表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/24

〈ミスリルの聖女〉レイナ

 衛星都市マルダートから帝都グランゼールまでの道のりは馬車で片道3日はかかるというのと、帝都での手続きや準備に3日はかかるだろうとのことなので10日ほどの滞在になるとのことだった。宿泊場所は護衛を考慮して侯爵邸に決定。貴族邸宅エリアにあり閑静的な場所で住むには環境のいい場所ではあるが、商店街までは馬車に乗って移動しなければならないくらい離れた距離に位置しているため、侯爵さまとの面会の際、「退屈な思いをさせて申し訳ないが我慢してほしい」と謝られてしまった。また、皇帝や皇族との謁見は確実に行われるだろうから今のうちに儀礼を学んでおいたほうがいいということで授業を設けてもらった。それ以外の時間は基本、自由時間でおやつを用意してくれたり食事も好き嫌いを考慮してくれたり、ほしいものや学びたいものがあれば手配してくれたりしてもらった。俺はどうとにもなったのだが、ガイたちは暇を持て余してどうしていいのか分からない様子だったので、ガイには『都会や貴族の女性に関する知識』を、女性陣には『おしゃれやアクセサリー』について聞いてみてはと提案してみた。それなら邸宅の使用人さんでも十分対応ができる内容なので侯爵様も助かったと思う。『リバーシ―』や『チェス』、『ショーギ』も持ってきたので暇つぶしに役立ちました。途中で使用人さん達や侯爵家の夫婦も加わったり。ちなみに子供は男の子2人で、今は隣国の王立学園に通ってるとのことだった。



 あと、侯爵様に『ガイは惚れっぽい部分があるから、令嬢への接し方の注意点や、特に注意を払うべき人物がいたら教えてあげてほしい』と相談を持ちかけ、例の公爵令嬢のスフィアちゃんや『ミスリルの聖女』レイナちゃんの話を侯爵家の関係者から俺たち4人にしてもらうよう裏工作しました。1番の目的は皇帝との謁見の際、ガイが皇太子、第二皇子のお妃様と第三皇子の婚約者であるスフィアちゃんも登場した場合、皇族の目の前でフリーズしたりパ二くらないようにするためなんだけどね。2番目はレイナちゃんが今どうしてるか気になるからかな。『ミスリルの聖女』って呼ばれてる理由も知りたいしね。



 ある日の午後、俺たち4人は執事さんから『貴族のご子息やご令嬢に関する注意点』の話があるとのことで、ゆったりとした雰囲気の応接室に案内された。



 「みなさん、今から貴族のご子息やご令嬢に関して重要なお話があります。姿勢を楽にしていただいて構いませんが、これから話す内容を理解するか理解しないかによって今後の人生が大きく変わってしまうかもしれないので、できれば聞き漏らさないようにしてください。まず、みなさんのお顔立ちは、貴族の美男美少女に匹敵するくらいの整ったお顔立ちをしています。ジョブにも恵まれて、本当にうらやましいかぎりです。でもお顔立ちには関しては上には上がいます。なぜかというと、貴族同士の結婚は基本、親同士が決めた許嫁との結婚になるのですが、恋愛結婚がないわけではないんです。そのときは顔の良し悪しが大きく関わってきます。貴族と平民の身分さを超えた結婚、いわゆる玉の輿、逆玉と呼ばれるものです。まれに許嫁との婚約を破棄し、平民と結婚というのもあります。身分差が大きすぎて夫婦になれない場合は相手を使用人として屋敷に雇い、隠れて愛し合い、場合によっては赤ちゃんができてしまうことも少なからずあります。子供の顔は親に似るもの、そのような子は『庶子』、くだけた言い方をすると『脇腹の子』なのですが、そういう子供たちは親に似て美男美少女が多いので、昔から『政略結婚』の道具として利用されてきた歴史があります。そういうのが長年積み重なって、貴族の美形の平均レベルが平民より高くなってしまったといわれています。ここまではよろしいでしょうか?」


 俺たちは一同うなずいた。


 「それでは話を続けます。全体的に話が長くなってしまうのでこれだけは覚えてください。『君たち4人のことが発表されると、政略結婚目当てで大量の婚約のお手紙が殺到する可能性がある』というのと、『貴族さまのお顔に見とれてしまったり動揺したりしてしまうと、その様子を観察している大人たちから『これはいける』とナメられて、その情報があっという間に広がってしまう』ということです。この二点だけは、絶対に忘れないようにしてください。よろしいですねみなさん?」


 「数日後には帝都の居城で、皇帝陛下やその家族、お偉いさんなど、たくさんのの大人達が出席することだろうと思います。みんなはまだ若い平民なので、作法の間違いは大目に見てくれますが、皇族やそのお妃様は、帝国内でもトップクラスの美男美女なので、彼らのお顔に見とれたり慌てたりは絶対にしないでください。特に第三皇子の婚約者で公爵令嬢でもあるスフィア様は、帝国一の美少女といわれ、君たちと同い歳でもありますので、『ガイくんとレイくんは、できるだけ固まったり慌てたりしないでください』ね。普段、美男美女を見慣れている貴族様でも、スフィア様に見つめられたりすると固まったり慌てたりするので100%無理だとは思いますが、それだけでもできるだけ努力してください。お願いします」


 「スフィアさまはそんなに美人なんですか」


 「わたくしは直接お会いしたことがないのですが、貴族の社交界ではそのようにいわれているそうです」


 「わかりました」


 「このあとに、『絶世の美少女』として、エリン教国で絶大な人気を誇る『ミスリルの聖女レイナさま』のお話をしようと思ったのですが、話がだいぶ長くなってしまったので日を改めて説明したいのですがいかがですか?」


 「ボクはこのまま話を聞きたいです」


 「実はオレもだ」


 「わたしも。もう一人の聖女の話はすごく気になります」


 「マ、マリーも」


 「わかりました。それでは1時間ほど休憩をはさんだあとにここで始めます。みなさまお疲れ様でした。デザートや飲み物はいかがですか?」


   「「「「はい、ありがとうございます!」」」」



 ---------------------------------------


 「それでは聖女レイナさまについて説明します。まず、注意してほしい点がひとつあります。『帝国一の美少女とよばれるスフィアさま』と、『絶世の美少女とよばれるレイナさま』を比べるような発言は絶対にしないでくださいね。おふたりともエリン界にとって大事なお方、優劣をつけるなんて罰当たりなことはしないようお願いします。皆様方はお二方にお会いする機会があるでしょうから」


  「「「「はい」」」」


 「それでは説明を続けます。実はレイナさまは孤児院のご出身、ご両親は幼い頃に当時の流行り病でなくされています。年齢は皆さまと同じ12歳でエリン教国の孤児院育ちということでいち早く鑑定の儀を受けられました。レイナさまが〈聖女〉のジョブを授かり教皇とお会いになったとき、こう述べたそうです『なぜエリン教のお偉い方たちは、高価な宝石をたくさん身に着けたり、太っている方が多いのでしょうか?そんなお金があればわたしは孤児にならなかったかもしれないし、わたしがいた孤児院の子供たちは常にお腹をすかせずに済んだかもしれないのに。もし、小さな勇者さまがおられなければわたしのいた孤児院で確実に餓死者が出てたかもしれないんですよ』とブチ切れたそうです。さらに、『皆様の贅沢が悔い改めなければ、自由をも奪われたこの無力なわたしの命と〈聖女〉のジョブをエリン様にお返しします』と発言し、想像を絶する断食と男性禁制のエリアで滝修行を行って何度もぶっ倒れたそうです。これにはさすがにエリン教国の上層部は改心せざるを得なかったようです。スキルや魔法を使わずに聖女の威光を体現したといってもいいでしょう。レイナさまが『ミスリル』にたとえられたのは、銀髪の美少女というだけでなく、ミスリルのように美しく固い意志を持っているということからそう名付けられたそうです。フィーネさまは数日前に〈聖女〉のジョブを授かったばかり。何か『参考に』なったことがあれば、ぜひ『取り入れて』もらえればと思います。また、ガイくんとレイくんは、生半可な気持ちでレイナさまと親密な仲になろうなどと考えないでください。レイナさまには近衛騎士に相当する7人のヴァルキュリアが常についています。そのうちのひとりが〈剣聖〉のジョブを授かっています。彼女もかなりの美少女なのですが、みなさまより2歳年上でレベルもかなり高いので、レイナさまに迂闊なことをしたら瞬時に首が胴から離れると思ってください。」



 一同は無言で頷いた。あのレイナちゃんの聖女適正と根性、相当パネェって(ガクブル)。ガイたちもビビッてるわ。



  ―このときフィーナとマリーは、ガイはレイナとくっついてもレイだけは絶対に渡したくない、そう決心したのだった。その決心が、あとでレイの予想を超える突然変異を起こすのは数年後の話である―

 

 


 


 


2024/2/24 『男性禁制のエリアで』滝修行に変更

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ