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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり5人目⑫

いつも誤字報告ありがとうございます……!

作者も気付き次第で直してはいますが、見落としが多い……。


感想で家令に老練の戦鬼はどうかという感想があって、そういう解釈もあるんだなあと、とても新鮮な気分でした。

作者的にもお気に入りのおじいちゃんなので、多分これからも所々で出番はあると思います。

「さて、大国の方々も、小国の代表の方も、よくぞいらっしゃった。この度は会議にこの教国を選んで頂けた事、誠に嬉しく思う」


 一番の上座で、立ち上って挨拶をしているのは、現教皇であるドラグエレスⅧ世。

 ダルダルの贅肉で動きにくそうな体ではあるが、声や息遣いはしっかりと芯が通っていて、不思議と耳に良く届く。

 会場となる場所は、質素ながら荘厳な雰囲気のある飾り付けで、調度品も所々に十字架などがあって宗教感を強めてはいるものの、それほど強烈に意識させるほどでもない、絶妙なものだ。

 恐らくは、長く続く竜然教の歴史の中で生み出されたものなのだろうけど、挨拶の口上を述べる教皇本人が贅肉と無駄に豪華な宝石のアクセサリと、無駄に豪華な神官服で着飾っているのがミスマッチすぎる。

 とはいえ、まだ会議の場でもないのに相手を刺激する意味も無いので、そんな感想は飲み込みつつ、貴族の皮をしっかりと被っておく。

 会場の出入口付近ではクスティデル近衛騎士団長を始め、各国のお偉いさんの護衛がそれぞれ警備に当たっている。

 衣装や種族なんかでおおよその所属に見当は付くが、その誰もが実力者であり、半端な暗殺などは絶対に成功しないと思える、そんな布陣だった。


「――此度は遠路はるばる我が国へと集まって下さった皆様方に、心ばかりの歓待をしたいと思う。それでは、乾杯」


 教皇の挨拶には興味が無かったので、話を聞き流していたが、ようやく乾杯の号令がかかったので、各々が用意されたグラスを上に掲げ、厳かに乾杯の復唱をし、グラスの中身を一息に煽る。

 大人は赤ワイン、俺は未成年なので果実水を用意されていたのだが、事前に鑑定で毒などを盛られていない事は確認済み(陛下たちにも共有した)なので、そのまま口を付けた。

 果実の強い風味が、スッと喉奥に消えていく。

 柑橘っぽいスッキリとした味で、甘さは控えめだが酸味もキツくない、飲みやすい味だ。


「次のお飲み物です」


 この場の招待者1人1人に、給仕のシスターが付いており、乾杯で飲み干したグラスを手早く下げると、すぐにおかわりを出してくれる。

 貴族らしい、至れり尽くせりなスタイルだが、俺はやはり慣れない。

 うちの屋敷でも使用人の仕事だからという事で、給仕されるのだが、根が小市民なので落ち着かないのだ。

 ちなみに、各人に付いているシスターは中年から少女まで、様々だ。

 俺に付いているシスターは、妙齢のお姉さんっぽい雰囲気のシスターで、どこか底知れなさのようなものを感じる気がする。


「こちら、前菜でございます」


 鑑定してみようか、なんて考えたタイミングで、さっそく料理が運ばれてきた。

 コース料理らしく、提供されたのは前菜だ。

 野菜が中心で、雰囲気としてはフレンチとかそっち系の料理だろうか。

 あまり各国の食事情なんかに詳しいわけでもないのだが、鑑定をしても料理に異常は無かったので、特に行動を起こす事も無く、カトラリーを使って黙々と食事を進めていく。

 ちなみに、毒入りなどの変なものが出てきたらワザとカトラリーを落として合図を出す事になっている。


「わたくしに何か?」


「いえ、お若いのにこういう場にいるのはすごいなと」


 給仕をしてくれる俺付きのシスターを、思わずジッと見てしまい、問いかけられてしまったので、国賓を接待する場にいる使用人は、大概がベテラン中のベテランが付くものなのに、若くてすごいね、という意味で答えておく。

 見た目は人間だと思うのだが、もしかすると人間でない種族で若く見えても、かなり年上だったりするのかもしれないし、その辺は鑑定でもすればハッキリするのだろう。

 けれど、妙齢のシスターに言い知れぬ何かを感じるので、鑑定するためにジッと見るのはやめておこうと気を取り直す。


「お褒めに預かり光栄でございます」


 俺への給仕の手を止めずに、妙齢のシスターは微笑む。

 年齢以上の妖艶さすら感じる気がするが、とりあえずは意識の外へと彼女の存在を追いやる。

 今は会議に向けた情報収集を徹底すべきだろう。


「ところで、その腰に佩いている剣は、随分な業物ですね?」


 給仕の際のすれ違い様。

 妙齢のシスターの口元と、俺の耳が一番近くなる瞬間、周囲には聞こえない程度の声量で呟かれた一言。

 全身に緊張が走る。

 このシスター、俺の迷彩魔術を見破った?

 落ち着け。

 動揺を悟られるな。

 取り乱したら相手の思うツボだ。


「すみません、飲み物のおかわりを」


「あら、すぐに気付かず、これは失礼致しました」


 残り一口だった果実水を一息に煽り、妙齢のシスターに空のグラスを押し付けると、彼女は軽く頭を下げ、すぐに果実水のおかわりを用意してくれた。

 が、多分、俺が一気に警戒したのを悟ったのだろう。

 グラスをテーブルに置く時の手つきが、先ほどと少し違う。

 ただ、これで確信した。

 このシスター、只者じゃない。

 疑わしく見えれば、その動きの芯にも目がいくもので。

 彼女の身のこなしは、相当な実力者のそれだ。

 それも、フリスさんと同系統の、暗殺に大きく寄った系統の。


「こちら、メインディッシュでございます」


 料理が進み、メインとなる肉料理が提供された瞬間に、彼女に怪しまれない程度の僅かな時間、鑑定をかけた。

 

―――――――――


○ス○○○○・◇◇◇ド◇ー◇

△△△歳

種族:吸血鬼

身長:170センチ

体重:●●キロ

状態:健康

生命力:☐☐

精神力:☐☐

持久力:☐☐

体力:☐☐

筋力:☐☐

技術:☐☐

信念:☐☐

魔力:☐☐

神秘:☐☐

運:☐☐


特殊技能

・血魔術

・暗殺術

・〇〇〇〇

・武器熟練:刺剣・投擲物・仕込み武器

・誘惑の魔眼

・〇〇〇〇

・〇〇〇〇

・〇〇〇

・〇〇〇〇

―――――――――


 情報の殆どは読み取れなかったが、彼女の種族と技能の一部、名前の断片を確認する事ができたわけだが……。

 彼女、相当に強いな。

 穴空きばかりではあるが、まずステータス数値に1桁のものが無かった。

 一部の数字も見えれば良かったのだが、2桁が確定しているという事は、極端な話、全ステータスが99という化け物である可能性もあり得るわけで。

 まず滅多にあり得ないとは思うものの、最悪の場合はそこまで視野に入れておくべきだろう。

 あとは特殊技能がかなり多いし、見えてるだけでもヤバいものばかりだ。

 とはいえ、かなり重要な情報を得る事はできた。

 この情報アドバンテージはかなり大きい。

 とはいえ、今はこの情報を陛下たちに伝える手段が無いな。

 この場では無理でも、会食が終わった後には絶対に伝えないといけないぞ。

 最悪、彼女が暗殺に来た場合、俺の手持ち戦力を全部ぶつけたとしても、どうにかなるか怪しい疑惑がある。

 フリスさんが気付いていればいいが……クソ、情報共有できなのがもどかしいな。


「さて、拙僧は明日の支度もあるので早めに失礼する。この場は開放しておくゆえ、ごゆるりと歓談されるがよかろう。何かあればこの場のシスターたちに申し付ければ対応させていただく。では、また明日の会議で会おう」


 俺が教国に来て一番の緊張に呑まれていると、教皇がその贅肉を揺らしながら歓待の場を辞した。

 まずい、この場で仕掛けられたら戦力が俺と各国の護衛しかいない。

 守り切れるか……!?

 俺の中で緊張が最高潮の中の最高潮に高まっていく。

 ここから他人の一挙手一投足に気が抜けない。

 もしかすると、あの妙齢のシスターの仲間が紛れているかもしれないし、何か会場内に仕掛けがあるかもしれない。

 何かがあっても、即応できるよう、俺は体内の魔力を巡らせ、練り上げるのだった。

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