れて行く。

 奴隷契約により、俺を害する事はできなくなったため、今まで見張りに付けていたカナエとジェーンは通常通りの配置に戻る。

 とはいっても、2人とも執務室に一緒に向かっているので、実質は特に変わる事も無いのだが。


「無事に奴隷契約は終わったみたいですね」


 ぞろぞろと執務室に入れば、シャルが笑顔で出迎えてくれた。


「とりあえずかけてくれ」


 血染めの月の首領を来客用ソファに座らせ、俺自身も執務机の席に腰を下ろす。


「そこまで警戒しなくても、逃げたりしないわよ?」


 ジェーンはそうでもないが、前に一度無力化された事もあってか、カナエは警戒心を剥き出しにするように、出入口を固めている。

 まるで威嚇する猫のようだが、表情がほぼ動いてないのは相変わらずだ。


「さて、それではあなたたちのお仕事について、お話をしましょうか」


 人事関連は基本的にシャルに任せているため、進行は彼女に任せつつ、俺は改めて血染めの月の首領を鑑定する事に。

 今回ばかりは彼女を見ていても何の不自然も無いしな。


―――――――――


エスメラルダ・ブラッドローズ

560歳

種族:吸血鬼

身長:170センチ

体重:65キロ

状態:健康

生命力:30

精神力:25

持久力:30

体力:20

筋力:15

技術:45

信念:15

魔力:25

神秘:45

運:35


特殊技能

・血魔術

・暗殺術

・礼儀作法

・武器熟練:刺剣・投擲物・仕込み武器

・誘惑の魔眼

・組織運営

・情報操作

・変装術

・部隊指揮

―――――――――


 鑑定してみて、彼女――エスメラルダの能力の高さに驚く。

 かなり平均的に高い能力なのもそうだが、特殊技能の欄が過去イチで盛り沢山だ。

 裏社会で生きてきたという経験の滲み出る技能ばかりか、礼儀作法や組織運営といった技能まである。


「そういえば、まだお名前を伺っていませんでしたね」


「エスメラルダよ。エスメラルダ・ブラッドローズ。元は伯爵家の出自だけれど、もう500年は前の話だから、忘れてもらって構わないわ」


 自己紹介と共に肩を竦めるエスメラルダ。

 いい意味で、気負っている様子は無い。

 人によっては不敬だとか、礼儀がなってないとか言い出しそうな案件だが、例によって俺は気にしていない。

 というか、年齢では相手の方が圧倒的に上なので、何なら俺が敬語で話した方がいいまである。

 現状では、特に嘘を吐く様子も無いので、引き続きシャルに進行を任せておく。


「それではエスメラルダさん、あなたが血染めの月の首領を務めていた事は知っていますが、細かい事はあまり知らないので、過去にどういった仕事をして、どうやって組織を拡大していったかを大まかにご説明下さい」


 こうして横で話を聞いていると、まるで面接だ。

 血染めの月という組織を運用するに当たって、できる事とできない事をハッキリさせておく目的なので、面接と言っても差し支えはないのだが。


「元々、ブラッドローズ家は、古くから帝国の暗部を務めていた家系でね。私は10代目の当主として家を継いだのだけれど、当主になってちょうど20年が過ぎた時に、皇室がブラッドローズ家を消すために罠を仕掛けてきたの。事の発端を辿れば、次期皇帝の跡目争いの延長線だったのだけれど、巻き込まれる側はたまったものじゃないわ。命の危険もそうだけれど、私は部下を1人でも多く生き残らせるために、死に物狂いで戦って、最終的に罠としての戦力である近衛兵200人と、皇太子の1人を全員殺したわ。帝国側でどう言い伝えられているかはわからないけれどね。それからは、元々暗部として働いてきた経験を生かして、裏社会で勢力を拡大してきた、といった所かしら」


 簡潔ではあったものの、なかなかに壮絶なエスメラルダの人生に、シャルを始め、誰もが口を噤む。


「まあ、ある意味では元の仕事に戻った、と言うべきかしら。仕える先が国から1貴族家に変わっただけでね」


 そんな空気に耐えかねたのか、エスメラルダが肩を竦めつつ、少しおどけて見せた。


「ちなみにエスメラルダは、帝国の暗部に戻りたいと思った事は……」


「あるわけないじゃない。今から戻れと言われても、こっちから願い下げだわ」


 もしかしたら、未練があるかも……なんて俺の気遣いは、無用の長物だった模様。

 嫌悪感を剥き出しにした表情で、にべもなくそう言われてしまっては、俺も閉口せざるを得ない。


「ま、気遣いだけはありがたく受け取っておくわ」


 俺が気を遣った事そのものには気付いていたらしく、コロリと表情を変えたエスメラルダに、場の空気が少し和む。


「それでは、元々暗部としての経験があるというお話でしたので、各地の情報を探ってもらうのが主なお仕事になるかと思いますが、問題はありませんか?」


「ええ。任せてちょうだい。各地に散らせた部下には新しく仕える先ができた事、命令は追って下す事を伝えさせているわ」


 具体的な仕事の話に移っていくと、シャルとエスメラルダはお互いにイキイキとした様子で話し始める。

 どうやら馬が合うらしい。


「ちなみにですが、現状ではどこまで情報網を構築しているのでしょうか?」


「この大陸の端から端まで、拠点と人員は行き渡っているわよ。場所によってはあまり深い部分まで入り込めていないけれど、必要とあればどうにかするわ」


「それはすごいですね。場合によっては王家の眼と連携してもらう事を考えていましたが、むしろ変に手を加えない方が良さそうです」


「戦闘に使える人員はそれほど多くはないけれど、諜報の人員は1万人規模よ。これからの予算配分次第で、より綿密な情報を集めてみせるわ」


「初月度からはあまり大きな予算は組めませんが、成果次第で予算を増やしましょう。むしろ、諜報人員を交代で屋敷に戻して戦闘訓練を施した方がいいですね。個々人の能力が上がればより難しい局面でも生き残りやすくなりますし」


「だったら、さっそく順番を組ませるわね。期間はどれくらい必要かしら?」


「習熟速度によりますが、この屋敷の使用人たちはおよそ半年で全員がB級冒険者くらいには上達しましたから、下地があればもっと早いでしょう」


「使用人1人1人がB級冒険者……戦争でもするつもりかしら?」


「いえいえ、自衛のためですよ。エスメラルダさんもご存じの通り、ハイトさんは色々と規格外ですから。何かが起きる前に、自衛手段を整えているに過ぎません」


 何というか、しごでき女子2人が勝手に盛り上がってるなあ。

 楽しそうに語り合っちゃって。


「なあ、止めなくていいのか?」


 盛り上がる2人を見て、ジェーンが呆れた表情を隠しもせずにこちらを見る。


「大丈夫だろ。少なくとも悪い方にはいかないはず……だと思う」


「自信無さげじゃねえか」


「じゃあジェーンはどうにかできるのか?」


「そいつは……無理ってもんだ」


 色々ありましたが、今日の所のリベルヤ子爵家は、何とか平和です。

 ええ、平和ですとも。

 しごでき女子2人が盛り上がる事で、何かしら副産物が生まれそうなのには戦々恐々としてしまうけれど。

 ともかくとして、俺たちはエスメラルダという有能人物を陣営内に迎え入れたのだった。

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