■里奈は晴に訊ねられる。ここで何をしているのかと
「なあ、他にも二人いなかったか?」
この一言で実は自分だけに興味があるわけでないことを里奈は察する。
「いるわよ。二人とも教室だけどね」
「ってことは本気で義務教育を受けてるのかよ」
晴は思わず吹きだす。まあ、これが普通の反応だろう。里奈もとやかく言う気はない。
「それで江波先輩は私たちをわざわざ笑いにきたワケ?」
極力、感情は抑えたつもりだが、最後のほうで語気が強くなってしまう。
馬鹿にされたのだから腹を立てて何が悪いというのか。
「悪い。気分を害したなら謝る」
里奈の気分を害したのを察した晴は早速頭を下げてきた。
切り替えの早い男だと少し感心する。だが、それだけだ。今後関わることもないだろう。
里奈は立ちあがり、その場をあとにしようとする。
「待ってくれよ」
晴が呼び止めてくる。
「まだ何か用でも?」
里奈の口調は冷たい。
「ちょっと詳しい話を聞かせてほしい」
鬱陶しいと思った里奈はどうあしらってやろうかと思ったが、それは晴の顔を見て気が変わってしまう。
「だから俺の話も聞いてくれ。こっちも困ったことになっていてな」
自分はひょっとしてお人好しか何かだろうかと呆れるしかなかった。
「とりあえず聞いてあげる。ただし私の仲間も一緒よ。それでもいい?」
「もちろんだ。こちらこそ助かる」
晴は安堵したように胸を撫でおろしている。見ているとどうも自分のことで悩んでいるような感じではない気がした。
まあいいだろう。それも話を聞けばわかることだ。
里奈はとりあえず久遠を呼びだした。
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