■緑葉士団リーダー川岸明里より果たし合いを申しこまれる
「邪魔するよ!」
里奈たちの学生寮へ如何にも柄の悪い女が二人、ドアを蹴破る勢いで入ってくる。
里奈もこれにはさすがにビビったが、何とか素振りを表に出さずにすんだ。
由芽は泣きそうな顔で久遠の背中に隠れている。
その久遠に至っては眉一つ動かさない。平静そのものに思える。
「お知り合いですか?」
久遠は晴に訊ねる。
「あっちの金髪のおっかない女が川岸明里。緑葉士団のクランリーダーだ」
「おっかないのは二人とものように思えますがね」
「それについては否定できねぇな。ちなみにもう一人のおっかないのが松塚葵。緑葉士団の副リーダーだな」
明里にこの会話はしっかり聞こえていたようで、ズカズカと久遠のほうへ向かっていく。
「だぁれがおっかないって?」
明里は久遠にぐいっと顔を近づける。明里のほうが身長も高いため威圧感はなかなかのものだろう。
「おっかない雰囲気を出しているのにも関わらず、こちらが指摘するのは悪口になるんですか?」
久遠は逆に聞き返す。しかもひるむことなくだ。
「ふぅん」と明里は久遠を値踏みするような視線を向ける。
「言うねぇ。しかも後ろの娘を庇う姿勢は崩さないときてる」
明里は目を一度閉じると、久遠から一歩下がる。
「度胸はあるようだね。それと気構えもできてるようだ」
もしここで久遠が少しでも怯むようなことがあれば、それこそ戦わずして敗北を喫することになる。
久遠は東方旅団の要であるといえた。それを本人も重々承知しているようだった。
「気に入ったよ。あんた、名前は?」
「古輪久遠です」
明里はその名を刻みこむための行為なのか、小声でその名を何度もつぶやく。
「久遠、あたしとサシで決闘しな」
だから、どうしてそうなると里奈はツッコミたくなる。
緑葉士団は名前に似合わず血の気の多い人の集まりだと里奈はあらためて認識するのであった。
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