■久遠と明里はきわめて平和的に決闘をはじめる
寮には裏庭がある。手入れもされていて、それなりに広い。多目的に利用することが可能な屋外スペースだ。
そこには対峙する久遠と明里の姿。
二人を取り囲むように里奈や由芽、他に晴と光、葵の姿があった。
「決闘のルールだけど、あたしはあんたの実力が見たいだけだ」
「では、訓練モードでいかがですか」
訓練モードというのはどれだけお互いで殴りあってもHPがゼロにならないモードのことである。活用方法は名前のごとくだ。
「いいだろう。だけど勝敗はどうやって確定させるんだい?」
「どちらかが一撃を当てるでいかがです?」
「……いいだろう」
「では――」
久遠と明里はログインすると訓練モードを選択する。
訓練モードに突入すると久遠は棍を持っていた。対して明里は手甲である。
久遠が初撃を右方向から横一文字に薙ぐのを明里は手甲で受け止める。
一撃を受けた明里は目を大きく見開いたかと思うと、少し後方へよろめく。
「あんた、ホントに十一期生かい?」
「まだ続けますか?」
明里の問いかけに対しては明確には答えない。
かわりに久遠は暗にこれが本気の一撃でないと言っている。
「いや。かわりと言っちゃ悪いけど、あたしの一撃を受けてくれないかい」
「いいですよ。殴られっぱなしというのは面白くありませんしね」
久遠は両腕で棍を構えて、受け身の体勢をとる。
「ふん。わかってるじゃないか!」
久遠の構えている棍に向けて青白い光をほとばしらせながら拳が打ちこまれる。
刹那に閃光が弾けて棍が粉々に砕ける。
「武器破壊とは過激ですね」
久遠は苦笑いを、明里はニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべている。
「あたしらはおっかないんだろ?」
一本とられたと言うことなのだろう。勝負はとりあえずここまでだった。
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