■光のお腹にいる子はもうすぐ産まれるそうだ
「この子さぁ。もうすぐ産まれるんだって」
光は軽妙な口調で「あっはっはっ」と笑っている。
「いつ産まれてもおかしくないんだってよ」
晴は半目で両腕を後ろに組んでいる。
「それでお腹の子は大丈夫だったんですか?」
久遠が訊ねる。
「問題なし。健康そのものだって。ただ医師の人にはもっと早くこいって怒られたけど」
てへっと光は舌を出す。
これで子供を産もうというのだから末恐ろしいと里奈は思う。
「光さん、これで母子手帳が発行されるからタクシーや電車を利用する際に補助がおりるはずだよ」
「マジで?」
目を丸くしている光に久遠は「うん」と頷く。
「久遠くんには助かりしまくりだね」
光は久遠をぎゅっと抱きしめて、顔を胸の谷間に埋める。
どうしてこういうときは無駄に高い身体能力を発揮させないのかと、里奈は納得がいかない。
「姉貴、スキンシップもほどほどにしといてやれよ」
見かねた晴が助け船をだす。
「おお、そうだった。ごめんごめん」
光が久遠から手を離すと、久遠はパッと後ろへ退がる。息苦しかったのかぜえぜえ息をしていた。
「久遠って、こういうことも無駄に詳しいわよね」
「みんなが知らなさすぎるんだよ。病気になったり怪我したら病院に行くなんて当たり前じゃないか」
そう指摘されるとそうなのだが、教えてくれる人がいないのだから仕方ないとも思うのだ。
「そうやって賢ぶる」
そう言われると久遠はそっぽを向いて口をつぐんでしまう。へそを曲げるとすぐこれだ。
「二人ともそのへんでストップ。とりあえず用はすんだんだから寮に戻ろうよ」
そうこうしてると由芽が割って入ってくる。収拾がつかなくなってくるとこうやって間を取り持つのが彼女の仕事になっていた。
久遠のもの言いもよくないが、里奈も言いすぎる部分がある。そのへんを反省しろと最近は由芽に説教をくらうこともしばしばある。
「そうね。とりあえず戻りましょうか」
里奈が音頭をとると皆は一斉に動きだす。やはり彼女はリーダーであった。
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