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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり6人目②

「さて、それでは血染めの月(ブラッドムーン)の対策会議を始めます」


 翌日。

 俺を始めとした主要メンバーを朝から執務室に集め、シャルロットが口火を切った。

 昨日話したので俺は知っているが、それ以外のメンバーは細かい経緯を知らないので、困惑の色が強い。


「シャルロットが素人じゃねえのはわかってるが、さすがに裏の人間相手にお嬢様がどうこうできるもんじゃねえだろ。大人しく避難した方がいいとは思うけどな」


 みんなの意見を代表するように、ジェーンが苦い顔でシャルロットを諭そうとするも、それは俺が昨日失敗したのだ。

 まあ、シャルロットの事がから、こういう話が出るのも織り込み済みだとは思うが。


「別に直接武力を行使する事が戦うという事ではありません。武力を用いずに戦う方法など、いくらでもありますよ」


 まあ、予想通りというかなんというか、シャルロットは澄まし顔で切り返す。


「どうやって?」


 武力を用いずとも戦える、という彼女の言葉に、カナエが問い返した。

 武力一辺倒なカナエにとっては、単純な興味になったのかもしれないな。


「そうですね。私がカナエさんと戦うとしたら、まずはお給料を出しません。あとは屋敷で摂る食事を有料にします。簡単に言えば、カナエさんに食べさせないようにします」


「……それは、困る」


 自分の最もな弱点を突かれたからか、いつも無表情なカナエには珍しく、眉をハの字にして引き下がる。

 確かに、カナエにとって食事を摂れない状況は一番効くだろう。

 その暴力的なフィジカルを支えるのは、日々の膨大な食事量だ。

 実際に、我が家の会計にはカナエ用の食費という予算項目がある程度には、その食費は高い。

 幸い、質より量、というタイプであるため、高級食材じゃなきゃダメ、みたいな事が無いのは幸いではあるのだが。


「それはただの職権乱用じゃねえか」


 給料と補給を抑える、というシャルロットの言に対して、ジェーンがジト目で職権乱用だと訴えれば。


「職権乱用でも何でも、勝てばいいんですよ。いざとなれば私という非戦闘員の首一つで、相手の特大戦力であろうカナエさんを潰せるとしたら、最終的な戦局は大きく変わりますよね?」


 何なら、自分が職権乱用で処断されるとしても、カナエという一大戦力を潰せるのなら安いものだ、という彼女の主張には、俺も少し考えさせられるポイントがあるなと思った。

 そもそもが、血染めの月を武力でもって倒す事しか考えてしなかったのだ。

 確かに、別方面からのアプローチで相手を無力化できるのなら、それに越した事は無い。

 戦闘行為が発生しないという事は、それだけ俺の陣営の損耗が減るという事なのだから。


「ジェーンさんと戦うとしたら、そうですね。まずはカナエさんと同じくお給料を出さないとして、あとはお部屋でこっそり楽しんでいる……」


「よしわかった! お前は立派な戦力だ! 疑うような事を言って悪かった!」


 ジェーンと戦うとしたら、何をするかと話そうとしたシャルロットを大声で遮り、ジェーンが白旗を上げた。

 多分、何かみんなに知られたくない趣味のようなものがあったのだろう。

 まあ、そもそも犯罪行為になるような趣味だったら俺に報告が上がってるだろうから、こっそりと楽しむ分には問題の無い趣味であるとは思われる。

 まさかとは思うが、可愛い人形やぬいぐるみなんかを集めたりしているのだろうか?

 ジェーンはどちらかというと少年じみた趣味の方が好きそうに見えるが……まあ、それは人それぞれだろう。

 逆にそういった少女趣味は自分のキャラじゃない、と思っているからこそ、隠しているのかもしれないし。

 ともあれ、これでシャルロットに反対する勢力は消滅したので、ようやく会議が進むわけなのだが。


「……ええと、もしかして私の部屋の中の様子なんかも知られているのでしょうか?」


 少しだけ青い顔で苦笑いを浮かべたオルフェさんに、シャルロットは無言で微笑んだ。

 あ、これ完全に把握されてるヤツですね。

 オルフェさんがだらだらと冷や汗を流してる。

 どうやら、オルフェさんにも少しばかり人に言えない感じのご趣味がおありのようで。


「主様らしいと言えば主様らしい家臣団ですね。普通はこんなに自由な発言を許されている貴族家はそうないですよ」


 ある意味、平常運転ではあるのだが、そんな俺たちの様子を見て、フリスさんがぽつりと呟く。


「ま、俺がそもそも貴族としては特殊な人間だからな。こればっかりは慣れてもらうしかないな。こういう雰囲気が嫌なら、王城の影に戻ってもいいぞ?」


「嫌だとは言ってないですよ、主様。いけずですねえ」


 前にやられたブラックジョークをここぞとばかりに返してみれば、フリスさんは不満げな表情でこちらを見る。

 そんな彼女の反応に肩を竦め、シャルロットに目線で会議を進めるように促す。


「……さて、話が脱線しましたが、本題に入りましょうか。敵は暗殺者の組織という事ですが、私としては、リベルヤ子爵家の戦力として取り込みたいと考えています。そのためにも、皆さんの知識や意見をお借りできればと」


 コホン、と咳払いをしてから、シャルロットが話題を本筋に戻すと、血染めの月を取り込みたい理由、取り込んだ際の運用やメリット、といった点をあれこれと話していく。

 要するに、裏で動ける人員が大量に用意できれば、各地に中継拠点を裏で用意し、俺たちが各地に飛んだ際の補給であったりとか、事前調査などの活動、世界情勢の調査など、多岐に渡る活躍が期待できるというわけだ。

 

「先に調査の人員を送り込んで来るであろう、というシャルロットさんの意見は間違い無いと思います。経験上、その調査の人員の送り込み方で相手の組織の実力が知れるでしょうね」


 主要メンバーの中では、一番裏の事情に詳しいであろうフリスさんが、シャルロットの立案を支持した。

 その上で予想される調査人員の送り込み方をあれこれと話し、そのまま対策なども固めていく。


「不意を突かれる事になれば脆い点はありますが、この屋敷の使用人たちなら、複数人でかかれば血染めの月の一般暗殺者は簡単に無力化できるでしょうし、可能な限り殺さずに捕らえるというのは問題無く実行できるでしょう。正直な話、ここに来た当初は驚いたんです。一般使用人が最低でもB級冒険者程度の実力を持っていて、幹部級はシャルロットさんを除いて最低でもA級冒険者下位以上の実力者ばかり。カナエさんに至っては戦闘力のみならS級を凌駕しています。本当に、この貴族家単体で近衛騎士団の大隊くらいまでなら互角に戦えるんじゃないかと思います」


 は?

 一般使用人たちがB級冒険者相当?

 確かに使用人は戦えるように鍛えておいてくれと頼みはしたけど、兵士じゃないんだからそこまでゴリゴリに鍛えなくても良かったのよ?

 せいぜいそれなりに自衛できる程度で充分だったのよ?

 そんな視線をカナエとジェーンに向けてみれば。


「弱いよりは強い方がいいだろ」


「頑張った」


 心なしかちょっとドヤってる雰囲気のカナエと、やれるならとことんやるに決まってるだろ、という反応のジェーンを見て、俺は天を仰いだ。

 使用人の皆さん、俺の指示が適当だったせいで、地獄を味わっただろう。

 本当に、申し訳ない。


「……シャルロット、使用人になって辞めたのは何人だ?」


 思わず、聞かずにはいられなかった。

 素人がB級冒険者並みに強くなるというのは、そう簡単な話じゃない。

 そこらの兵士の訓練よか相当に厳しい訓練だったはずだ。

 ましてや、リベルヤ貴族家として発足してからまだ半年も経っていないのに、その使用人が全員、最低でもB級冒険者クラスだという。

 どこの修羅の世界だよという話である。


「辞めたのは数人ですね。全員が貴族家採用枠です。一般採用枠と奴隷採用枠は全員が在籍しています」


 あれ、割と残ってる。

 まあ、貴族家採用枠が辞めたというのはわかるな。

 こんな激務を貴族家の者がやってられるかー、みたいな所だろう。

 しかし数人しか辞めていないというのは、少々どころかかなり意外だった。


「個人戦力が上がれば、お給金もその分上乗せしています。多分、どの貴族家と比べても、何なら王城勤めと比べても相当にお給金は高いですからね。環境に見合うだけの仕事だと誰もが思っていますよ」


 あ、なるほど。

 単純にシャルロットの采配が良かっただけか。

 見合った給料を出してるから、みんな辞めないのね。

 うーん、完全に財布の紐を彼女が握ってるわけだが、ますます頭が上がらないなあ……。

 これ、もはやリベルヤ子爵家の真の当主はシャルロットでいいんじゃなかろうか。

 そんな事を考えながらも、俺は血染めの月取り込み作戦の会議に参加するのだった。

シャルロットの仕事をぶりを現代風に表すなら、社員規模100人クラスの会社の人事、事務、会計、専務を全部1人で回してる状態です。

ハイトは社長で方向性だけ決めて、あとは家臣団ほとんどはシャルロットが回してるわけですね。

うーん、我ながら彼女の仕事ぶりが化け物すぎる。

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