神々さえも匙を投げたエリン界
ライトさんがそう言い終わると、ライトさんの後方に2mほどの縦長の黒いモヤが発生し、そこから『いかにも女神です』という感じの金髪のロングヘアの美人の女性が現れ、軽く会釈をした。
「どうもはじめまして。エリン界に転生後、怜さんを全面的にサポートさせていただく『三代目のエリン神』です。常に怜さん以外には見ることができない小さい妖精の姿でお供しますので、気軽に『リンちゃん』って呼んでくださいね~」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。素朴な疑問なのですが、『エリン界のエリン神』ということはエリン界を管理している女神様ですよね。世界の管理とかは大丈夫なのでしょうか?」
「ええ大丈夫です。正確には『神々さえも匙を投げてしまうくらいの末期癌のような状態になってしまった』というのが正直なところです。そのために怜さんに破格ともいえるチートスキルを授け、エリン界に転生していただく流れとなったのですが、しばしお話しにつき合っていただけますでしょうか?」
「はい、お願いします」
「それではエリンさんのソファもお出ししますね。リラックスモードでお話ししましょ。ドリンクやお茶菓子も自身で出していただいて大丈夫ですよ」
「はい」
「まず、女神の仕事といっても、定期的にエリン界に信託を授けるくらいなのですが、エリン神の総本山である『エリン教国』のトップ陣が長年に渡り、唯一信託を授けることができる各国の教会内の女神像から、スキル『信託』持ちの信徒を遠ざけ好き勝手に運営できるシステムを構築してしまったんです。さらに南に隣接しているエリン界最強の、人間以外の種族に排他的な帝国と蜜月の仲になってしまいました。この2か国はそれぞれ、東西に伸びた広大な大陸の東端の北東と南東に位置していますから、北と東、南側は海に囲まれており、地政学的にみても西側のみ注意すればいいという恵まれた環境なんです。他国に肩入れして西側から圧力をかけて変革を促すというのも非常に難しく、『物理的な神罰を下す』一歩手前の状況になってしまいました。わたしが3代目という理由は人事異動みたいなもので、1代目、2代目でもどうしようもなくわたくしに3代目役がまわってきたのですが、力及ばず、状況が改善されることもなくここまできてしまったんです。それが上層部に報告され、ライトさんの部署にも話がまわり、『最悪神罰を下すなら、その前に色々実験しようぜ』というノリで怜さんに白羽の矢が当たったわけなんです」
「実際に当たったのは『白羽の矢』ではなく『暴走トラック』だったんですけどね(笑)」
「ご、ごめんなさい。でも、怜さんが深夜の仕事帰りに猫ちゃんたちに餌を買い与えていたりとかしてるのを見てましたから、それが個人(神)的に『この人だ!』と思った理由なんです」
「え、それってマジ??」
「ええそうです。怜さんに決まった理由は、3代目のエリンさんの意向を汲んだのが一番の理由ですね。エリン界には獣人もいますから、それを含めてのことでもあるのですが」
「なるほど、客観的にみても選定理由が理にかなってますね。おぼろげに神様たちが望んでるものが分かったような気がします」
「難しく考えなくてもいいですよ。人間性を失わない範囲で自重せずに無双プレーを楽しんでください。それでは最後に転生後の種族、ジョブ、外観、場所、環境などを設定しましょう!」