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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり4人目㉔

「……ハイトのやつは、また倒れたのか。全く、無茶をせずに解決できんのか」


 急ぎ足でリアムルド王国に戻り、そのまま王城に馬車ごと駆け込んだのは、出発してからおよそ1週間後。

 事情を知った陛下はすぐに諸々の手配をして下さったので、ひとまずは安心といった所でしょう。

 あれからリベルヤ男爵は症状が悪化する事も無く、意識こそ失ったままだったものの、症状としては軽い貧血くらいの状況を維持できていましたし、大事には至らないと思いますが……心配ですね。

 私以外の3人は、リベルヤ男爵に付くという事で、今は別れて私だけが報告に向かった、という状況です。


「リベルヤ男爵が無茶をしたのは私のせいでございます。罰するなら私を」


 リベルヤ男爵が倒れた事について呆れている陛下に向けて、私は必死に頭を下げる。

 これで彼の評価が下がる事など、あってはならないですからね。

 被れる泥なら、私が被りましょう。


「罰するつもりなどない。何だかんだと、あやつは必要の無い無茶はせんからな。ただ、毎回何かしらの理由で倒れておると思っただけよ」


「先に持ち帰った情報を聞きましょう。後で男爵にも事情は聞くとして、今回はあなたが中心になって情報収集を行ったのでしょう?」


 陛下の反応はさておいて、師匠は冷たい目線で私を見ていました。

 当然ですね。

 身代わりになって自分が危険な目に遭う事はあれど、守るべき相手を危険に晒すなど、影として恥晒しもいいところですし。

 今回は私が引き時を見誤ったせいで、危うくリベルヤ男爵を殺しかけたのですから。


「後で処罰はいかようにも。まずは情報と証拠を」


 大聖堂の地下施設で入手した色々ととんでもない情報から、枢機卿辺りの地位にいる聖職者たちの汚職の証拠の数々。

 それらを提出し、必要な所を言葉で補足していくうち、陛下の顔がみるみる険しくなっていきます。

 これは相当、腹を立てておられますね。


「……教国め、裏でとんでもない事をしておったな」


 険しい顔のまま、眉間を揉む陛下でしたが、険しい顔をしていたら意味が無いですよ、と言いたくなるのをぐっと堪え、私は師匠の顔色を伺う。

 影としての黒装束でいるせいで、顔色が読み取れませんが、目線はとても冷たいものです。

 ある意味、仕事モードではあるのですが、この表情の師匠は恐ろしい限りですね。

 ともあれ、リベルヤ男爵を庇えるのなら、私の首一つ、安いものですが。


「……なるほど、確かにこれだけの資料と証拠は、危険を冒してでも持ち帰る価値はあるでしょう。ですが、リベルヤ男爵を危地に招いたのは、影として失格と言わざるを得ません。自覚はあるようですが、影に失敗は許されません」


 これは後でお説教、でしょうか。

 いえ、お説教で済めばいいですが。


「ですが、男爵の症状に対して臨機応変に対処できたのは褒めるべき点です。よく王都まで保たせましたね」


 私が身体を強張らせているのに気付いていたのかどうかはわかりませんでしたが、師匠は音も無く私の側にやってくると、ぐりぐりと頭を撫で始めました。

 状況がよくわからず、頭を撫でられるがままにしていると、くすくすと師匠が笑い始めて、いよいよわけがわかりません。


「初めての実戦で、完璧に動ける人間などいません。私ですら、初回の任務で死にかけました。そのおかげであの人と出会えたのですが……」


 そう言って、師匠がちらりと陛下を見ると、陛下は恥ずかしそうにぷいとそっぽを向いて。

 なぜでしょう、お二人の仲を見せつけられているのが不思議なんですが。

 今のは私が不手際を責められる流れじゃないですか。


「弟子も似るものですね。フリス、あなたも今回の件で、リベルヤ男爵を仕えるべき主として見初めたのでしょう?」


「そうさな。後に娘3人をハイトに嫁がせるつもりであるし、フリスが影となるなら安心であるな」


 あの、私、まだ何も言ってないんですが。

 なのに、師匠と陛下の全てをわかってるぞ、という雰囲気にすごく納得がいかないです。

 結局、それが正解なのが腹立たしいですが。


「賭けをしておったのだ。フリスがハイトに入れ込むかどうかでな。結局、二人ともハイトに入れ込む方に賭けたので賭けにならなかったが」


 はっはっは、と陛下が上機嫌に笑う。

 いや、はっはっは、じゃないんですが。


「あやつは何というか、天性の人たらしでな。余もたらしこまれたうちの一人よ。でなければ、あのような子供を重用などせぬ」


「そうですね。あなたが初めて男爵に会って帰ってきた日は、とてつもなく上機嫌でしたもの」


「そういうお前も、後にハイトを見て気に入っておったではないか」


「否定はしませんが、まさかここまで短期間で大物になるとは思っていませんでした。まさか娘を3人とも嫁にやりたくなるような傑物だとは、当時は思ってもいませんでしたよ」


「お前は娘たちに甘いものな。それがいきなり娘3人をハイトに嫁がせたいと言い出したのには驚かされたぞ」


「王族の娘ともなれば、政略結婚の道具として扱われるのが殆どです。そこに幸せがあるかは関係ありません。ですが、親としてはやはり自分の子には幸せになってほしいものですし、それを建前にして娘を幸せにしてやれるのなら、その方がいいじゃないですか」


「それに関しては余も同意見だ。それに、娘たちもハイトの話を聞いて婚約に前向きだしな。反対する理由も無い」


 うふふ、あはは、と甘々な空気を作り出して、笑い合う師匠と陛下。

 その手慰みのように師匠から頭を撫でられている私、という非常に居心地の悪い空間。

 一応、報告そのものは終わったのだし、いっそこの場を辞するべきだろうか。

 けれど、立場が立場なだけに、自分の都合だけでこの場を辞するのも憚られます。


「私たちにとって、あなたは4人目の娘のようなものです。できるなら、あなたにも幸せになってもらいたいのですよ。影の仕事を叩き込みはしましたが、あなたが望むのなら、それ以外の生き方をしてもいいのです。ですが、絶対に何をするにも強さが必要な場面は出てきますから、その場面を切り抜けるだけの力は、身に付けさせたつもりです。やりたい事があるのなら、あなたのしたいように生きていいのですよ、フリス」


「無論、影を続けても構わぬよ。国の不利益にならぬのなら、仮にリベルヤ男爵が我が国を出奔したとしても、ついて行って構わん」


「……ありがとう、ございます!」


 ああ、私はこんなにも愛されていたんですね。

 恐らく、今は亡き両親からも、その両親代わりの師匠と陛下からも。

 どうにか泣く声を上げずに返事をするのが精一杯で、両目からはボロボロと涙が零れ落ちていきます。

 私の様子を見てから、師匠は苦笑いを浮かべつつ、私の事をぎゅっと抱きしめてくれました。

 ああ、気付かない事の何と罪深い事か。

 今の今まで、私はこれほどにも愛されていた事に気付かずにいたのですね。

 いつか、私にも子供ができる事があったら、必ず目一杯の愛を注いで育てましょう。

 しっかりと、その愛が伝わるように努力しながら。

 なお、私が師匠たちから解放されたのは、たっぷり1時間は後でした。

唐突に形成される陛下と王妃様の甘々空間。

結婚してから20年近く経っていますが、普通にバカップルなご夫婦です。

ちなみに、年齢は陛下が40代後半、王妃様は30代半ばくらいです。

子供は一番上が男で15歳、二番目が女で13歳、三番目が女で10歳、4番目が男で8歳、5番目が女で6歳と、めっちゃ子だくさんです。

ちなみに王妃様と側妃様は普通に仲良しです。

多分、そのうちみんな出てきます。

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