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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり5人目㉑

「さて……王都に戻ったわけだが、随分と久しぶりに感じるな」


 馬車に揺られながらリアムルド王国に帰り着き、王都フルードレンへと入った。

 ひとまずは安心していいか、と最高レベルの緊張状態を解く。

 かなり警戒はしていたものの、血染めの月(ブラッドムーン)による襲撃はついぞ起こらなかったのだ。

 帰り道はそれなりに急いできたし、単に追い付かれなかっただけという可能性も多いにあるが。


「俺はこれから王城に報告に行く。カナエとジェーンは屋敷に先に戻っててくれ。大丈夫だと思うが、血染めの月に対する防備を先に固めてもらいたいんだ。俺の護衛は一旦フリスさんに任せる。王城で報告が終わったら、なるべくすぐに戻る」


「りょーかい。フリス、このバカ当主が無茶しないように見張っといてくれよ?」


「うっせー。そっちこそ屋敷のみんなを頼むぞ?」


 俺が指示を出して馬車から降りると、ジェーンが冗談交じりに混ぜっ返してきたので、ジェーンにそっくりそのまま返しておく。

 先にカナエとジェーンの2人を戻すのは、シャルロットを始めとする非戦闘員を保護する意味合いが強い。

 完全に非戦闘員なのはシャルロットくらいのものだが、いかに訓練で鍛えられていようとも、精神的に戦う事に向かない人間もやはりいるので、彼らを優先して狙われて人質に取られたりする事は避けたいのだ。

 相手が相手だけに、その辺りの搦め手なんかも注意が必要だし、ましてや凄腕の暗殺者集団なのだから、警戒をしすぎるという事は無いはず。

 むしろ、思考の穴を突かれる可能性もあるので、ありとあらゆる可能性を考慮しておかねばならない。

 情報さえあればシャルロットも有用な意見をくれるかもしれないが、相手の手札も情報も、あまり量は多くないので、不明点は想像で補うしかないのだ。

 軽く打ち合わせををしてから、カナエたちと別れた俺とフリスさんは、そのまま王城へと向かう。

 今回は先触れを出す人員の余裕が無いので、直接門番に取り次ぎを依頼する形となったが、さすがに子爵に昇爵したおかげもあってか、門番から側妃様への取り次ぎは快く引き受けて貰えた。

 とはいえ、事前に申請をしていなかったので、それなりに待つ時間はありそうかなと考えていたら、思いの他すんなりと面会の手筈が整う。

 多分、10分くらいで王城内に入るように言われたと思われる。


「ただいま教国より戻りました。諸事情により、先触れを出す余裕が無かったので、直接の訪問になった事をお詫びします」


「問題ありませんわ。それよりも、時間は有限ですし、話を進めましょう」


 陛下の代わりに執務室で政務を務める側妃様に、教国での事のあらましを説明。

 政務に携わる文官の応援が必要な事、教国がある程度落ち着いた状況になるまで陛下が離れられない事、俺が血染めの月という暗殺組織に狙われている可能性があるため、先に戻って来る役に抜擢された事などを報告すると、側妃様は大きな溜息を吐く。


「……事情は把握しましたわ。まずはご苦労様でした。そして、血染めの月という組織については、こちらでも少し探りを入れてみましょう」


 教国の現状について、側妃様はあからさまに表情を歪めたが、意外な事に血染めの月についての調査を名乗り出てくれた。

 さすがに側妃様が直接探るわけではないだろうが、相手が相手だけに危険すぎる。


「私たちでどうにかしますので、側妃様は政務に注力して頂ければ、と」


「別に本格的な調査をしようというわけではありませんから、心配は入りませんわ。ちょうど1人2人の人員が浮いていましたから、片手間に調べさせる程度です。それに、戦うにはまず敵を知る事から、でしょう?」


 確かに、俺の知る血染めの月の情報はかなり少ない。

 今の俺の力で得られるであろう情報は殆ど存在しないだろう。

 それが、国内だけでも相当な情報網を持つ、側妃様が率いる眼の情報力があれば、何かしらの成果も期待できるかも。

 だが、相手は名うての暗殺者集団だ。

 極端な話、調査の手を出した途端に殺される可能性すらある。

 さすがにそれは俺としては申し訳なさすぎるんだよな。

 無論、かなりの情報を扱うような組織だろうから、命の危険も多い事だろう。

 また、側妃様がそうであるように、眼の構成員たちも普通以上に戦える訓練はされているはず。

 それでも、そういった特殊な機関の人員は補充が効きにくい。

 わざわざ俺が絡まれるかもしれない、という理由で国内有数の情報機関の貴重な人材を消耗させるのは気が進まないのだ。

 しかし、俺のそんな心情を聞いてなお、側妃様は気にするなと言う。


「それに、わたくしたちの組織は常に危険を隣り合わせですわ。それは無論、わたくし自身も。何の情報を調べるにも、それが機密に近いものであればあるほど命の危険は高まるものですわ。つまり、有名な暗殺者を調べる事も、他国の機密を調べる事も、その危険にそれほどの差はありませんわ」


「……ありがとうございます。ですが、決して無理はなさらないで下さいね」


 側妃様の決意が固いと知り、素直にその提案に頭を下げる事にした。

 まあ、もしかしたら最終的に国のためになる可能性もあるから、少し調べてみよう、程度かもしれないし、あまり過度に遠慮するのも失礼に当たるだろう。


「ええ。あなたも、自分の事を第一に、必ず生き延びるように。娘の嫁ぎ先がなくなってしまいますわ」


「はは、そっちはお手柔らかにお願いしたいですね」


 娘の事に関してはブレないなー、という感想と共に、報告を終えた俺は、王城を辞して屋敷へと戻るのだった。

今回でワケあり5人目は終了となります。

次回はワケあり6人目となるわけですが、次回は多分国外には行きません。

あくまで今の所は、ですが……(目逸らし)

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