幕間 ワケあり5.1人目
幕間なのでかなり短めです。
ハイトが休憩している間の補足になりますね。
「……ハイトのやつ、なかなかに酷い顔であったな」
ウィズリアル国王の指示に従い、ハイトが退出した後の室内には、何とも言えない空気がたちこめていた。
この部屋にいる誰もがハイトの頑張りを、その成果を知っているからこそ、自分たち大人の不甲斐なさを切に感じているのだ。
「あれだけひっきりなしに野盗の襲撃があり、それをほとんど手勢だけで処理していたのです。まだ身体も出来上がっていない14の子供には堪えましょう。教国内に入ってから襲撃が20回もあり、この1週間は纏まった睡眠時間も取れていないでしょうし」
襲撃の状況をハイト以外に一番理解しているクスティデル近衛騎士団長が、つぶさにどれだけの襲撃があったのかを語れば、その後は誰も口を開こうとしなかった。
「……14の子供に頼らねばならない国の、なんとみすぼらしい事か。国軍から護衛を動員できれば、リベルヤ子爵にここまでの負担を強いる事も無かったのだが」
沈黙を破ったのは、レマイア侯爵。
今、国の直面している状況を国王の次に理解している彼の言う事は、この場にいる全員が知るものでもある。
タイラン侯爵派とアーミル侯爵派で軍が真っ二つに割れてしまい、現状はその再編に手間を取られている状況だ。
現状は指揮系統ごとに違う任に当たらせる事で、直接的な衝突は防いでいるものの、このままでは内乱に発展するのも時間の問題。
そんな自国の状態でも、トラブルは容赦無く降りかかってくる。
今回の教国の件がそれだ。
「ただの戦争好きの無能なら、即座に立場を奪えば済むのだがな。あれで部下の人心掌握が上手いから質が悪い」
「領地運営も堅実で不正もしねえし、しょっ引く理由もねえからな。戦争好き以外は有能なだけに扱いに困る」
期せずして始まった、ウィズリアル国王とレマイア侯爵の自国問題の愚痴に、クスティデル近衛騎士団長とメンディ伯爵は苦笑いを浮かべてしまう。
この場の誰もがそう思っているのだが、この場で愚痴を零した所で解決するわけでもない。
「この場で言っても詮無き事か。そうさな。せめて会議中くらいは、ハイトに負担がかからぬようにしてやらねば」
「それが俺たちの、とりあえずの仕事だわな。グレゴリオも負けんじゃねえぞ」
「ええ。むしろあれだけの証拠があるのだもの。負けたら末代までの恥だわ」
今は休憩に入っているハイトに少しは楽をさせてやろう、という意思で統一された大人たちは、今一度気合を入れ直してこれからの事に関する話し合いを始めるのだった。




