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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり4人目⑤

「ほわぁ……」


「スッゲー! こんなでっかい家に住めるのか!?」


 子供たちを含めた教会の面々を屋敷に連れてくると、ワイワイガヤガヤとはしゃぎ出す。

 小さい子供は、こういうのを見たらテンション上がるよね。

 純粋さが少し眩しいが、かなりほっこりする光景だ。


「一時的に匿ってもらうだけですよ。お屋敷の人に迷惑をかけてはいけませんからね」


 一時的に取り乱していた神父も落ち着きを取り戻し、引率者らしい態度に戻っていた。

 さて、子供たちは使用人たちに任せるとして、これからの事はハッキリさせておかないとな。


「ではこちらへ」


 大方の予想通りというか何というか、子供たちは短時間でジェーンにすっかり懐いていたので、子供たちをジェーンと使用人の皆さんに預け、俺はカナエを伴って空き部屋の一つへと神父とシスターオルフェを招き入れる。

 これからするのはかなり大事な話だ。

 俺が陛下から受けている依頼にも関わってくるので、早めに済ませておきたい。


「それでは、単刀直入ですが、シスターオルフェに一つ聞かせて下さい」


 椅子に腰を降ろしたシスターオルフェは、こちらを真っ直ぐに見つめているが、隣の神父は若干落ち着かない様子だ。

 あの生活ぶりからして、貴族の屋敷という雰囲気が落ち着かないのだろう。

 対照的に、シスターオルフェはどっしりと構えている辺り、多少は普段の冒険者活動でメンタルが鍛えられているのだろう。


「私に答えられる事ならば、何でも」


「では、単刀直入に聞きます。シスターオルフェ、あなたは今回の件で教会の闇の一端に触れました。色々と思う所もありはするでしょうが、私が聞きたいのは一つだけです。我々に協力しては頂けないでしょうか?」


 俺の問い掛けに対して、彼女は思案する表情をしてから、一つ頷く。


「いくつか確認させて下さい」


「こちらの答えられる範囲内であれば」


 なるほど、きちんと自分の置かれた状況を把握しようとするだけの冷静さはあるみたいだ。

 C級冒険者をやっているだけはある。


「そちらに協力するという事は、国へ協力すると捉えて問題ないでしょうか?」


「はい。秘密裏ではありますが、陛下直々の依頼ですので。無論、協力に見合った報酬はご用意させていただきます。一応、報酬の一つとして、孤児院の復興に関してを陛下に交渉する、というのを考えていますが、別に望む事があれば、後ほど協議しましょうか」


 教会の再建、というのは難しいが、孤児院の再建という事であれば、陛下もこちらの事情を汲んでくれる可能性が高い。

 教会絡みは教国も絡んでくるから、こちらの一存だけではどうしようもないからな。


「協力、とはどのような内容でしょうか? あの教会の状態を見て頂ければわかるように、私はもちろん、神父様も教会について国に渡せる情報は殆ど持ち合わせていないと思いますが」


「それについては協力を確約して頂かないとお話できません。ただ、私から言える事は、それなりに危険な橋を渡ってもらう必要があるという事と、国家機密に触れる事になる、という事ですね。この二点はデメリットですが、メリットとしてはシスターオルフェが狙われた経緯や、今の教会の実態を詳しく知る事ができます。こちらとしましては、どちらを選ばれてもあなたの意思を尊重致します」


 実際に、教会のシスターとなれば、教国に入った際に諸々の便宜を得られる可能性もあるし、中枢とまではいかなくとも、一般人が立ち入れない範囲の情報を知る事ができる可能性もある。

 それに、パーティーメンバーという面でも、人員を得られるのであれば、彼女ほど適任はいないだろう。

 危険は覚悟してもらう必要もあるが、俺やカナエやジェーンがいるのだから、滅多な事では命の危機にまでは陥らないはず。

 その辺は今全てを明かす事はできないのだが、彼女からの協力を得られるのなら話していい。


「わかりました。協力させて下さい」


「即答ですね。こちらとしては嬉しいですが……」


 てっきり、断られるか、時間をくれと言われると思っていたから、彼女の返答に面喰らってしまう。

 神父はそれでええんか、と彼の方を見れば、彼は慈愛の表情でシスターオルフェを見ていた。


「シスターオルフェ、あなたの思うままに」


「ありがとうございます。神父様」


 保護者の許可は取ったぞ、とばかりにシスターオルフェはこちらを見る。

 こうなってしまっては、俺が異議を差し挟む余地は無いわけで。


「では、早速ですが動きましょうか。まずは陛下にこの件を報告しなければ」


「ハイトさん、陛下からはすぐに来ていいと許可が下りています」


 先に陛下にお伺いを立てなければ、と思っていた所に、シャルロットが声をかけてきた。

 うーん、相変わらずのしごでき女子だねえ。

 多分、俺が教会にカナエとジェーンを呼んだ時点から、もう動いてたんだろうな。

 あまりの手回しの早さに、もはや苦笑いするしかない。


「シャルロット、手際良すぎじゃないか?」


「ハイトさん自身が身動きできない状態でしたので、それなりに大きい案件かと。それならば結果として陛下への報告やお伺いが必要になると判断しただけですよ。留守の間は私にお任せ下さい」


「悪いな。頼むわ」


 いつもの事ではあるが、留守の間を頼む、と伝えれば、シャルロットは花が咲いたように満面の笑みで応えてくれる。

 これは張り切っていらっしゃるな。

 まあ、彼女が張り切って空回りするような事はまずないので、安心して後を任せられるというものだ。


「シスターオルフェ、もう準備ができているようなので、行きましょうか」


「はい。よろしくお願いいたします」


 俺が席を立ち、外へ向かえば、カナエとシスターオルフェが後にくっついてくる。

 馬車で王城に行くべきか、と思案しながら玄関先に向かえば、既に貴族仕様の馬車が待機しているではないか。

 全く、シャルロットの手回し良すぎで、ホント何回でも言うけど頭上がらないわ。

 御者も使用人の1人が既に配置されているので、俺たちはもう馬車に乗り込むだけだ。




……

………




「……なるほど、お前がわざわざこの違法奴隷商を王城に寄越したワケがわかった」


 王城に到着すれば、俺たちはすぐに陛下の執務室へと案内され、そこには護衛のクスティデル近衛騎士団長と、陛下と王妃様のコンビ、それと2人の兵士に拘束されている先ほどの奴隷商がいた。

 既に準備万端であったようなので、今回の件の経緯について、説明をしていけば、陛下がなるほどと頷く。

 ホント、話が早いと色々と楽でいいな。


「で、そこのシスターが今回の被害者という事であるな」


「はい、シスターオルフェです。今回の教国を探る依頼について、協力を確約してくれました。個人としてもC級冒険者としての実力はあるようですので、私としては今回の件にピッタリの人材と思っています」


「ふむ、お前が信頼できるのならば任せる。元より、足りない人員はそちらで探してもらう事になっておった」


 陛下からシスターオルフェを協力者として雇う許可も下りた。

 情報も共有できたし、あとは教国遠征に向けて支度するだけか?


「リベルヤ男爵。教国の件ですが、一緒に行かせる弟子を紹介します。もう支度は済んでいますので、いつでも出発できますよ」


 すんなり解散かな、と思っていた所に、黒装束の王妃様から、追加人員の紹介をする、とお話が。

 そういえば当日に合流すると思っていたけど、今日のうちに顔合わせしとくのね。


「お初にお目にかかります。フリスと申します。この度は、お世話になります」


 王妃様が目配せっぽい動作をした(黒装束で顔が隠れているのでわかりにくい)所、物陰から歩み出てきたのは、見た目だけでもかなり属性てんこ盛りの少女だ。

 王妃様の黒装束と似た意匠の服装だが、より冒険者っぽくアレンジされた服装で、顔を隠していない。

 そして、特徴的すぎる見た目から、俺は彼女がどういう存在なのかがよくわからなかった。


「私の見た目に戸惑われておりますね。実は狼系獣人と蟷螂系虫人のハーフでして。基本的にはどちらかの親の見た目に寄るはずなのですが、見事なまでに半々の見た目になってしまいまして」


 彼女の言うように、その身体的特徴は、両親の特徴をそれぞれ受け継いでいるように見える。

 頭には虫らしい触覚と、犬系の耳に加えて普通の人間の耳。

 目は普通の人間の形だが、色や特徴の異なる瞳のオッドアイとなっているのが特徴的だ。

 左目は狼系獣人のものであろう、丸い三白眼となっており、右目は昆虫らしい、複眼の瞳。

 両手首の付け根辺りから、蟷螂の鎌にも似た部分があり、それでいて全体的な体格は狼らしいしなやかさが見て取れるという、属性の大渋滞。

 人によっては、気持ち悪いとか異物感を覚えるのだろうが、俺は逆にテンションが上がってしまった。

 こんな属性てんこ盛りで、ちゃんと人としてのシルエットを保ちつつ、両親の特徴を持っているのは控えめに言って人体の神秘がロマンでカッコイイ。

 何だかテンション上がりすぎて語彙力が死んでいる気がするが、神様の神業たるがこの姿に詰まっている、と言っても過言ではないだろう。

 

「よろしくお願いします。あまりにカッコイイ見た目でしたので、見惚れてしまいました」


 特にお世辞を言う必要も無いので、思った通りのままを伝えてみれば、フリスさんは固まってしまった。

 あれ、何か気に障る事を言っただろうか?


「フリス、リベルヤ男爵ならば心配いらないと言ったでしょう?」


「今、人生で一番困惑していますよ」


 どうやら、見た目で忌避されると思っていたらしい。

 残念ながら、狼と蟷螂という男の子が大好きな属性の掛け合わせなんて、テンションが上がらないわけがないじゃないか。

 あの鎌の部分も、本物の蟷螂みたいに動くのかな?

 ああ、見てみたい!


「その、興味本位で聞くので気分を害したならすみませんが、その手首の付け根辺りの部分って、動かせるんですか?」


 多分、今の俺はすっごくワクワクした顔で前のめりになって質問をしているのだろう。

 恐らくはキモオタ属性全開に違いない。

 だが、ここで聞いておかないと、絶対に後悔する!


「ええと、はい。可動域は決まってはいますが、動かせますよ。ほら、こんな風に」


 戸惑いを隠せないままではありつつも、フリスさんは鎌の部分を動かして見せてくれた。

 どのくらいの強度があるのかはわからないけど、戦闘にも耐える強度であるなら、様々な用途が考えられる。

 腕に鎌みたいなブレードあるとか、男のロマンたっぷりでいいじゃないか!


「ありがとうございます! 本当にカッコいいですね! それって戦闘にも使えるんですか!?」


「少し落ち着いて」


 スコン、とカナエから軽く後頭部を叩かれ、俺はハッと我に返る。

 いかんいかん、あまりにもロマン溢れる見た目に、テンションが天元突破してしまった。

 さすがにこれは引かれたか?


「あ、すみません。あまりにもカッコ良かったので、興奮してしまいました」


「え、いえ、大丈夫、です。気にしていませんから」


 我に返った時点で、すみませんでした、と頭を下げてみれば、フリスさんは恐縮したように両手を振る。

 表情には困惑の色がありありと見て取れたが、気付けば、狼のもふもふ尻尾がぶんぶんと振られているのが見えた。

 身体に隠れてて、尻尾があるのに気付かなかったな。

 とはいえ、犬系と同じと見ていいのなら、尻尾を振っているという事は嬉しかった、という事でいいのか?


「なるほど、リベルヤ男爵にこういった一面があるとは、私も知りませんでしたね」


「すみません、恥ずかしいので忘れて下さい……」


 黒装束の王妃様が、俺の先ほどの様子について興味深そうにしていたので、勘弁してくれ、と全力で頭を下げた。

 この人、隙あらば娘を俺に嫁がせようとするからな。

 俺の好みがこういうのだって勘違いされても困る。

 あくまで男の子としてこういうカッコいい要素が好きなだけであって、異性のタイプがこうってワケじゃないから。

 いや、もちろんフリスさんの見た目も美人さんだけどね?

 種族的な特徴についつい目が行きがちだけど、スタイルもいいし、顔立ちも綺麗。

 これ、本当に勘違いされてないよな?

 不安になりつつも、俺は必死に弁明をするのだった。

活動報告を更新しました。

興味がある方はご覧下さい。

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