その男の名は倉部十蔵といった。この男を前にして里奈は決意を固める。
すでに日は傾きつつある。指定されたのはとある公園だった。
里奈、久遠、由芽はもちろん。
青ざめていまにも泣きだしそうな久遠にはっ倒された五人の男たち。里奈より二、三歳は上だろうにやけに小さく思える。
それだけ倉部十蔵に怯えているということか。どんな男なのだろうか。
「由芽ぇ、こいつらに俺らのことを話したんだってなぁ」
男が低い声でゆっくりとなぶるように、それでいて強く非難する声音。
由芽がビクリと肩を震わせて、顔を俯かせる。
やなヤツというのが里奈の率直な感想だ。一方で自身も久遠という存在がなければ由芽と同じ対応をしていたかもしれないと思う。
声の主の男は一九〇センチくらいあるのではないだろうか。肩幅も広く体型もがっちりしている。
対して頼りの久遠はというと身長は一五〇に届くかどうかというくらいで、中肉中背といういかにもな体型。
そう思うと途端に頼りなく思えてくる。
きっとこの男が倉部十蔵だろう。彼のまわりには四人の取り巻きもいるし情報どおりだ。
しかもおまけのように小岩までいる。里奈を見るなり視線を合わせようともしない。
「てめぇら返り討ちにあったそうだな。それで所持金をパーにさせられたそうじゃねえか」
あからさまに見下した視線を倉部は五人組に対して向ける。
「借金、俺が肩代わりしてやろうか?」
倉部は薄ら笑いを浮かべている。
「い、いいんですか?」
五人組の一人が顔をぱあっと輝かせる。それとは対照的に他の四人は顔を見あげようともしない。
「いいぜ。俺はとても寛容なんだ。そのかわり借金漬けにして死ぬほどコキ使ってやるからよぅ!」
げははと品のない笑い声が響きわたる。それを盛りあげるようにして取り巻きも笑いだす。
「おい、小岩よ。お前も笑えよ」
倉部は一人顔を引きつらせていた小岩にあからさまな圧をかける。
「は、はい」
小岩は涙目になりながら大声で必死に笑おうとする。
里奈はもう我慢の限界だった。
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