里奈は改めて久遠の実力を思い知らされる事になる
棍はあまり強いという印象の武器ではない。加えて初期装備というのが素人丸出しという印象なのだろう。
十一期生でゲームも二年目にようやく突入した段階というのもあって、その見立てはある意味で正しい。
しかし里奈は知っている。久遠はそこらの十一期生に比べてあきらかに異質な存在であることを。
「どうなってやがる」
弓使いのHPは八千に到達しかかってたなどと驚愕の声があがっている。ちなみに里奈の装備制限のためHPは一千にも満たない。
「片岡さん、援護を頼む。まず手甲使いからだ」
「わかったわ」
里奈がこくりと頷くと、式神を取りだす。
「チクショー! 一斉にかかるぞ!」
手甲使いを先頭に四人になった男たちが攻めてくる。
手甲使いを両腕を交差させて久遠の攻撃を受け止める体勢で特攻してくる。
対して久遠は棍を高速で縦横無尽にくるくるまわしながら視覚的に相手を翻弄している。
手甲使いはどの方向から攻撃がくるのかわからず視線だけを彷徨わせている。
そうこうしている間に久遠は男と少しずつ距離を詰めて、棍の腹の部分を手甲に当てたと思うと、少しだけ左の方向から押しだして相手の体勢を崩す。
それから手甲に棍の腹を当てたまま時計回りに相手の背中へまわりこむ。
まわりこむ一瞬に顔を里奈のほうへ目配せして合図を送ってくる。男は久遠に釘付けになって里奈と男の間に壁がなくなっていることに気がついていない。
里奈が式神を投げると男のほうへ一直線に飛んでいき男の手甲に式神が貼りつくと同時に青白い閃光とともに弾ける。
それから男はあからさまに脱力した様になる。
背中にまわりこんでいた久遠は男の背中のシャツの部分に棍の先端を引っかけて、ぐるりと一回転させて布の部分を絡ませる。
そして体を弓なりにしならせて棍を後ろから前へ振りおろすと、連動して男も投げ飛ばされる。
鎚使いが男の安否確認をするとHPはゼロになっていた。
古輪久遠は強すぎると里奈は思う
相手は遠距離から攻撃できる者と、ダメージを軽減する盾役を失っていた。
それから槍使いの男が破れかぶれか叫びながら槍を突きだしながら突進してくる。
久遠は棍の先端を握ったまま下から上へと振りあげる。すると棍の腹が槍の柄の部分へと当たって弾かれる。
突進の勢いを削がれたばかりか、のけ反ってしまいお腹のあたりががら空きになる。
そこに棍で突きの一撃を見舞うと男はダウンする。
久遠は立ち止まることなく、そのまま鎚使いへと肉薄する。
かち合う双方の武器。最初は鎚が押しているようにあったが、久遠が力のほうでも押していく。やがて男は押しのけられると棍で乱打されてHPはゼロとなった。
「園部さん、僕と一緒に戦おう」
由芽は「私?」とばかりに自身を指さす。それに対して久遠はこくりと頷く。
「園部さんは何も考えずに槍を突きだしながら突進してくれたらいい」
「わ、わかりました」
由芽は声を少し震わせていた。
「なめやがってぇ!」
男は憤慨してターゲットを由芽に切り替えて斬りかかろうとする。
それは久遠をターゲットから外すということ。つまり久遠から視線を外すということだ。
久遠の棍が黄色く光る。男はきっと何が起こったのか理解できなかっただろう。あらぬ方向から顔面を殴打する一撃。
そこに由芽が突きだした槍の一撃が重なる。
由芽の一撃で男のHPはゼロとなった。
これは里奈たちの勝利を表している。
「古輪くん、一人でいけたんじゃない?」
「まさか。みんながいてこそだよ」
本当だろうかと里奈は首をかしげる。
どこからともかく響くファンファーレとシステム音声。ゲームもこちらの勝ちを判定するのであった。
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