武器もない状態で久遠は勝利できるのだうか?
「古輪くん、後ろ!」
里奈が大声で久遠に警告を発する。だが、もう手遅れかもしれない。倉部はすでに久遠の背後をとっている。
一方で久遠はどうしたかというと、前方へステップしてから、瞬時に反転すると倉部に向けて雷光のように拳を繰りだす。
それを倉部は両腕の手甲で受け止める。
「苦しまぎれだなぁ」
倉部は高笑いをはじめる。もはや勝利は揺るぎないと確信しているのだろう。
久遠が腕を引く。
「無手の場合、武器種は手甲と判断されます。よって手甲の武器種スキルが適応される……でしたよね?」
久遠は倉部に問いかける。
「だからどうし……」
倉部は言いかけて絶句する。自身の手甲が粉々に砕け散っていたからだ。
倉部は「何をした?」と聞こうとするも、それが野暮な事だとすぐに気がつく。先ほど久遠の話したことがすべてだからだ。
「無手というのはね。相手をいたぶってるみたいで好きじゃないんですよ。ちなみに僕の一撃はあなたに三千ほどのダメージを与えるでしょう」
久遠はファイティングポーズを解かない。一方で倉部は完全に戦意を喪失しているようだった。
先ほどのやりとりはそれほどまで倉部の心を折る行為だったのか里奈にはわからない。
久遠は無慈悲に言い放つ。
「倉部さん、あなたのHPはいくつですか?」
それからは一方的なものだった。久遠の拳は倉部の反撃を許さない怒濤のラッシュであった。
腹に頬に七発程のパンチが見舞われる。
倉部は頭をぐらつかせて背中から倒れる。まるで糸が切れた人形のようにだ。
久遠の勝ちということでいいのだろう。
「それは違うよ片岡さん。僕たちの勝利さ」
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