■縁側の会合
「さて本題じゃな」
寮の縁側に翁と紅葉を連れてくるなり話がはじまった。
里奈のストレージに翁からアイテムが送られてくる。
「これは地図?」
里奈が訊ねる。
「紅烏の持ち主にだけ意味のある地図じゃ。そこに装備品の欠片がある。すべて集めると防具になるんじゃ」
これは里奈にとって朗報であった。なぜならパラメーターの関係でずっと初期装備だったからだ。
「マジか。ようやく私も装備品変えられるんだ」
「安易に喜ぶのは勝手だけど、これクエストよね?」
頼果が冷や水のように冷静なツッコミをかけてくる。
「でも、有益なら価値はあるよ。里奈を守るのが少しでも楽になれば負担も減るわけだし」
「この地図には装備品の場所が一カ所しかないけど、欠片は複数あるのよね?」
「そうじゃ。地図は行商をしとるわしらが持っとる。今回はサービスじゃ。次回からは金をもらうよって」
里奈は肩を震わせながら露骨に悔しそうな顔をする。
「ここはなかなかいい。今日から私の住処にしてあげましょう」
「……大丈夫なの?」
桐香が明里に思わず訊ねると明里は肩をすくめるだけだ。
「NPCなんだからログインしないと姿は見えないんでしょう?」
乃々子が言う。たしかにその通りだ。
「たしかによい場所じゃな。これからはわしらもちょくちょく寄るかもしれん」
「その時はお茶請けを持ってきてください」
「うむ」
それから一同は翁から買い付けをする。翁はそれに満足すると寮を去り、全員ログアウトをした。
しかし煎餅と緑茶を飲んでいる紅葉の姿は消えなかった。
「なんでよ!?」と里奈は思わず叫ぶ。
「サービスです。ここに来れば私に出会えるんです。もっと喜んだらどうですか?」
「東京迷宮の一部機能が解放されたって出てるね。一部のNPCがログアウトをした状態でも可視化されるって」
久遠がログを読みながら説明する。
里奈は触れようとするが紅葉には触れられない。
「諦めの悪い娘ですね。居場所を決める権利は私にあるのです。何人たりとも覆せません。だいたい私と対等に戦えるのはそこの男だけでしょう」
紅葉は久遠を指さす。
「いや、僕も君とはあまり戦いたくないんだけど」
「だそうですよ」
話はこれで終わりだった。こうして寮におかしな住人が増えることになったのであった。
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