聖女エリスとの再会
ユリウス帝との謁見からおよそ4か月、スフィア嬢が組んだ1週間毎のスケジュールによって俺たち(厳密にいえば俺を除いた3人なのだが)はかなりの速度で成長した。冒険者ランクでいえばCランク(中級冒険者クラス。日本人に例えると会社の社内研修が終わり、仕事が板についてきたあたり。目安のレベルは20前後)の一歩手前あたりと評されるまでになった。冒険者ランクアルファベットに例えるとFランクからはじまりAランク、その上はSランク、SSランク、SSSランクとなっているらしい。ちなみに古の勇者パーティーはSSランクといわれており、なぜSSSランクでなかったかというと、〈勇者〉、〈聖女〉、〈賢者〉、〈剣聖〉のジョブの先に〈熾光の勇者〉、〈大聖女〉、〈大賢者〉、〈剣神〉があると当時の勇者パーティーが自ら語っていたため、後世に出現する可能性を鑑みてSSSの枠を設けられたとのことだった。ちなみに俺は〈熾光の勇者〉とかの習得条件はすべてわかってるんだけどね。【神眼(☆)】で自分や他人のジョブの詳細を確認すると、そのジョブの習得条件や、そこから派生するジョブの習得条件も見れちゃったし。でも今はいいかな。
1週間単位のスケジュールは基本、5日間は訓練(実地研修を含む)、2日休みという予定で組まれており、4人バラバラの日もあれば俺とガイが戦闘訓練、フィーナとマリーが魔法訓練に分けられてる日もあったり、剣聖とパーティーを組むことを想定してベテランの〈剣豪〉の騎士と5人パーティーを組まされ、俺、フィーナ、マリーが交代で戦闘を指揮したりした。ゴーマン帝国の本気度が伺える楽しい毎日だった。
戦闘訓練時に驚いたことが2つあった。ひとつは騎士の訓練所には『エリア内では自身のレベルを一時的に最低1まで下げることが可能な魔道具(ただしHPは除く)』が使用されており、純粋に基礎ステータスを伸ばす訓練ができるようになっていた。なお、冒険者はランクC以上を対象に低価格でそのエリアの一部の利用が可能であるとのこと。ふたつめは剣と刀が別物扱いで、スキルも〈剣技(初級)〉と〈刀技(初級)〉が存在するとのことだった。刀に関しては完全に失念していたのでとりあえず模擬戦用の刀を握り、『今後武器として扱う』と念じて〈刀技(初級)【0/10】〉をゲット、おまけにあるあるポイント『刀を装備した主人公(AR1000P/SP1000P)』が入りました。刀について騎士のひとりに話を聞くと、今では冒険者を含め使い手はほとんどいないが、はるか昔には〈刀豪〉や〈刀聖〉のジョブ持ちがいたらしいというのを教えてもらったので、思わず『えっ・・・』とつぶやいてしまいました。
MMORPGにはジョブごとに装備が限定されるものもあればそういった制限がないものもあるが、この世界では後者であった。というわけで、かつて俺がはまっていたMMORPGのキャラで多用していた『右手に刀、左手に片手剣』の装備を試してみた。〈二刀流(初級)【0/10】〉もあったか(笑)。この世界には刀技や二刀流のスキルを持っている盗賊はいなかったから、先々得られるスキルを確認しつつそれをトレースしながら地道に訓練していきました。別にあり余るスキルポイントをぶち込んでもよかったんだけど急いでるわけでもないしそれじゃつまらないと思ったしね。周りから『器用貧乏もほどほどにな(笑笑笑)』揶揄してきたので、余興とばかりに模擬戦を提案。学生時代のゲーマー魂に火がつき、『かつて単騎で敵陣に突っ込んで屍の山を築いた俺様の技術をナメんなよ!』といわんばかりに持てるだけの〈剣技〉〈刀技〉〈二刀流〉での連撃(スキルは使えないので型だけトレースしてるだけ)で相手を翻弄、途中、スキルキャンセルからの別スキル発動っぽいのを見よう見まねで実践したり、ギリギリでの見切りや刀で受け流してからのカウンター乱舞を敢行したりと色々と披露しました。『おまえ、本当にポーターなのかよ!???(笑笑笑)』と笑いながら感心してくれました。俺も超楽しかった(笑)
--------------------------------------------------------------------
そしてついにやってきましたエリン教国への遠征の日、主要な人員は俺たちの他に第二皇子をはじめとした重鎮方に行商団やら冒険者まで、まるで江戸時代の大名行列の様相とあいなりました。一体何百人いるんだろうね。行呈は片道約10日ほどで、さらに道中でいくつかの行商団や護衛が加わるらしいとのこと。徒歩で移動する騎士もいるとのことで、俺のストレージボックスを使わせてもらいたいとお願いされちゃいました。徒歩で移動する方々、ホントお疲れ様です。野宿の際には4人みんなで炊事の手伝いをしました。ガイたち、特にフィーナの料理スキルの伸びが著しかったのは日ごろ聖女レイナを意識してるからだろうね。
「遠路はるばる、よくぞ参られたティード皇子に勇者パーティーの方々!」
俺たちを出迎えたのは『着飾ったオーク』ではなく引き締まったがたいをした教皇であった。
「久しく会わない間に随分と見た目がお変りになりましたな、カストル教皇」
「ハハ・・変わらずを得なかったといったところです。今思えば、あのような醜態を長年晒していたわが身を恥ずかしく思います」
「それは何より。我が愚弟にも聞かせてやりたいものです」
「・・・立ち話もなんですし、神殿の奥へと参りましょう。聖女レイナ様や剣聖クロッセオ様がお待ちしております」
「承知しました。それでは聖女レイナ様の元へ向かいましょう」
カストル教皇を筆頭にティード皇子、俺たち4人は一列となって神殿の奥へと向かった。ちなみに〈聖女〉のジョブ持ちがこの世に不在の場合には〈教皇〉のジョブ持ちが国のトップを務めるのだが、〈教皇〉のジョブ持ちも中々出現しないため、その場合には元老院に席を置く7名の話し合いで『役職としての教皇』が選出されるらしい(教皇が元老院から輩出された場合には新たに1名を元老院に補充)。多数決で重要な決定を行う際には教皇は2人分の投票権を持ち、さらに聖女がいる場合、聖女は元老院の決定に拒否権を発動できるという、共和制のローマと国連の常任理事国の拒否権をミックスしたような政治体系になっている。
神殿の奥には聖女が座るにふさわしい滑らかなフォルムの象牙色の玉座(聖女レイナが現れたことにより教皇用の椅子と取り替えられた)があったのだが、その手前の3段くらいの階段を降りたところに聖女と7人のヴァルキュリアが横一列に並んで待っていた。
「遠路はるばるようこそいらっしゃいました、ティード様にガイ様、フィーナ様、マリー様、そしてレイ様。お初にお目にかかります、わたくしはフィーナ様に先立って〈聖女〉のジョブを見出されたレイナと申します。皆さまお疲れのうえ、神殿の間の寒さは身にこたえましょう、まずは部屋に移動しましょう」
ガイの反応は予想できたけど、ティード皇子もフィーナやマリーもレイナを見てフリーズしちまったか。気持ちはわかる。俺も最初はそうだったからね。俺はフリーズした演技をしたけど流石レイナちゃん、俺を見ても動揺しなかったね、もしかしたら俺が『小さな勇者』だってのに気づいてない??だとしたらちょっとカナシ(涙)。ってか、剣聖クロッセオ、何で俺を凝視してるんだよ!?頼むから大人しくしてくれよ、マジで・・
【お詫び】2024/3/1
世界地図が見づらくて申し訳ありません。PCでは何とか見れる形に修正しましたが、スマホ版では横向きにしていただければ何とか国々の位置関係を把握できると思います。筆者のPCスキル不足には目を瞑っていただければ幸いですm(__)m




