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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり4人目⑱



「……大聖堂か!」


 もどかしさを感じながらも、正規の手続きでサンクリドへ入り、石から放たれた魔力の痕跡を辿っていけば、大聖堂の地下の方からというのがわかる。

 隠し事は地下室がお決まりではあるが、フリスさんほどの手練れが危機に陥るという事は、よほど深入りして身動きが取れなくなってしまったか、あるいは不意打ちを受けてしまったか。

 原因は色々と考えられるが、今はその辺りの考察をしている場合ではない。


「ハイトさん、身体の方はどうですか?」


「万全じゃないけど、戦闘には問題ない範囲、って所だな」


 オルフェさんが道中でかけてくれた持続回復の祈術(きじゅつ)が、想像以上に高い効力を発揮してくれたおかげで、本来なら身体の中からズタズタになるはずの魔戦技(マジックアーツ)の反動を、相当に打ち消してくれていた。

 身体中に痛みこそあるものの、我慢して動けるレベルなのは相当マシだ。


「オルフェさん、芝居は得意か?」


「それなり、でしょうか」


 急ぎ足で大聖堂に駆ける道中、俺はオルフェさんに1つ問いかける。

 彼女は少しだけ首を傾げるものの、俺が至極真面目な話をしていると察してくれたのか、茶化したりする事無く答えてくれた。

 それなり、というのであれば、少なくとも大根役者ではないだろう。


「だったら、俺に合わせて上手く演じてくれ」


「はあ……」


 要領を得ない、という感じではあるが、しっかりとオルフェさんは俺についてきてくれているので、彼女を信じて動く事にしよう。

 駆け足で10分程度で、俺たちは大聖堂に到達。

 そこは予想通り、蜘蛛の子を散らしたような大騒ぎとなっていた。

 そんな状況で一般開放をしているわけもなく、大聖堂の出入り口は全方位をしっかりと兵士が守っている。


「ファッツ枢機卿より派遣された、高位のシスターをお連れした。教皇から、例の場所に向かうよう指示を受けている」


「私にしか救えない命があるとお聞きして、いてもたってもいられませんでした!」


 俺が警備兵に声をかけると、熱血のシスター、という感じでオルフェさんが追随してくる。

 合わせてくれ、としか言っていなかったが、彼女の解釈だとこういう感じなのね。


「……教皇様の居室方面に地下へ降りる通路がある。賊が入ったと聞いているから、気をつけるように」


 警備兵たちはしばし俺たちを眺めていたが、どうやらオルフェさんの芝居が彼らを騙したらしい。

 小さく入口を開くと、俺たちを中へと入れてくれた。

 そのまま、視線と顎の動作で俺たちが向かうべき先を示してくれたので、そのまま奥へと踏み入っていく。

 俺はそのまま素通りしたが、オルフェさんは小さく警備兵に会釈をしている。

 なるほど、敬虔なシスターであれば、その辺りの礼節は気にするか。


「……上手くいった、みたいですね」


 大聖堂内に入ってからしばらく移動し、人気が少なくなってから、オルフェさんがホッとしたように呟く。

 相変わらず、駆け足で大聖堂内を移動していくうち、書斎のような部屋から、地下に続く隠し階段が露わになっているのが目に入る。

 方角的にも、フリスさんがいるのはこの先だろう。


「ここから先、何か嫌な気配がします」


「奇遇だな。俺もだ。けど、ここまで来て引くわけにはいかない。覚悟決めてくれ」


 いざとなったら回復してもらえる、という理由で、俺が先頭に立ち、その後ろからオルフェさんが続く形を取って、俺たちは地下へと降りていく。

 無機質な石造りの螺旋階段を下っていくうち、消毒液の匂いに混じって、腐臭のようなものも感じる辺り、ロクな事が無さそうだが、足は止めずに階段を下っていった。

 特に見張りなどに会う事も無く、階段を降り切った所で、地下が巨大な研究施設だと気付く。

 さすがに無菌室のような隔離された部屋ではなかったが、真っ白な壁や天井に、血痕などがあったので、間違いなくロクでもない研究しかしていないだろうな、と思う。


「これ……こんなのが、本当に竜然教の総本山なのですか?」


「残酷な現実ではあるだろうな。けど、真実だ。大聖堂の地下にこんなモンをこさえてる辺り、教皇も真っ黒だろう」


 どこまでの信仰心かは不明だが、教会の人間からすれば、竜然教の総本山で非人道的な実験らしきものが行われている、となれば、精神的なショックも大きいはず。

 だが、ここで足を止める暇も、彼女を気遣う時間の余裕も無い。

 既に、石が割れてから1時間は過ぎている。

 その際に大怪我をしていたりしたら、もう命が危ないかもしれない。

 焦る気持ちを落ち着けつつ、先へ先へと進んでいけば、忘れようのないようで、どこか微妙に違う気配を掴む。

 近い。

 多分、この先の部屋だ。


「多分、この先の部屋に何かある。心の準備をしておいてくれ」


「……はい」


 一応、事前に声掛けをしておくものの、オルフェさんの返事は少し覇気が無い。

 無理もないか。

 とはいえ、完全に消沈している、というわけでもないので、彼女を信じて部屋の扉を開く。


「……フリスさん!」


 部屋の真ん中に、血溜まりに倒れるフリスさんの姿があった。

 思わず駆け寄った所に、いきなり殺気が叩き付けられて、俺は直観の知らせるままにルナスヴェートを抜剣し、一歩を踏み出す。

 おおよそで当たりを付けて剣を振り抜けば、乾いた音と共に飛んできた剣を弾き返していた。

 剣を投げてきた?

 いや違う。

 この戦法に、心当たりがある。


「あア、会いタかッタぜェ、クソガキィ……」


 ねっとりと纏わり付くような殺気をこちらにぶつけつつ、姿を現した男を見て、俺は内心で舌打ちをしてしまった。

 よりにもよって、ここでこいつが出てくるか。

 だが、フリスさんが危機に陥った理由も、逆によくわかったとも言える。


「……全武器使い(ウェポンマスター)


「ヒャあはははハァ! 今日こそ、お前を殺シテやるゼえ!」


 何かと混ざり合ったような、あるいはノイズが交じり合ったような声で、哄笑を上げる全武器使いには、俺が斬り飛ばしたはずの両腕があった。

 明らかに、見た目からして人間のそれではなかったが。

 ともあれ、元々の武器を遠隔で操作できる能力がそのままに、得体の知れない何かがある、と考えると、苦戦は免れなさそうだな。

 ったく、死んだ事は確認できてなかったし、まさかな、とは思ったけど、あれがフラグだったか。

 まったく、ツイてねえな!

はい、前にチラッとフラグを立てておいた全武器使いさんがここで復活しました。

結構な実力者であるフリスさんが、危機に陥るほどの相手。

皆さんは何を予想していたでしょうか?


なお、このエピソード、全武器使いさんがゴネて一回丸っと書き直してます。

おのれ……。

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