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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり5人目⑧

外交部長官と外務部長官で表記がぶれていたので、過去分も含めて外務部長官に統一しました。

「さて、お前を呼んだのは教国における前回の経験を借りたいのと、あとはこやつらとの顔合わせだ」


 キョトン顔の俺を見て、ひとしきり笑った陛下は、本題の方に入ってくれた。

 まあ、こうして身内ノリなのを見ればわかる通り、陛下が彼らに信を置いているというのはよーくわかったけれども。


「改めて自己紹介といくか。俺はジャン・レマイア。爵位は侯爵。知っての通り、宰相を務めている。昔はガラじゃねえと思ってたんだが、なんだかんだウィズとつるんでるうちに慣れちまった」


 陛下の事を愛称で呼んでる辺り、相当に長い付き合いなのだろう。

 学校で同じクラスだったとか、幼馴染みたいなものだろうか。


「本当に見事な切替よな。普段の宰相としての顔はどこにいったのかといつも思うぞ」


「あっちは嫌味っぽい貴族の皮を被ってるだけだからな。宰相なんて、細かい所を突いて嫌われるくらいでちょうどいいんだよ。そのおかげでお前の支持も悪くねえだろ?」


 適度に砕けた陛下と宰相のやり取りは、実に堂に入ったもので、長くお互いに国の中枢を運営していたのが見て取れる。

 宰相という事は、事務仕事も得意なのだろうし、レマイア侯爵はどうも本来の性格と役職にギャップがあるな。

 いやまあ、これで実はゴリゴリの武闘派ですって言われても驚かんけどさ。


「次は私ね。外務部長官を担当しているグレゴリオ・メンディよ。爵位は伯爵で、家系が女ばかりの所で育ったし、気付いたら女言葉が一番しっくりくるようになってたの。あ、でも勘違いしないでね。私、同性愛者じゃないから」


 女言葉の外務部長官、メンディ伯爵は女言葉なだけの男性、という事らしい。

 ちゃんと髭もあるし、どっからどう見ても男だし、声も男なのに言葉遣いだけ変なのが最高に脳みそをバグらせてくるなあ。

 女系家族で育ったにしても、言葉遣いまで女っぽくなるだろうか?


「俺もこいつを最初見た時は驚いたが、言葉遣いが女な事以外は普通に男だからな。何なら普通に嫁さんもいるぞ。嫁さんは嫁さんで男みてえな言葉遣いだけどな」


 レマイア侯爵からの補足に、俺は大いに驚く。

 結婚していて、嫁さんは反対に男みたいな言葉遣いをするとか、外見に反してギャップありすぎだろ。


「ええと、改めまして、ハイト・リベルヤです。最近子爵になりました」


 戸惑いを隠せぬまま、とりあえず自己紹介をし合うと、俺が面食らっているのが相当に面白かったのか、陛下がまた吹き出している。

 くっそ、陛下じゃなかったらぶん殴りてえ。


「元はダレイス公爵家の人間だろ? よくあの親父に似なかったな」


「昔からあの家を出たかったですから。最初は冒険者として、貴族の地位は完全に捨て去るつもりだったんですけど、気付いたらこうして貴族になってました」


「色々と経歴も陛下から見せていただいたけれど、本当に異色の経歴よね。それでいて、こうして会ってみれば、本人は至って普通というか」


 色々な経験とかで年齢の割に賢しい自信はあるが、それ以外は至って普通の少年だぞ俺は。

 あんたらみたいなクセ強と一緒にしないでいただきたい。


「さて、交流も温まった所で、本題に戻るとするか。ハイトよ、現時点で教国に入ったら時に予測される危険は?」


 今まで黙って様子を見ていた(合間に笑ったりしていたが)陛下が、脇道に逸れていた話題を本筋に引き戻したので、俺を含めて全員が表情を真面目なものへと変えた。

 3人からの視線を受けて、俺は現在予測しているものを話していく。


「そうですね……まずは野盗や山賊に見せかけた襲撃はまず間違いなくあるでしょうか。というか、現状の教国ではそれで物資や資金を巻き上げているのが常態化している節さえあります」


「報告書にもそうあったな。仮にも竜然教の総本山を名乗るなら、もっと慎ましく国を運営しやがれってんだ」


「ここで文句を言ってもしょうがないわ。リベルヤ子爵、続きを」


 俺の最初の予測を聞いて、疎ましそうに顔をしかめるレマイア侯爵に、それを宥めるメンディ伯爵。

 陛下が特に遮らないので、俺は伯爵の言葉に従って続きを話す。


「あとは直接暗殺者を派遣してくる可能性があるでしょうか。あるいは、そのための威力偵察等か。あとは当然、宿や歓待の場での毒殺、襲撃。それ以外だと例の地下施設の研究成果による何かしらの襲撃。正直な話、考えうる危険はいくらでもあります」


「こうして直接の話を聞くと、今の教国がどれだけ酷いかがよくわかる。それでいて、一般の民はそれを知らない。ある意味、宗教国家らしく洗脳しているようなものか。民たちは、普段の自分たちの食料などが、略奪された物だと知ったらどう思うであろうな」


 ある意味、マッチポンプでもある。

 本物の野盗や山賊もいるのだろうが、大半は国軍がそう見せているだけのものを、堂々と国軍が制圧、しっかりと治安を維持しているように見せかけ、一般民を安心させて信頼を得ていく。

 本来なら略奪で奪ったはずの資材を、恵みと称して流通させる。

 そんな倫理に悖る行為を平然とやってのける辺り、教皇は相当あくどい。

 いや、規模からいって教皇に限らず、教国の上層部はみんな真っ黒だろう。

 前回のフリスさんの調査でも相当の上位神官が罪を犯している。

 正常な者など、いるはずもない。


「……やっぱ最大限の警戒が必要だわな。報告でわかっちゃいたが、宿ですら気を休められそうにねえ」


「同感ね。いっそ野宿の方がマシかしら」


「国を代表して出張っておるのだ。そういうわけにもいくまい」


「どうにか教国にいる間は、常に気を張るしかないでしょう。ずっと気が休まらないのは辛いでしょうが」


 というか、俺たちよりも近衛兵の皆さんが一番大変かな。

 常に襲撃などのトラブルに気を張ってないといけないし、ゆっくり休む余裕もほとんど無いし。

 それもトラブルの頻度がバカみたいに高いとなれば、本当に大変だと思う。

 近衛騎士団の皆さんには、この教国出張が終わったらゆっくり休んで頂きたいものだ。


「現状のすり合わせはこんなものか。これから教国に入るが、各々警戒を緩めないようにな。ハイトも足を運ばせて悪かった。引き続きになるが、頼りにしておるぞ」


 馬車内が何とも言えない空気になった所で、陛下から解散の声がかかった。

 なんだか別な意味で精神的に疲れたような感覚だが、気持ちを切り替えて最大限の警戒をしよう。

 これから欠片も油断できない場所へと踏み込むのだし。

 そんな意思でもって、俺は陛下たちの乗る馬車を後にするのだった。

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