彼らはその後、東京を出た
三月の戦士団を翔が抜けるという発言がクラン内を駆け巡ったとき、果たしてメンバーの反応はどうであったか。
当然、惜しむ声は多かった。その一方で新体制に移り変わることへの不安もあるのだろう。
それに対して翔が言えたのは根拠もまるでない「大丈夫だよ」の一言だった。
しかし三月の戦士団の脱退者は翔一人ではなかった。
「二人まで抜けたら戦力は相当ダウンすると思うんだけど?」
「東京を出て、あいつのところへ行くんだろ。だったら付き合ってやるよ」
「翔が抜けるんなら私も三月の戦士団に未練はないしね」
翔以外に男女が一人ずつ。いずれも結成当時からの付き合いだ。
「お前こそよかったのか? 三月の戦士団の理念が小岩のせいで滅茶苦茶になりそうだぜ」
未練はないのかという問いかけ。
「大丈夫さ。僕たちのやろうとしたことは彼女に託した。それに僕が助けたいのはここにいない彼だ」
託しはしたが、彼女が実行してくれる保証はない。それでも翔は信じていた。
理念とは組織が引き継ぐ場合もあるが、それが困難であると認められた場合は特定の誰かに託すのもいいのではないかと思う。
本人からすれば迷惑千万だろう。だが、彼女が逆境から立ちあがるようなことがあればひょっとして――。
「それじゃあ行こうか」
三月の戦士団など関係ない。どこへ行っても三人のリーダーは翔なのだ。
そして、それはしばらく続くことだろう。
東京であってもなかっても。
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序章ともいうべき章がこれで終わります。
次回より第一部がはじまりとなります。
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