戦いのはじまりと封印スキルの発動
里奈も気がつかないような何かに久遠は素早く反応した。
刀を抜いたかと思うと既に横へ一閃させて、振り抜いていた。
「片岡さん、式神を目に見える奴でいいから投げてくれ」
「わ、わかった」
声が震えていた。鵺が楽な相手でないのは雰囲気でわかる。
里奈はポーチから人型に作られた紙を取りだす。これこそが式神である。
人差し指と中指に式神を挟んで、発動の意を唱える。
すると式神は飛びあがって、里奈の視界に入った鵺を追尾する。
「片岡さん、走れ!」
里奈は言われたとおり咄嗟に走りだす。
式神を受けた鵺は目に見えて動きが鈍くなる。
久遠は鵺とあっという間に距離を詰めたかと思うと刀で唐竹割りを浴びせる。
さぞ強力な一撃だったのだろう。鵺は塵となり消滅する。
だが、里奈にそれを喜んでいる余裕などなかった。背後からもう一匹の鵺が迫ってきていたからだ。
「片岡さん、式神を使うんだ!」
すでに久遠は態勢を変えて、折り返し里奈の支援に向かっていた。
里奈はとりあえず何でもいいとポーチから取り出した効果もわからない式神を一枚、振り向きざまに投げる。
追尾機能は優秀で多少の軌道がずれようが、鵺を容赦なく追尾する。
式神は鵺に当たると破けて飛散し体中にまとわりつく。
それと同時に鵺の動きはわかりやすいくらいに鈍くなり、それを久遠が仕留める。
だが、鵺は全部で三体いるのではないか? 里奈はあたりへ警戒を強める。
「多分、逃げたと思うよ」
久遠が刀を鞘に収める。それは戦いの終わりを意味していた。
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