■クラン会議を開いて、晴を入団させるべきか相談した
東方旅団の会議といっても里奈を含めて久遠と由芽だけだ。
それでも会議は会議である。
「一緒にお人好しがしたいって、すごく変な理由じゃないかな。このクランに気になる女の子がいるとかの方がよっぽどわかりやすいよ」
久遠は肩をすくめる。といっても女の子は里奈か由芽しかいない。
「ま、女の好みは男だけのときに話そうぜ。俺としては学校に通ってみるのも悪くねぇかなって思ってるんだ」
うまくはぐらかしたなと里奈は思った。好きを表明することは同時に嫌いを表明することになる。こればかりは仕方がないかもしれないが、わざわざ口に出すことでもない。
一見、軟派な雰囲気の晴だが、こういうところで妙に鋭い。
ひょっとして晴はモテるのでは? とも里奈は思う。と同時に女の気持ちがわかる男なんてろくでもないに違いないと感じていた。
「学校に通ったりするのはクラン活動やってたら難しいものなの?」
この中で答えてくれそうなのは晴か由芽だろう。こういうときソロ――もとい陰キャでぼっちの久遠はまったくアテにならない。
そんなことを考えていると久遠は里奈に意味深な視線を送ってくる。
久遠が格好つけられるのは戦闘くらいだろうと里奈は一笑に付す。
「二人だけの世界から戻ってきてくれるかな?」
凄みをまとわせて由芽が笑顔で里奈を睨んでくる。
「スミマセン」
里奈はこういうとき由芽に頭があがらない。
「イベントはじまると期間中はずっとかかりっきりになるし、それ以外は次のイベントに向けてレベル上げやってるからな」
「冷静に考えるとみんなよく飽きないわよね」
里奈は思わず現況に関する感想を漏らしてしまう。
「パーティー組んでたら、そんなこと言ってられねえよ」
ゲームを楽しむというより忙殺されるに近い印象だった。
「お前らはクラン活動していないんだろ。だからだよ」
そういう生活がしてみたいのだという。
「ま、とりあえず入団はオーケーとして行政の手続きよね。久遠、お願い」
面倒なことは久遠に任せるにかぎる。久遠がどれほど怨みがましい視線を向けてこようが、里奈はいまさらやめるつもりはなかった。
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