■光の入寮が決まる。そこで里奈と由芽の三人で話しあっていた。
「入院とかしなくてよかったんですか?」
寮の談話室に里奈と由芽、それに光がいる。質問をしたのは里奈だった。
「ん~。してもいいけど、別にしなくても問題ないって言われたんよね。あ、体調に変化があったらすぐ来なさいとは言われた」
里奈と由芽は顔を見合わせる。妊婦とこうしてまともに過ごすのは初めてだった。
だからどうすべきかはわからない。一方で久遠は光のマタニティウェアを手配したり、受け入れ体勢を整えつつあった。
「いやぁ、こんな服があったんだねぇ。クランの制服もお腹がこうなってから着なくなってたしさ」
こちらはあたふたするばかりなのにと光の中で久遠の株は爆上がりのようだ。
「ところで光さん、お腹の子の父親は誰なんですか?」
里奈は思い切って訊ねることにした。
「あー。同期生の奴でさ。お前の子だぞって言ったら次の日に東京を出ていったみたいでさ。音信不通なんよ」
「……ひどい話」
里奈は露骨に顔を引きつらせる。ロクでもない男だ。
「光さんはそれでよかったんですか?」
由芽が問いかける。いいも悪いもあるのだろうかとも思うが。
「そりゃ腹は立つけど、惚れた男には違いないしさ。こんな仕打ちされても嫌いになれないんだよね。もちろん、いま現れたらぶっ飛ばすけど」
由芽は到底わかりあえないという表情だ。少し潔癖というか生真面目なところがあるのかもしれない。
「あとさ。あたしの部屋で弟も寝てもらうけど問題ないよね?」
「まあ身内なんだし、こっちは問題ないけど……。その代わりお風呂の時間とかルールはあるので守らせてくださいね」
「当たり前だぬ。不埒なことを働くならきっちり締めるから任せて」
あっはっはっと光はからっと笑う。どことなく頼もしいのだが、里奈の周辺にいないタイプの人間だったので反応に少し困っていた。
すると光の端末からコールが響く。
「明里からだ」
それは光が以前所属していたクランの現リーダーの名前だった。
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