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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり6人目⑦

またまた誤字報告をいただきました。

いつもありがとうございます!

圧倒的感謝です!

血の礫(ブラッド・ルブル)


 女性が左腕を振ると、尖った赤い礫が拡散しながら飛んでくる。

 牽制が主な目的なのだろうが、それにしては礫の殺意が高い。

 逃げ場を奪うように拡散する弾幕を避けるのは不可能と判断し、魔術の防壁を自分の前面に展開してそれを防ぐ。

 赤い礫は防壁にぶつかるとガラスのように砕け散ったので、さほど威力のあるものでは無かったようだ。

 が、俺の足を止めるという意味では、この上ない効力を発揮した。

 俺が防御行動をしている間、本体は完全に自由なわけで、一瞬の間とはいえ、その時間でもって女性がレイピアの間合いに入るには充分。


「血の花を咲かせなさい!」


 距離を詰めた勢いのまま、レイピアが突き込まれる。

 赤く輝くレイピアが、空中に軌跡を描きつつ、俺の心臓を狙ってきたので、その一撃を弾こうと俺は右手のルナスヴェートを握る右手に力を籠めた。

 しかし、刹那の間に何かの直感が自らの身体の動きを変え、突き込まれるレイピアを横に動いて少し大袈裟に躱す。

 直後、突きの一撃を外した女性がレイピアを引き戻し、こちらへと再度距離を詰めに来る。

 そして、先ほどの赤い軌跡が不自然に空中に残っており、それが爆ぜるように赤い光を撒き散らす。

 もしかしてこの女性、○ーグウィン王朝出身のお方ですかね?


「やるじゃない。初見で私の血華(けっか)を躱すなんて」


「あれだけわかりやすく刀身が光ってるんだ。何かあると思うのが普通だろう」


 女性と切り結びつつ、突きと時間差で爆ぜる赤い光の連撃を躱し、いなしていく。

 かなり神経を使うが、どうにかできなくはない。


「本気で来ると言いつつ、まだ俺に攻撃が届いてないな?」


「その余裕がいつまで保つのか、楽しみね!」


 俺の挑発に動じず、女性は次々と連撃を繰り出してくる。

 息も付かせぬ連撃だが、種が割れていればどうという事も無い。

 レイピアの攻撃そのものは武器で弾いて捌けるし、時間差の爆ぜる赤い光は、そもそもレイピアの攻撃があった場所にいなければ当たらないのだ。

 女性の方もどうにか俺を爆ぜる赤い光の当たる位置に追い込もうと動いているが、俺がそれよりも先に安全圏に避けている、といった構図。

 かなり動かされてはいるものの、俺だって日々鍛えている。

 まして、まだ育ち盛りのこの身体だ。

 身体を壊さない程度に留める必要こそあるものの、鍛えれば鍛えるほど大きく成長していく。

 日々の努力が生きている感覚を感じつつも、女性の動きにかなり慣れた俺は、少しずつ反撃の頻度を上げていった。


「どうした? 防戦一方じゃないか」


「あなたが異常なだけよ。ここまでの実力がある子供が、そうそういたらたまったものじゃないわ」


 防戦一方になろうとも、女性の目からは戦意が消えていない。

 まだ、やれる事があるのだろう。


血の爪(ブラッド・ネイル)


 不意に繰り出されたのは、女性の左手による貫手。

 ただの素手なら特にこれといって恐れるものはないのだが、赤く尖った爪が伸びるように俺の身体へと迫る。

 突き出される貫手から伸びる赤い爪の相乗効果で、今までのどの一撃よりも早い。


「っと、今のは意表を突かれたな」


 内心では冷や汗をかきつつも、強引に割り込ませたルナスヴェートで貫手の一撃を逸らし、一度後ろに下がる。

 一撃を振りぬいた女性の左手から、不気味に伸びた赤い爪が霧散するように消えた。

 あの爪は、恐らく魔術か戦技(アーツ)によるものだったのだろう。

 

「……今の一撃でも届かないのね」


 レイピアを構え直しつつ、女性が呟く。

 表情からは先ほどまでの余裕が完全に消え、正しく俺を自分よりも格上だと認めたのだろう。

 とはいえ、今さら遅いのだが。


「なら、正面から貫くわ!」


 再度、俺に向かって突貫してくる女性だが、その勢いは放たれた矢の如く早い。

 大方、勢いを乗せた一撃で何もかもを突破しよう、という魂胆だろう。

 けど、そうして助走を付ける類の攻撃は、得てして攻撃のタイミングというものがある。

 今回で言えば、助走と後ろに引いたレイピアの突き出しが最大限に生かされる場所。

 普通、大技が来るのが見えたのなら、受ける側の人間は身構えてしまうものだが……俺は逆に女性に向けて踏み込んでいた。


血の(ブラッド)……」


「させるかよ」


 今まさに、女性が渾身の一撃をぶつけようとした所に、先に俺の一撃がぶつかる。

 咄嗟にレイピアで防御しようと反応したところはさすがといった所だが、さすがに筋力では俺が勝っているし、ましてやレイピアという受けに向かない得物だ。


「かふっ……っく、まだ……」


「終わりだな」


 俺の一撃を真正面から受け止め損ない、体勢を崩した女性は強かに背中を地面に打ち付け、息を詰まらせながらも起き上がろうとあがく。

 しかし、俺が彼女の右前腕を足で踏み付けて動きを止め、首近くに剣を突き付けると、ピタリとその動きを止めた。

 そのまま起き上がろうとしたら、自ら首を剣に差し出す格好になるからだ。


「……私は、負けたのね」


「そういう事だ」


 彼女が全身の力を抜いて、身体を弛緩させるのを見てから、俺は踏み付けた右前腕こそそのままだが、彼女の首元からは剣を引く。


「殺さないの?」


「万が一、お前の部下が生き残って復讐を狙われるのも面倒だからな。ならいっそ生かしておいて、俺と俺の関係者には手を出せないと身体に刻み込んだ方がいい」


 復讐に狂った人間に狙われるというのは、得てして面倒なものだ。

 何せ理屈が通じなくなる。

 普通なら引くような場所で、引くという選択肢を取らない。

 そういう手合いは自分が相手のどちらかが死ぬまでは止まらないし、最終的には手段も選ばなくなるから、対応がすごく面倒くさい。

 翻って、身体に恐怖を刻み込まれたのなら、その対象からは距離を取るのが人間だ。


「そう。けど、その油断が――」


「命取りになるってか?」


 俺が剣を引き、油断したと思ったのだろう。

 右前腕を踏まれて身体の動きが制限されているにも関わらず、恐るべき身体のバネでもって俺に蹴りを入れようとした。

 その靴先からは刃が飛び出しており、恐らくは毒でも塗られているのだろう。

 しかし、俺はそういった奇襲こそ彼女の得意とする部分だろうと思い、心構えをしていたので、空いていた左手でもって彼女の蹴りを止めている。

 まあ、さすがに靴にまで武器を仕込んでいるとは思わなかったが。

 まさか防がれると思っていなかったのか、女性の目が驚愕で見開かれた。


「……これでも届かないのなら、本当に完敗だわ。もう煮るなり焼くなり、好きにしてちょうだい」


 右手のレイピアも放り出し、今度こそ彼女は全身から力を抜く。

 両目を閉じ、完全に死を受け入れる態勢だ。


「さっき言ったはずだけどな。二度と俺と俺の関係者に手を出さないなら、別に命まで取る気は無い」


 捕まえていた女性の足から手を放し、踏んでいた右前腕から足をどかして、ルナスヴェートを鞘に納める。

 俺が離れても、女性は大の字で地面に倒れたまま、動こうとしない。

 まあ、とりあえずはシャルロットを保護して、そしたら重力の魔術を解除して彼女たちにはお帰り願うとしようか。

 そんな事を考えていたら、不意に人の気配を感じ、背後を振り返る。

 そこには、シャルロットとフリスさんの姿が。


「……来るなって言ったはずだな?」


「ええ。ですが、主様が敵方の気を引けばシャルロットさんを助け出すチャンスはあると思い、参上した次第です。主様が大規模な魔術を使用してくれたおかげで、場所を絞り込めました」


 思わず、舌打ちを漏らす。

 とはいえ、フリスさんの判断が間違っていたとも言えないし、彼女の言葉を信じるのなら、俺を尾行できない状態で虱潰しに王都内を駆け回り、俺の魔術の反応を感知してようやくスラム街に来た事になる。

 それでいて、より確実にシャルロットを救出しようとしてくれたのだ。

 文句など、付けられるはずも無い。


「……主思いの部下を持てて幸せ者だよ、俺は」


「お褒めに預かり光栄です」


 ドヤ顔でもふもふ尻尾をふりふりしているフリスさんをい見ていると、すっかり毒気を抜かれてしまい、つい先ほどまで煮えたぎっていた怒りの感情も、完全に萎んでしまった。


「シャルロット、怪我とかは無いか?」


「ええ、どこにも怪我はありません」


 続いて、シャルロットに声をかければ、彼女は微笑みながら無事をアピールしてくれたので、ホッと心を撫で下ろす。

 とりあえずは、これで後顧の憂いも無くなった事だし、血染めの月(ブラッドムーン)の処理に移りますかね。

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