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籠の中の聖女

(嫌われるのを覚悟の上で勇気を出して『小さな勇者さま』にキスしてみました。もちろんわたしのファーストキスです。『小さな勇者さま』は嫌がるどころかペールオレンジのお顔を真っ赤にして慌ててました。脈は大有りでその夜は嬉しすぎてよく眠れませんでした。アイマスク越しに瞳を覗いたのですが、黒い瞳の奥に深い悲しみと優しさを湛えたような瞳をされていました。小さな勇者さまもきっとわたしと同族なのでしょう。昔に大切な人を失った人特有の悲しい瞳をされていました。黒くて綺麗なストレートヘアに女の子のような可愛い顔のつくり、枕を小さな勇者さまがわりに何度抱きしめたか数えきれません。鑑定の儀が終わったら小さな勇者さまが訪れる可能性が高い孤児院に就職して、ダメモトで逆プロポーズしてみましょう。プランは完璧です)



 (えっ?わたしのジョブが〈聖女〉!??これからは教国が保護し、基本、総本山で勤めで外に出るには『あの着飾ったオーク共』の許可が必要ですってぇえええ!???おまけに勇者もしくはよほどお偉い貴族との結婚でもない限り、基本は生涯独身ですってええええ!??エリンさま何てことしてくれたのよおおおおぉお・!!!!!・・わたしの完璧な婚活計画が・・・サヨナラわたしの初恋(涙涙涙)・・・小さな勇者さま、わたしはお先に天国にまいります。ついでにエリンさまに飛び蹴りをくらわしてやります)



 ちなみに駄女神エリンは〈勇者〉〈聖女〉〈賢者〉のジョブ付与を〈オート付与モード〉に設定したままであったため、スイーツで膨れ上がったどてっ腹に飛び蹴りをくらっても仕方がないのではあるが。



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  ― 時は聖女レイナの初のボランティア治癒の巡業中、レイたちが鑑定の儀を受ける十数日前に遡る ―



 「な、何者だ!?急に目の前に現れおって!」


 「みなさまはじめまして、わたくしは巷で『小さな勇者』と呼ばれるものです。非礼を承知で『テレポート』の魔法を使いこの場に登場しました。いきなり出現して『小さな勇者』と名乗っても信じてもらえないので、まずは『ストレージボックス』に保存してある大量の魔物の肉をお出しします」



 「・・・量もさることながら、我々7人のヴァルキュリアでも苦戦するA級魔物がこんなにも・・しかもほとんど首元を一撃で仕留めているとは・・・『テレポート』に『ストレージボックス』持ちに加えこの戦闘力、おまけに鑑定不可能か・・・おそらく本物で間違いあるまい。『小さな勇者』殿、どのような要件で我々の前に現れた?」


 「聖女のレイナ様と10分ほど、ふたりきりで会話をさせていただきたいのです」


 「『断る』、といったら?」


 「余計な時間をとらせてしまう、といったところでしょうか。わたくしは『テレポート』を使えますし、恐れながら7人のヴァルキュリアを無傷で無力化できますので」


      「「「「「「「なっ!????」」」」」」」


 「そこまで言われると我々の沽券に関わる。では、今からわたくし、〈剣聖〉のクロッセオと他のヴァルキュリア全員で1分ほど模擬戦用の武器で攻撃するから見事いなしてみるというのはどうだろうか?」


 「それでいいですよ」



 7人のヴァルキュリアはレイを包囲する陣形をとり、100ベリカコインが落ちると同時に一斉にレイに飛び掛かった。7人の攻撃がレイに対してほぼ『同時着弾』を行ったり3人1組で縦1列になって後ろ2人の死角をつくって3連撃を仕掛けてきたりしたが全てかわされ、または剣で受け流されて1分が経過した。



 「・・・実践だったらわたしたちは何度死んでいたかわからないな。レイナ様がおっしゃってた『小さな勇者さま』で間違いあるまい。貴方様がこうして非礼を詫び、穏便に事を運ぼうとされているのに我々が非才で実力が伴なっていなかったがゆえ、貴方様の真意を見抜けなかった我々に謝罪させてほしい」


 「謝罪するほどでもないですよ。むしろ護衛として当然の対応だと思ってますので。それではお手数ですが、レイナさまへの取次ぎをお願いします」



 そうお願いすると、剣聖クロッセオが騎士団が護衛する馬車に向かい、しばらくすると銀髪の美少女が駆け足でレイの元へ駆け寄っていった。



 「ほ、本当に『小さな勇者さま』なのですね?だいぶ背が伸びたので『小さな勇者さま』とお呼びするには無礼かもしれませんが。・・・あぁこの黒く澄んだ瞳、間違いありません。たとえ髪や瞳の色を変えてたとしてもわたくしが間違うはずはございません!」


 「あわわわわ!??そんなに大泣きしないでください。みなさま誤解です!ボクは何もしてませんからあああああ!!」


 「女の子の事になると顔が赤くなったり慌てたりするのは昔と一緒ですね(笑)」



  (お、おい、聖女さまが本当に嬉しそうに泣きながら笑ってるぞ!あんな顔を見るのは

   初めてだ・・)


 「見苦しいところをお見せしました。それではみなさん、レイナ様を10分ほどお借りします!それでは『テレポ』」



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 ふたりの転移先は白や黄色の小さい花が咲き乱れる小さな丘陵、レイのお気に入りの場所で開花のこの時期がベストと判断し、下見もバッチリだったのでこの場を選定した。



 「これが転移魔法、凄すぎますね。それにとても綺麗な場所、あぁ、わたしは夢を見ているのでしょうか?」


 「この風景が気に入ってくれてよかったです。まずは〈聖女〉職を授かりおめでとうございます、レイナさま」


 「ありがとうございます。身動きができないこのジョブを授かったときにはエリン様を呪いましたが、『小さな勇者さま』がわざわざ会いに来てくださってエリン様にも感謝しています。あぁ、この愚かなわたくしをお赦しください・・・」


 「(なぜこうなったのかはリンに確認しないとな。ってか、むしろレイナちゃんのほうが女神らしいんじゃね?)エリンさまもきっと赦してくださるでしょう。こうして再会できたのですから。」


 「はい」


 「それじゃあこれから大事なことをお伝えしますね。あと2、3年後くらいにレイナさまを籠の中から自由にします。それまでは無理をせずしっかり栄養を取ってくださいね。レイナさまは多くの方から愛されているのですから、ご自分の命を軽んじて周りを悲しませないでくださいね」


 「はい」


 「ふたつ目、レイナさまを解放するまえに、素顔のボクと出逢うことになると思います。一発でわかると思いますよ。もしそうなったら、うれし泣きしたりダッシュで突撃しないでくださいね」


 「はい(笑)」


 「これが最後のみっつ目です。当分の間、ボクは当分の間『小さな勇者』として活動できなくなります。レイナさまに金貨で10億ベリカを託しますので孤児たちに使ってください。あと、こちらの羊皮紙には『孤児たちに差し入れしたお肉や、それを売却したときの利益が孤児たちにキチンと行き届いている孤児院名やその責任者の名と、その逆の孤児院名やその責任者の名』が記されています。あくまでもボクの主観です。中抜きやピンハネが行われているような孤児院への寄付は気をつけてくださいね。中抜きがしにくいよう、細目に援助するのがいいと思います。お金を預けるのはヴァルキュリアさんたちにだけにしてくださいね。お話は以上です」


 「こ、こんなに・・ありがとうございます」


 「どういたしまして。それではボクにも急用があるため、みなさまのところに戻りましょう」



 その後、元いたところに転移し、レイナに金貨10億ベリカを預けたことと使い方を説明。もしレイナをたぶらかして寄付金の使い道の主導権を得ようものなら、それが誰であろうと地の果てまで追いかけるから覚悟するようにと釘を打ち込み退散した。


【※代表作※】 異世界のスマホ、超半端ないって!—クラスメイト6人が転移した異世界は、システム化、合理化、効率化、恋愛が奔放すぎてて元の世界に帰るまでメンタルがもちそうにないんですけど— もみてね~

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