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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり4人目⑨

「それでは、今日からよろしくお願いしますね」


 予定通り午前中にオルフェさんの装備を整えて、午後からフリスさんが合流し、俺たちは教国に向けて王都を発った。

 荷馬車と俺たちが乗る馬車の2台編成で、それぞれ御者は交代で行う。

 俺は最初にみんなが乗る馬車の御者を行い、荷馬車の方はカナエが御者をしている。

 これから国境を越えて教国に入るのに、およそ2週間かかるので、結構長い旅路だ。

 ちなみに、王城前でフリスさんと合流したわけだが、彼女の恰好はごく普通の旅装、といった感じ。

 ただ1つだけ、顔を薄紫のヴェールで隠している、というのが不思議なポイントだが。

 おそらくは、独特な目を隠すためなのだろう。


「当主自ら御者をなさるんですね」


「普通の貴族なら、そうではないんでしょうね。私はあまり部下や使用人に任せきり、というのが好きでないので。まあ、変わり者なんですよ」


 俺が自ら御者をやっているのが物珍しいのだろう。

 中からフリスさんが声をかけてきた。

 まあ、ただ単に俺が暇っていう理由もあるんだけどね、御者をしてる理由。


「そうなんですね。あまりにも自然に自分から御者をされていたので、不思議に思っておりました」


「まあ、身内だけだといつもの事ですよ」


 そんな会話をしつつ、馬車は進んでいく。

 魔物に遭遇したら、フリスさんとオルフェさんの実力を確認したい所だな。

 王妃様の弟子という事なので、フリスさんの実力は疑うべくもないのだが、オルフェさんに関しては新しい装備の慣らしもあるし、フォローの効く環境で戦わせた方がいいだろう。

 

「……かなり先ですが、魔物の気配がありますね」


 ふと、雰囲気の変わったフリスさんから魔物の気配あり、との言葉が。

 かなり先、との事だったので、魔術の索敵範囲を広げてみた所、5キロほど先の所に小さめの魔物の集団。

 相当先だけど、よく気付いたな。

 俺でさえ普段の索敵は半径1キロくらいなのに。


「随分と先の気配まで読めるんですね」


「生憎と、そういう所に敏感でして。それに、私は種族的な特徴もそういう所向きなんです」


 意識しているかどうかは不明だが、フリスさんは頭の狼耳と触覚とピクピクと動かす。

 確かに、狼とか虫は人間に比べると色々敏感だと言うし、きっと彼女は鼻もいいのだろう。


「先にいる魔物については、フリスさんとオルフェさんに対処してもらおうと思っていますが、大丈夫ですか?」


「ええ、お任せ下さい。軽い前哨戦としましょう」


 こちらの提案を、嫌な顔一つせず請け負ってくれたので、この先の魔物については予定通りフリスさんとオルフェさんに行ってもらおう。

 もっとも、俺たちも待機するし、想定外の事があってもすぐにフォローに回れるようにはするが。


「10分後に魔物と会敵する! 戦闘準備しておいてくれ!」


 魔物の反応があった距離と、馬車の進む速度を加味して、おおよその会敵時間を割り出してから、馬車内のメンバーに声をかける。

 中からはジェーンの威勢のいい返事が聞こえたので、とりあえずは大丈夫だろう。




……

………




「それじゃ、メインはオルフェさんとフリスさんで、俺たちは何かあった時のフォローだ」


 予定通り、10分後に魔物が見えたので、馬車を停めて迎え撃つ態勢へ移行。

 魔物側もこちらに気付いており、こちらに向かってきている。

 魔物は王都近くというのもあり、ただの魔狼(ウルフェン)だが、数がそれなりにいるので注意は必要だ。

 数がそれなりにいる、といっても10頭程度ではあるのだが。


「では、先鋒は私が」


 聖銀騎士(ホーリーシルバー)の斧槍を両手で握り、オルフェさんが前に出た。

 魔狼たちは、先に前に出てきた彼女を標的に定め、囲むように動きを変える。


「甘いです、よっ!」


 先頭にいた魔狼の顔面を、斧槍の一撃でもって屠り、続いて横薙ぎの一撃で、まとめて3匹の魔狼を薙ぎ払う。

 斧槍に振り回される事も無く、安定した立ち回りだ。

 斧槍のリーチを良く生かしているし、この感じであれば、10頭程度の魔狼如きは歯牙にもかけないかも。


「拡散する落雷」


 オルフェさんが左手を斧槍から離し、天に手の平を掲げると、左手首の聖別された円環が僅かに輝き、彼女を取り囲むように落雷が起こる。

 それらは彼女の周囲1メートル程度を隈なくカバーしており、彼女を獲物として取り囲んでいた大半の魔狼は例外無く落雷の餌食に。

 唯一、少し後ろに控えていた魔狼のリーダー個体以外は、もれなく絶命していた。


「くたばれ、雑魚魔物風情が!」


 飛び掛かるようにして振り下ろされる斧槍の一撃が、リーダー個体をキッチリと捉え、その頭蓋を叩き割る。

 あれ、オルフェさんの口から急に汚い言葉が出てたような……。


「……失礼、少々気分が昂ってしまいました」


 コホン、と咳払いをしつつ、オルフェさんは少し赤い顔でそう言った。

 もしかすると、戦闘に入ると人格変わるタイプかな?

 普段は穏やかでも、何かの拍子に急に人格変わる人、いるよね。


「私の出る幕はありませんでしたね」


 そういえば、オルフェさんが魔狼の群れを1人で蹂躙してしまっていたな。

 どこか所在無さげなフリスさんだったが、彼女には次の機会にその腕前を見せてもらう事にしよう。


「火葬」


 そうこうしているうちに、オルフェさんが倒した魔狼の死体を祈術で焼いてくれていた。

 こうして見る感じ、雷と火と、既に2属性を使いこなしているな。

 恐らくは、他の属性も扱えるのだろう。

 少なくとも、光や土辺りは扱えるはず。


「あいつ、相当出来るじゃねえの」


「有能」


 カナエとジェーンからも、オルフェさんの戦闘は好評なようだ。

 まあ、これから一緒に活動する事にはなるから、上手くやっていってくれるといいけど。

 ともあれ、無事の後処理込みで魔物との戦闘を終えたので、俺は再び御者台に座って馬車を走らせる仕事へと戻った。


「今の所は順調だな」

 

 軽快に走る馬車を操りつつ、国境に続く道を進んでいく。

 時折、魔物と遭遇する事もあるが、特に苦戦も無く、順調に進めている。

 その中でフリスさんの実力を見る機会もあったのだが、二刀流の大型ダガーを用いた高速戦闘で、あっという間に魔物をズタズタに斬り裂いていくかと思えば、時には上手く死角に潜り込み、急所を一突きで仕留めたりと、総じて高い技量を感じさせるものだった。

 そんな感じで、俺たちは教国への道のりを順調に進んでいく。


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