土井 怜が選ばれた理由
「ん、ここは?ついさっきまでサービス残業が終わって終電を逃し歩きながらて缶チューハイでヤケ酒をあおっていたらダンプカーが突っ込んできて・・・俺は死んだのか?」
ブラック企業の営業マンである土井 怜はドーム状白い空間で目を覚ました。
「お目覚めになられましたね。わたくし、レイ様担当の『ライト』と申します。名前はあってないようなものですがね。今からレイ様が置かれている状況と今後について説明いたしますのでまずはこちらにお座りください」
そう述べたあとにライトさんが指を『パチン』と鳴らすと、空間は一軒家のリビングルームのように長方形になり、内装も一般的なリビングルームの暖色系の色に加えコーヒー入りのカップが乗った長方形のテーブルと、それを挟んで非常に座り心地のよさげな2対のソファが瞬時に現れた。
「まずは改めて自己紹介を。わたくしライトは人類の視点でいうと『神々の一柱』になります。ひとえに神様といっても様々な神々が存在するのですが、神々の住む世界を会社にたとえるとわたくしのポジションは『本社の企画営業部所属』でして、各異世界、及びパラレルワールドを管理している神々はさしずめ『現場監督』『直営店舗の店長』などに例えたほうが分かりやすいと思います。ここまでよろしいでしょうか?」
「ええ」
「ありがとうございます。今現在、色々と質問したいことが山ほどあると思いますが、主要な部分を要約して説明しますのでまずは体感で10分ほど、わたくしの説明にお付き合いください。のちほど質問の時間は制限なく受け付けますので。あと、飲み物やお茶菓子にリクエストがあれば遠慮なくどうぞ」
「わかりました。失礼は重々承知なのですが、ライト様は神様というより会社員のような口調ですよね。あと、ライト様は神様なのですからわたくしを様呼ばわりすると逆に緊張しますので呼び捨てでいいですよ」
「これは失礼。現場に出るのは皆無なので失念してました。いわゆる職業病っていうやつです。それでは説明しますが、残念ながら怜さんはトラックに引かれてお亡くなりになりました。ここは次元の狭間のようなところで、通常であれば怜さんの魂は地球の輪廻の輪に回帰し、新たな人生を始めるところなのですが、怜さんに依頼、というか提案がありましてこのような場を設けさせていただきました。わたくしもコーヒーが好きなのでいただきますね」
「わたしに提案?」
「ええ。怜さんが選ばれた理由が追々説明します。まず神界で『異世界転生、または転移者に今まで見たことがないチートスキルを与えて魔法とファンタジーの異世界ライフを楽しんでもらおうぜ』という議題の企画部会議が開かれました。その結果生まれたのが『スキル・異世界転生/転移あるある』なのです。このスキルは、地球産の異世界転生、転移系の小説や漫画、MMORPGに造詣が深い方々にとってはチートスキルが生み放題、かつスキルポイントが稼ぎ放題という超ぶっ壊れスキルになります。怜さんはその条件を満たしているうえ、ブラック企業勤務かつトラックに撥ねられたという、まさに『異世界転生/転移あるある』という状況でお亡くなりになったので、この提案を了承して頂いた瞬間にかなりのポイントを持ってスタートダッシュができるのも選定の理由です、次点での職業で『ニート』というのもあったのですが、第一外に出ませんから『お亡くなりになりかた』という点ではスキルポイントは稼げませんし、どの世界にも魑魅魍魎はいますからブラック企業出身の方のほうが対応力がありますしね。どうです怜さん、興味ありませんか?」
「・・・聞く限りだとかなりヤバいスキルですねコレ。確認のため試運転みたいなことができればいいのですが」
「もちろん大丈夫ですよ。その慎重さはすごく大事ですよね。では今から『スキル・異世界転生/転移あるある(仮)』を付与しますので早速試してみましょう!」