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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり5人目⑪

「起きろー。そろそろ時間だぞー」


 ジェーンのハスキーな声で起こされ、沈んでいた意識が急浮上する。

 思った以上に疲れていたのだろう。

 ベッドで横になった瞬間、意識を飛ばしてから起こされるまで、敵地のド真ん中だというのに、完全に熟睡していた。

 本来なら警戒してないのがあり得ないのだが、やはり14の身体では大人ほどの無茶は効かないか。


「ああ……今起きる……」


 瞼こそ重たいものの、いくらか寝た事により、思考はスッキリしていたし、回復そのものが早いのは、やはり若い身体だからこそ。

 精神年齢が完全に中年だからか、考え方もそっちに寄ってしまっているな。


「詳しい事を聞いてからになるけど、多分一緒に会場に行けるのは1人か2人だと思う」


 頑張って重たい瞼を持ち上げる努力をしつつ、身体を上に伸ばす。

 伸びをした事により少し眠気が飛び、ようやく目を開けられるようになったので、魔術も駆使して身支度を整えつつ、ベッドから重い腰を上げる。


「ま、護衛となりゃカナエが適任だろうな。今はオルフェと一緒に寝てるが」


「ジェーンも休める時に休めよ。マジで何が起こるかわからないからな」


「ま、ぼちぼち様子見ながらな」


 ひらひらと手を降って俺を送り出すジェーンを見れば、うっすらと目の下に隈があった。

 他のみんなも似たようなものだっただろうが、俺はもっと酷い顔をしていただろう。

 何せ寝るにしても、警戒の魔術を維持するのに気を張りっぱなしだったし、襲撃も多かったから、何だかんだでロクに熟睡していなかったし。

 ああ、1人だけ元気そうだったのはフリスさんだな。

 本人曰く、特殊な訓練を受けているからとの事だったが。

 まあ、影という特殊部隊出身だからあながち間違いじゃないのか。

 横道に逸れた思考を振り払い、俺は再び陛下の部屋へ。

 ノックをして中に入れば、俺が休憩している間に時間やら警備体制やらの話は終わっていたようで、基本的にはクスティデル近衛騎士団長が護衛に付き、俺自身は貴族側としての参加になるらしい。

 

「会食の場ゆえに、お前の手勢は連れて行けぬ。申し訳ないがな」


「しょうがないですね。そもそも、部下の分は会食の場に出せる服装も用意してないですし」


 よく考えてみれば確かに、という話だ。

 俺自身は貴族だからそういう場に使うための服は用意しているが、そういう場にカナエやらジェーンやらが立つ、という事を考慮していなかった。

 いかんせん、言動や立ち振る舞いからして、フォーマルな場には連れて行く事を考慮していなかったというか。

 かろうじて連れて行けそうなのは、現状だとオルフェさんとフリスさんくらいだろう。

 とはいえ、見た目の関係でフリスさんは好奇の目で見られそうだし、そもそも本人が影だから隠れた方が都合がいい。

 そうなると消去法でオルフェさんになるが、ある程度言葉遣いは丁寧とはいえ、育ちが貧民街な彼女には荷が重いだろう。

 つまり、全滅である。

 あとはうちでそういう場に向いている、というか問題無く立ち振る舞えるのはシャルロットくらいしかいないわけで。

 ただ、非戦闘員な彼女を連れ歩くわけにもいかないので、現実問題として不可能。

 まあ、次に探す人材の優先度がわかったと思う事にしておこうか。


「クスティデル近衛騎士団長、お手数ですがよろしくお願いします」


「任せておけ。いざという時には、君の魔術もアテにさせてもらう事になるが、まずはそうならないよう努めよう」


 席に座る順番なども打ち合わせし、会食用の服装に着替えたりの準備のため、再度解散となり、30分後に集合と相成ったので、俺は着替えのために部屋へ戻った。


「あっ、お疲れ様です。ジェーンさんは先ほど仮眠に入られました」


「そっか。俺はこれから着替えて会食に出る事になった。俺以外は行けない事になったから、交代で休んでてくれ。一応、何かあったら打ち合わせ通り、合図を出すからその時は頼んだ。他のみんなにも伝えておいてくれ。まあ、フリスさんはどっかで聞いてそうだけど」


 オルフェさんに連絡事項を伝えつつ、俺はそのまま着替え始める。

 女性の着替えに比べれば楽なものだが、貴族らしい服となると、ボタンが多かったり着方が面倒だったりと、相応に時間がかかるな。

 本来なら、こういう場にメイドとか使用人を連れて来て、手伝わせるのが貴族としては普通なんだけど、今回に関しては俺の立場が色々と特殊なのと、まだ側仕えの育成まで手が回っていない現状が大きい。

 屋敷を回すだけなら、陛下から借りた人員がいなくても回るようになったから、その辺はだいぶ楽になったのだけども。


「……あ、すまない。一言伝えておくべきだったな」


 物思いに耽りながら着替えていたせいで、オルフェさんが同じ部屋にいる事も気にせずに着替えてしまっていた。

 着替え終えてから気付いたのだが、その時には真っ赤な顔で俯くオルフェさんを見た後だったので、完全に後の祭りである。

 うーん、細かい所の気遣いができてない辺り、本調子じゃないな。

 さっきの仮眠でだいぶマシにはなったと思うけども。


「あ、いえ、その、大変ご立派なお身体だったかと……~ッ!!」


 そんなワケのわからない発言をしてから、オルフェさんは自分の失言に気付いたのか、首まで真っ赤にして背中を向けてしまった。

 いやまあ、冒険者として活動してたりしたし、幼い頃から剣術と魔術を両立するために鍛えてたから、一般的な14歳と比べたら、割と細マッチョ寄りではあるけども。

 とはいえ、まだ腹筋が割れるほどじゃないし、せいぜいがうっすら筋肉の線が見えるくらいだ。

 ムキムキマッチョマンになりたいわけではないが、最低限見られても恥ずかしくない程度の肉体は保ちたい所だな。

 と、いかんいかん。

 今日は思考が横に逸れがちだ。

 これから貴族として会食の場に臨むのだから、もっとシャキッとしないと。


「よし、こんなもんか。それじゃ、行ってくる。あとは任せた」


「はい、行ってらっしゃいませ」


 馬車に関しては待機中の近衛騎士団に預けてあるし、装備に関しても同じくだ。

 俺は魔術を使う関係でルナスヴェートだけは持ってきているが、他のみんなは武器を持ち込んでいない。

 隠し持っているのは俺とフリスさんくらいだろう(そもそもフリスさんに関しては正規の入場じゃなくて忍び込んでる)。

 ルナスヴェートには迷彩の魔術をかけて目に見えなくしているので、よほどガッチリとした魔術感知ができる人か施設でもない限りは気付かれないはず。

 そんなわけで、備えも万全な事を確認し、オルフェさんに声をかけてから集合場所である陛下の部屋の前に向かう。

 サクッと支度を終えたからか、そこにいたのは騎士として側に控えるため、ほとんど着替えの必要が無かったクスティデル近衛騎士団長だけだった。

 

「早いな」


「一番の若輩者が皆さんをお待たせするわけにはいかないでしょう」


「それもそうだ」


 元々顔見知りなのもあって、お互いに軽口を叩いていると、部屋から陛下が出てくる。

 いつにも増して、国王として目立つ衣装だ。

 正直、集団の中にいたら狙って下さいと言っているようなものだが、公式な会食の場ゆえに、国王としてそれ相応の格式が求められるから、致し方ないのだが、根が日本人な俺としては、動きにくそうな服装だな、という感想しか出てこない。

 それから程なくして、レマイア侯爵とメンディ伯爵も自分の部屋から姿を現したので、俺たちは揃って会食会場へと向かうのだった。

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