■里奈が出会ったのは一歳上の晴という男子
最初の授業を終えて里奈は校舎のラウンジに来ていた。中庭ともいう。
五月ははじまったばかり。昔はゴールデンウィークなんて呼んでたらしいが、いまでは死語である。
ある時期から祝日は記念日と変更されたためだ。
その理由は至って単純で労働時間の減少と休日がより流動的になったためだ。
加えて中等教育以降のクラブ活動廃止と教員をアバター化してAIが授業を行うようした。
教員の人権に対して配慮がいらなくなった結果として、三六五日やいつでも曜日や時間、場所に縛られることなく授業に参加できるようになった。
相手の理解度に合わせて個々に授業を行うため、同じ教室にいても隣でまったく違う授業をしているのも珍しくない。
しかし一方でという話もある。それが里奈の抱えている問題だった。
自動販売機から紙パックの紅茶を買って一口つける。それからベンチに座って不服そうな顔をしている。
由芽がここで授業を受けるようになってわかったのだが、久遠は勉強のできる奴だということだ。
なので、里奈は久遠と由芽の会話内容が理解できずに疎外感を感じることがあった。
それについて由芽は最大限の配慮をしてくれているが、久遠は――。
「バカ……」
早い話が里奈は久遠にもう少し構ってほしいということだった。だが、これを素直に出すのはなんとなく嫌だった。
「よう」
そんな折である。里奈は背後から声をかけられる。男の声だった。里奈はおそるおそる背後を顔を向ける。
そこにいたのはつり目でくっきりした眉の男の子だった。
「急に声をかけて悪かったな。俺の名は江波晴一〇期生の五月一三日生まれだ」
そっちはと促される。この場合、口説かれていると解釈すべきだろうか。
「私は片岡里奈。十一期生の三月二六日生まれよ」
里奈より一歳上というのがこの会話ではっきりする。
これが言ってしまえば里奈と江波晴の出会いだった。
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